第2話 友人

「えっと……今日はもう帰るのか?」

「そうね。教授が用事があるらしくて、授業がすぐに終わったから……もう帰るわ」

「そうか。なら……」


一緒に帰ろう、と続けようとしたが、スズが遮る。


「帰りに買い物をするつもりだから、いいわ」

「なら……」


デートがてら、ぜひ一緒したいところだが、またしてもスズが遮った。


「ランジェリーショップにも行くつもりなのだけれど……まさか、ついてきたいのかしら?」

「いや、そんなことは」


俺はぶんぶんと首を横に振る。

ついていった場合、どっちがいい?とかいう地獄の質問が何度も飛んでくることだろう。

ちょっと想像したくない。


「そ。なら先に帰ってるから……五時には帰って来なさい。じゃ」


スズはそう言うと、ギュッと俺の手を一度強く握ると、去っていった。

ちなみに、現在時刻は15:30だ。


「……なんか、カッコいい人だね」

「ああ」

「私とは、全然タイプが違う……もしかして、ああいうような人の方が好みだった?」


どうして女性はこう、肯定しても否定しても角が立つ質問をしてくるのだろうか。

俺は頭を悩ませた末、


「…………どうだろうな」


という肯定とも否定ともいえない、毒にも薬にもならない返答をするほかなかった。


「ふーん……まあいいけど。ていうか、彼女作ったんだね?」


ちょっと非難めいた視線を送ってくる陽毬。


「一ヶ月連絡が互いになかった時点で、自然消滅だろ」

「そうだよ、ね」

「……陽毬と付き合っていた頃は楽しかったし……陽毬のことも好きだった。でも、関係も感情も移り変わる……そういうもんじゃないか?」

「うん」


陽毬は頷いて、何気なく時計を見る。

そして、ハッと何かに気づいたような情報になった。


「あ、やばい。そろそろ……」

「やっほー、陽毬。元気?ってかまさか……彼氏!?」


そんな快活な声が俺の背後から聞こえてくる。振り返ると、そこには金髪・碧眼の、白人の美少女がいた。

尤も、日本語の発音になんら違和感はない。おそらく、日本で育ったのだろう。


「ち、えっと……うん。違うよ!」

「……ふーん。へえ……なるほど」


白人の美少女は何やらニヤニヤとした笑みを浮かべる。


「この人が……例の人、ってことか」

「うん……まあ、そんなとこ」

「……なるほどねえ」


と、美少女は俺に向き直る。


「こんにちは、アキさん。私は、アイリーン・キヤナといいます。陽毬と同じ、理学部の二年生です。アイって呼んでください、明樹さん!」

「よろしく。コンピューターサイエンス学部の2年だ」

「へえ、コンピューターサイエンス学部ですか……すごいですね!」

「ありがとう」


ひとまず、互いの自己紹介を終えた。





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