第6話 入部
他の大多数の学生と違い、俺たちは二人とも、毎日一限の授業を取っている。その代わりと言ってはなんだが、四限以降の授業は全く取っていない。
俺たちは二人で家を出て、十分ほど歩いた先にある最寄り駅へと向かう。
そこから一駅移動すれば、もうそこは大学だ。
路線が大学の構内を縦断するように走っているため、アクセスは非常にいい。
尤も、校内のどこにいても電車の音が響いてくるのが難点だが。
「あ、明樹さん!」
と、偶然出会ったアイリーンが俺たちに手を振る。横には、小さく俺に手を振る陽毬が立っていた。
陽毬は俺とスズが繋いでいる手を見る。スズはなぜかぎゅっと力を強めて来た。
「もしかして、明樹さんの彼女さんですか?」
「え、ええ……篠宮美玲よ」
スズはそう言うと、一歩後ろへ引いて俺を盾にするような位置取りになる。
「なるほど……それで明樹さん。ノードゲーム研究会の方は、検討していただけましたか!?」
ずいっと顔を近づけてくるアイリーン。
「ああ、俺とスズの2人で入らせてもらう……」
「やった!ようやくまともな部員が確保できそうです!」
「ああ、うん」
「まともな」という彼女のセリフから、今までボードゲーム研究会で何があったのかを俺は察してしまった。
「今日はお暇ですか?」
「まあ、予定はないけど……」
「私も特に予定とかはないわ」
「ではでは、早速今日から活動を始めちゃいましょう!」
そういうと、アイリーンは自身のスマホを取り出す。
「お二人とも、連絡を交換したいなーっと思うのですが」
「ああ、いいぞ」
「ええ」
俺たちはLineの友達追加のQRコードを表示する。
あっという間に友達追加がされ、さらにボードゲーム研究会のLINEグループにも入る。
俺はなんとなくグループの参加メンバー一覧を開き……よく見知った名前を発見した。
「……まじか」
「どうかされましたか?」
「いや、なんでもない」
「そうですか。部室は、サークル塔の410号室です!三限の途中にはいますので、そこで会いましょう!」
そういうと、アイリーンは陽毬と共に去っていった。
「……相変わらず、初対面の人の前だと人見知りだな」
「うっさい」
スズをからかうと、罵倒とともにげしっと足を蹴られる。
俺はそれに思わず笑顔になりつつも、繋いでいた手を離す。
「それじゃあ、またな」
「……ん」
スズは頷くと、講義がある教室へと向かっていく。
俺はそれを見送り、一限の講義の場所……コンピュータールームへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます