第46話 織豊竜馬 5
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やるのだったら、まずは本多だ。
幼児への性的暴行の前科ある男。
なにより罪悪感が沸きづらい。
「おい!ハヤテ!爺さんのちんこをくわえたお稚児さんがなんのようだぁー」
ハヤテの周囲に救国ガーディアンの面々が8人いるというのに、ハヤテにまつわる、蒐集した噂話しかしないというのは明らかにこの8人を目視しても、勘定に入れていないという示唆である。
ハヤテが顎をつんと動かす。
本多に向けられ、8人が一斉にショットガンを打ち込む。
場所は要塞ホテルの1階のエントランス。
訓練において、同士討ちにならぬことと、とどめを刺すのではなく攪乱のための射撃を習った。
そしてマイルド・アタッチメントのショットガン共に8人の脚部に装備されたマイルド・ユニットのホバー。
推進力が10分以内に、足元10センチ程浮かせ、ローラーの無いスケートのような動きが可能。
元来臆病な本多。
翻弄されて・立ちすくむ。
そこにハヤテのレーザー・カッター・アタッチメントが一閃、いや、二閃。
本多は右の利き腕と左脚を切断される。
更に同じの装備をした20人もの救国ガーディアンのメンバーが入り込む。
本多は茫然として、地面に頽れている。
反応速度が速いエンマコンマ。
最初の一斉射撃から、既に40秒が経過している。
木本、神無月、村田、原の6名が2階の階段上、大広間に陣取っている。
「4人かよ」
ハヤテの予想はほぼ当たっていたが、こういう暗殺の折の約束事として、つぶやいてみたかった。
かれじしん、気づいてはいたのだ。
熊本に利用されていること。
この要塞ホテル組に格下どころか、ニンゲン扱いされていないこと。
でも、同時に、独善的な竜馬も、その竜馬が珍しく慕う斗美、その周囲にいる幹部のエンマコンマやブレーンの名士たち。
その全員をハヤテは嫌いだった。
ブルジョアとインテリの上層部を高校中退の家出少年のハヤテが好くハズがない。
斗美も美香も自分らに協力的なのは判るが、そういうのが嫌いだから、オレたちは家を、故郷を出たんだ。
又ここで青共学園に入学し、23全区長の下で働くようになったら、なんのために家を出たのか。
足立という半グレ組織の元リーダーを配下においていることを最近知った。
結局、斗美たちもグレーな存在なのだ。
オレたちは悪行に手を染めたいワケでもないし、上層部を潰して組織を乗っ取りたいワケでもない。
そもそも目的も希望もないんだから。
2階に向けて28人の一斉射撃が始まる。
流石に数10秒で出張ってきただけあり、アタッチメントとユニットは装備していない。
ハヤテは両足のエンマコンマ用ホバー・アタッチメントで飛び上がり、原と村田の片足をレーザー・カッター・アタッチメントで瞬時に切断する。
木本は、普通の人間である救国ガーディアンの連中が援護に回るという考えがわかなかった。
マイナー・チェンジしたアタッチメントを付けて戦ってもオレたちが勝つに決まっている、と思っていた。
故に、木本と神無月の二人は翻弄され続けている。
自衛隊にいても戦略戦術に縁がなかった木本と違って、保子はテロリスト。
両手共にセットするガトリングガン・アタッチメントを3階から、その普通の人間に発砲し始めた。
思うに、ハヤテは、ひとから支配されたり・利用されるのが嫌いなのだ。
だからワザと熊本の口車に乗った。
自分の手を汚したくない斗美たち院生、口ではデカいこと云ってコイツらにケンカを売れない竜馬、見ていて腹が立つ。
(あ、でも音矢はそんなことない)
だから、口車に乗ったのだ。
(砂子には何も言わなかった)
訓練のおかげで直撃で死んだガーディアンはいなかったがガトリングガンは次に元凶であるハヤテを狙い始めた。
―なんだ、それだと結局死に場所を求めていたというつまらない話になるじゃないか。
鳴り響く弾丸は急に止み、物陰から出てくると首の無い保子が頽れるところが見えた。
竜馬がレーザー・カッター・アタッチメントで保子の首をはねたのだ。
二階を見ると木本と神無月がレーザー・カッター・アタッチメントで武装した犬澤康安、韓璃音、ディヴィッドソン・エプスタイン、山内群馬、豊島亮の五人に囲まれている。
竜馬は身動きの取れない二人の首を颯爽とはねる。
後で判ることだが、要塞ホテルに出入りしていた天田有紀は手引きをし、伊都寿彦と共に、やはりレーザー・カッター・アタッチメントで部屋にこもって戦闘に参加しなかった戸泉レイと綾瀬の首をはねていた。
新参者の胡桃沢翔と清墨リイナの二名はその頃、外出していた向井、京本、大槻、室賀の4人をマークしていて、「終わった」と連絡があった伊都らと合流し、その者らの首もはねた。
ブレーンらの配下であろう医療チームがガーディアンたちを担架で運び、エンジニアらがエンマコンマの胴体と首と四肢を回収した。
ハヤテはレーザー・カッター・アタッチメントで竜馬に切りかかる。
竜馬はやはりレーザー・カッター・アタッチメントをかまえ、ハヤテのひと太刀を受ける。
超高圧度のレーザー同士がぶつかり合い、耳障りな音が周囲に反響する。
ハヤテには言いたいことがいっぱいあった。
それは「囮かよ!」「騙したな!」「蚊帳の外はオレだけか!」「最初から自分でやればいいじゃないか!」いや、ハヤテはその思考の中でたどり着いた。
―ああ、そうか。儀式が必要だったというワケか。
レーザー・カッター・アタッチメントとホバー・アタッチメントを外し、ハヤテは一人、要塞ホテルを後にする。
竜馬はその姿を見送るのだが、ほんの少しだけ笑った。
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