第3話 勧誘

「ところでアキさんは、サークルに入ってますか?」


と、アイリーンがそんな質問をしてくる。


「いや。特に入ってないかな」


一年生の最初、どれだけ学校生活が忙しくなるかが分からなくて入らなかった。

それからずるずると入らないままだ。


「なら、ボードゲームとかって興味ありませんか?」

「ボードゲームか……ゲーム理論の授業で出てきたが」

「ボードゲームは面白いんですよ!カードを使う物から、人狼から、いろんなジャンルがあるんです!」


その後の十分間にもおよぶボードゲームの話は割愛する。


「ということで、アキさん。ボードゲーム研究会、入りませんか?」

「……ところで、部員は何人いるんだ?」

「お、興味ありますか?」

「なくはない、かな……」

部員は私と陽毬だけです!幽霊部員ならあと6人くらいいますが……」


サークルあるある。紙の上では部員が多くても、実質的に活動している部員はごくわずか。


「なるほどな」

「一応あと一人……いや、二人は時々来ますケド……アキさんが来てくれるなら、三人用ゲームにも手が出せます!」

「そうだな……」


さて、どうしようか。


ぶっちゃけ入るのはやぶさかではない。ボードゲームは楽しそうだし、活動もこまでハードでもない。そんなに人数がいないというのも加点対象だ。


だが……


俺はチラリと陽毬の方を見る。


「うーん……」


思案を続けていると、これはいけると思ったのかアイリーンが猛プッシュしてくる。


「絶対おもしろいですよ!特に、理系の人はハマります!週一回からでいいですから!部費もほぼないですし、なんなら部室もありますよ!是非!ほら、陽毬も!」

「えっと……楽しいよ?」

「もっと!」

「アキくんと一緒に遊びたいなって思うな」

「さらに!」

「えーっと、えーっと……」


アイリーンに乗せられて勧誘の文句を口にする陽毬を尻目に、俺は思考を続け……一つの結論に至る。


「俺の彼女も一緒なら、いいぞ」


流石に、恋人の目が届かないところで、元恋人のいるサークル……それも少人数のサークルに入るのは厳しい。


で、あれば……恋人も一緒に入ればいいというわけだ。


「え……アキさん、彼女いるんですか?」


と、少し驚いた様子のアイリーン。


「ああ。サークルには入ってないはずだし……少し人見知りだが、悪いやつじゃない。どうだ?」

「彼女さんがOKするなら……」

「ありがとう。彼女の当否は陽毬のLineに送っとくよ」

「わかりました!ではっ!」


アイリーンはそういうと、陽毬の腕をグイグイと引く。


「わ、ちょ、危ないってば!」


そう言いながらも、陽毬は立ち上がってアイリーンについていく。


「さて、俺も帰るか」

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