第29話 藤谷みゃーこ 4



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みゃーこの危惧はハズれ、結果から申せば大成功であった。

前準備に半年をかけ、翌年の春に決行された。

暴力団や過激派のような、特撮番組の悪役組織みたいに首領がいて、幹部が数名いて、怪人と戦闘員がその下にいて、といった組織形態ではない。

特殊詐欺グループは、リーダー格、かけ子グループ、受け子・出し子グループに分かれている。

一網打尽にすれば、個人情報を抑えられている受け子・出し子は後から警察に任せればいいので、今回はオミットする。

そして海外に拠点を持つグループも今回は外す。

仮にユニットでの飛行で移動して、何らかの機器トラブルがあった場合のバックアップが取れないと判断したからだ。

基本、リーダー格は斗美たちの捜査によると組織にはマニュアル提供や最初期の投資というオーナーというよりスポンサーのカタチでしか関わっていない。

すると実働部隊であるかけ子グループで、彼らこそ縦の繋がりは勿論、横の連携も取れるので、いちばん機動力がある。

一匹逃すとそこから数か月で又組織化する。

全国に受け子の拠点はエンマコンマたちが抑えた総数、32か所。

主に百万都市に2、3か所づつといった分布である。

そこで、東京・横浜・川崎、さいたまの十三か所を竜馬、有紀、神無月、大澤、京本、室賀で、仙台・札幌の五か所を沙也、璃音、保子で、名古屋・京都の四か所を木本、村田、原で、大阪・神戸の五か所を杉多、綾瀬、戸泉で、広島・福岡の五か所をみゃーこ、向井、大槻、デイヴィッドソンで強襲することになった。

ペントハウス本部に残った斗美、亜夜子がまずミダスの能力で特殊詐欺グループの全口座の預金を架空口座に移し替える。

午前零時。

それぞれが最初の拠点に強襲。

トレーラーに積めるイヴィトール・ユニットは3機まで。

故に東京班はそのため2台を配備している。

全員が1メートル程の長さのエレクトリックマグナス・アタッチメント(スタンガンのように電気を帯びた警棒のようなものを想起)を装備しているので、殺さずに電気ショックでその場に昏睡させる。

隊長のみ装備しているレーザーカッター・アタッチメントで頑丈な金庫を叩き切り、紙資料を強奪。

制圧が完了したと斗美と亜夜子が確認した時点で、美香や熊本が警察に回線を遠回りして通報。

50キロ圏内ならばイヴィトール・ユニットを用いて移動するが、仙台から札幌、広島から福岡と遠距離の場合はジェット・ユニットを装備し移動する。

ジェット・ユニットは発進の際にも、カタパルトが必要になるので、一台のトレーラーに一台のジェット・ユニットしか搭載できない。

これら多くのトレーラーやサーバーの運営には熊本や浜野らの配下が数多く参加している。

彼らのような半グレ組織は暴力団のようなツリー型組織でないために、当局からの捜査をかいくぐれた点が利点だったが、連帯と訓練が皆無なので、エンマコンマの強襲ならば、どの拠点も5分かからずに壊滅した。

そしてイヴィトール・ユニットとジェット・ユニットを併用することで、横組織の連絡が入る前にそれぞれの拠点にはエンマコンマたちが到着し、壊滅に追い込んだ。

だが6人を擁し、最強の武闘派・織豊竜馬が頭を務めても首都圏の13か所は流石に量が多かったので、別拠点に警報コールが届いてしまい、途中で竜馬はエンマコンマを三人づつに分けた。

オペレーションしていた斗美は思いの他、早く全拠点を殲滅した中京制圧グループのリーダー・木本にジェット・ユニットで早く戻ってくるよう命じた。

残り三か所中、一つはその木本たちが、もう一つは竜馬たちが潰したが、最後のいち拠点分は急遽、斗美と亜夜子がジェット・ユニットとレーザーカッター・アタッチメントを装備して、着地と同時に全員を制圧した。

―斗美さんたちに最後は助けられちまったが、これはあいつらが訓練に耐えてくれたおかげだ。

竜馬と木本はニートや引きこもりだったエンマコンマをこの作戦のために、兵士として教育した。

最初は不平不満が多かったが、ユニットやアタッチメントは斗美たちの財産と技術がなければ使えないし、せいぜいノゾキくらいしかできない彼らとしてはこんなデカいヤマを任せられるのがとにかく嬉しかった。

なにより己がエンマコンマ化した意義がようやく得られたのだ。

警察のやり取りを傍受し、そうとう混乱しているのが手に取るように判る。

そこに末端の受け子・出し子の情報も送った。

早朝には各地から戻った各リーダーから受け取った紙の資料も警視庁も郵送した。

こちらのエンマコンマ部隊もバックアップ要員の普通の人間も一切死傷者は出ず、特殊詐欺グループの数名は落下してきた天井やエレクトリックマグナス・アタッチメントの電力の高さにより重傷者は数十名出たが、幸いなことに死者は出なかった。

そして昼間から斗美のペントハウスで打ち上げパーティーが開催された。

軍隊のような訓練を共にし、大きい仕事をやり遂げたので、皆は打ち解けることができた。

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