第70話 鮎川洋二 4
4
銀座クリスタルビルの屋上。
足立はライフルを構えていたところをハヤテに見つかったのだ。
「足立だよなぁ?斗美さんはともかく織豊のヤツもアンタを殺さなかったのは怠慢だよ。オレは数年前まで地方の普通の高校生だった。歌舞伎町出てきて、エンマコンマになってクズをいっぱい見てきたが、お前はその中でも最低最悪の部類だな」
足立はスコープから目を離し、ニヤリと笑うだけだった。
彼は斗美の配下になり、毒気が薄れた。
もともと殺人衝動があったワケでも、ペドフェリアというワケでも、金儲けが好きなワケでもない。
人にスゲェと言われることが快楽のニンゲンだった。
だからそれで犯罪もセックスも手段として平然とできた。
だが子飼いになっていた時に、スゲェと言われるような若い女性が二人がメディアに登場してきた。
ハヤテは気づいていないが、この時に足立が藍と美香のどちらを狙っていたか足立本人もよく判っていない。
他人がスゲェと言われているから、ハヤテが云うように水を差したいのだ。
その足立の口の中にダイナマイトを数本突っ込むハヤテ。
ボディーブローを数発叩き込み、戦意喪失させ、四肢を養生テープでぐるぐる巻きにする。
自分が音矢たちと合流するために持参したロケット・アタッチメントを足立に背負わせる。
黒色火薬を足立の頭の上からふりかける。
「これで、今から1分もしないで東京湾のど真ん中だ。導火線もそのくらいだ。おまえの血液や肉片を誰も浴びることはない。さ!行ってらっしゃい!!」
足立はこの間、何かを訴え、涙をぽろぽろと流していたが、天空そら高く瞬時に上空まで飛んで行った。
このようにエターナルカンパニーでいちばんのゲスが上空に消えていくと竜馬連合と洋二・音矢の闘いに抵触するような展開を期待されるかもしれないが、それはない。
足立が四散したのは花火が破裂する750メートルくらいで、洋二たちの戦場は旅客機が飛ぶ約一万メートル上空だ。
その一万メートルを目指し、竜馬たち6体のエンマコンマを追う洋二。
『あと20秒で到着です』
今まで叙述しなかったが、VS音矢戦や新宿中央公園での戦いでも洋二はこのようにシンクエ・クレザンザと会話しながら闘っていたのだ。
「音矢のスキウレは?」
『40秒遅れての到着となります。今回、何か曲はかけられますか?」
「いらないよ」
『そうですか、でもかけましょうよ』
「断る理由もないし、いいか。でも思いつかない」
『好きなアニメの主題歌などいかがでしょう。思い浮かべて下さい」
「急に言われてもなぁ」
『へぇー、こういうのが好きなんですか』
「やっぱ、いい!」
『かけましょうよ』
敵の配置は洋二到着ポイントに竜馬と胡桃沢、その後方30メートル先に有紀とリイナ、16体のキットは球体を描くように配置、その球体の上空40メートル上に豊島とエプスタイン。
♪教室でノート広げて 真っ白なページ見つめて
鉛筆でなぐり書き「変えたいな、わたしを・・・」
迷ってばかりじゃ いられないわ
洋二は、イッキに竜馬・胡桃沢を飛び越え、ビーム剣を30メートル伸ばし、エプスタインの胴体を貫く。
「バカな!オレたちの3倍以上の速さだ!」と竜馬。
♪大切なみんなが いればきっと平気
ここからずっと 遠い場所目指し Let`GO!
洋二に襲い掛かる16体のキット!
♪We`re Alright We`re Alright!
笑って 明日が光って ジャンプして みんな飛び出せ
一緒にいると なんだってできるんだって
きっと・・・なんちゃって 手つないでいこうよ
広がるパノラマ わたしの青春 見つけた!
洋二のビーム・ソード・アーマーは最大50メートル伸ばすことが可能。
刀身がビームのため、そのままそのビームを打ち出すことも可能。
マークⅡは本体自体が極限までその馬力と運動性能を高められたので、その制御をいとも簡単にこなす。
エプスタインを貫いたまま、右横に返し、キット3体を破壊し、ビーム自体を打ち出して更に2体を撃破。
キットとて左肩にレーザー・ビーム・アーマー、右腕にレーザー・カッター・アーマーを装備しているが、洋二=マークⅡのビーム攻撃が強大なため蹴散らされている。
♪屋上の校舎登って 真っ青な空を見上げて
大声で叫んだら 私変われるかな?
まだまだやりたいこといっぱい!
だが多くのキットを捌くことは難しい、むしろ減ってくれた方が、有紀とリイナは精密な動きができる。
更にそこに豊島によるライフルの連射!
だが洋二の背部から肩部にジョイントする二門のキャノン・アーマーは自動的に敵に発砲する。
長剣からビーム砲、薙刀状態から巨大な扇形態に変化する洋二のビーム・アーマーはキャノンのサポートでありつつ、点から線、線から面へ千変万化のビームによる迎撃を見せる。
♪みんなの笑い声 聞くとホッとするの
なんでもやれそうな 気がする今こそ Let`sGo!
洋二は現在コクピットに座るコクピットモードでマークⅡを操る。
彼以外のエンマコンマはテロ戦やVSエンマコンマ戦の経験が多かったことと、格闘技練習を同じエンマコンマと模擬戦を行っていたことから、エンマコンマを自分の身体として使うサイボーグモードに慣れ、コクピットモードは知っていても反応速度が速いサイボーグモードしか用いなかった。
だがコクピットモードでなければ俗に言うロックオンシステムが使えず(エプスタインと豊島ですら職人気質にもサイボーグモードで狙撃していた)、今洋二が単体で武器を千差万別に変化させて使う処理速度を自分の脳波とシンクエ・クレザンザを同調させた方が〈駆逐〉という目的には圧倒的に向いている。
「キットが18体もいたキットが全滅!?」と竜馬。
♪We`re Alright We`re Alright!
走って ぱっと飛び越えて タッチして ぜんぶ追い越せ
一緒にいれば 怖いものなんてないね
きっと・・・なんてね ちょっと照れくさいね
広がるパノラマ わたしの未来 ここから!
その下方でスキウレに搭載されたレーザー・ビーム・キャノンで音矢が東京湾に落下していくキットを撃っている。
粉々にするのが目的だ。
でもエプスタインは殺さず、さっき拾っておいた。
音矢はセンジュ・アタッチメントを急に取り出す!
ドリルの胡桃沢だ!
「違う!降参する!」
「信じられか!」とソードを3本取り出し、胡桃沢に投げかけた時、「やめて!」と若い女性の声、清墨リイナだ。
「翔くんと私は結婚しているの!」
「あんた、未成年でアイドルだろう?」と音矢。
「こんなカラダになっちゃって、いちばん一緒にいてくれたんだもん!惚れる!」
音矢は勘違いしていた。
エンマコンマ化する前に結婚していたのかと思ったが、同じ境遇になってからそうなったということか。
「胡桃沢さんにリイナさん、結婚って、自分ら二人が決めたことでしかないだろう!?何を高らかに謳っているんだ!」
「二人で決める以外に何があるというのですか?」
♪放課後 自転車押しながら 一緒に話した
バイトのこと バレちゃった秘密や 誰が好きとか
竜馬の二刀流は既に洋二のビーム剣の敵ではなかった。
なにしろ長距離・中距離・近距離の攻撃を瞬時にモードチェンジできるのである。
だがそこに豊島のライフルによる援護、更に有紀はジャゴダイダイから射出してもらったキット4体を洋二を襲う。
♪みんなといる時が 一番楽しいな
今ならわたし「大丈夫!」って言えるよ 絶対!
キットは壁にして囮、竜馬の二刀流は攪乱!
実は豊島のライフルの方が本命!
だがそれでひるむマークⅡではない!
しかし意外!有紀がレーザー・カッターで襲い掛かった!
キャノンとビーム剣は有紀と竜馬の計3本のカッターに2体にまで減ったキットを捌くに手一杯!
豊島は至近距離に近づく!
だがマークⅡ=洋二の目からビーム!
喉を貫かれた豊島は墜落!
キャノンの2砲がキット2体を破壊し、竜馬の左腕をビーム剣で切断し、返す刀で有紀の右足首を同じく斬る!
♪We`re Alright We`re Alright!
笑って 明日が光って ジャンプして みんな飛び出せ
一緒にいると なんだってできるんだって
きっと・・・なんちゃって 手つないでいこうよ
広がるパノラマ わたしの青春 見つけた! みんなで見つけた!
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