第7話 友人たち

コンピュータールームは、一般的な学校のものとは違い、プログラミングに特化したかなりスペックのいいパソコンが入っている。


そのうちの一つ、半ば定席と化している場所に座ると、隣に見知った顔が腰を下ろす。


「よっ。元気か?」

「ああ。そっちは……元気そうだな」


金髪に、耳につけたピアス。ジムで鍛えたらしき筋肉に、タンクトップに半ズボン。

よく言えばチャラ男の、悪く言えば寝取られものの竿役の典型。

そんな風貌をした男が、俺の数少ない大学の友人……樺山浩人かばやまひろとだ。


尤も、見た目に反してそこまで遊んでいるわけではない。

というか、三ヶ月前まではこんなチャラい風貌じゃなかった。


以前は、黒髪になよっとした体にチェックのシャツに黒のズボン……という、まさに隠キャの象徴のような男だった。

しかし三ヶ月前、可愛い女の子と付き合い始めた頃から変わり始め……今はご覧の有様だ。


良くも悪くも、恋愛は人を変えるということの典型例である。


「まあな」


ヒロはそういってグッと二の腕に力瘤を作ってみせる。


「……そういえばお前、以前はボードゲーム研究会に入っていたんだな」


そういうと、ヒロはぴたっと動作を停止する。


「なんで知ってる?」

「いや、ついさっき入ったLINEグループのメンバーにいたからな」

「あー、お前も入ったのか」


ヒロはくるりと椅子を回転させ、俺に向き直る。


「去年の六月くらいにな……まあ、その、女の子を巡っての色恋沙汰があってな……その後もいろいろとトラブルが重なって、行かなくなった……って感じだな」


ヒロは気まずそうにそう言った。


「色恋沙汰、か」


色恋沙汰のトラブルというのは見ている方は面白いが……巻き込まれるのはごめんである。


「そのトラブルで先輩たちがごっそりいなくなって、今は二年生の女の子が仕切ってるって聞いたけど」

「ああ。その子に誘われた感じかな」

「ふうん」


と、ヒロと反対側の、俺の隣の席に、これまた見知った顔が席をおろす。


「よっす!アキ、今日もお熱いこって」

「……見てたのか」

「まあ、偶然な。しかも、なんかめっちゃ可愛い外人の子と話してなかったか?」


短く切った黒髪に、眼鏡といった、どこかインテリヤクザのような胡散臭い雰囲気を漂わせた男。

俺の友人の、相澤大河だ。


「偶然な」


ちなみに、こいつは見た目に反してかなり女癖が悪い。

その反面、ろくでもない女によく引っかかっている。


前の彼女は人妻(ちなみにこの事実を知ったのは別れる直前)、その前の彼女は大河が一人暮らしであることに目をつけた、逃亡中の犯罪者だった。


ちなみに今の彼女はホスト狂いで、稼いだ金を全部ホストに注ぎ込んでいるらしい。この前大河の金を盗んでホストに行こうとしたところを大河に見つかり、大騒動になった。


「お前の女じゃないんなら、紹介しろよ〜」


まあ、この軽薄な言動のせいで、庇う気にもなれないが。

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