第28話 藤谷みゃーこ 3



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2019年、秋、「組織」とか「ウチら」と自分らで呼んでいた斗美の団体は〈エンマコンマ同盟〉と正式に命名した。

どこかに届けを出すワケではないが、その代表には斗美でなく、川嶋美香が就任した(斗美は主催と名乗る)。

そのメンバーは大きく分けて四つのジャンルに分けられる。

まずは執行部と呼ばれる、人間側の美香、熊本、浜野、矢部、澤井で、事務処理や兵器開発等の主にエンマコンマたちのバックアップを務める。

エンマコンマたちは頂点の元老院、斗美、沙也、亜夜子、みゃーこ、竜馬、有紀、韓璃恩の現在7名で、例のペントハウスに自由にできる者たちだ。

次に、レギュラーと皆から呼ばれる者たちで、ペントハウスに入ったことがある者たち、ディヴィッドソン・エプスタイン、澤洋保子、木本レンジの4名。

そしてサポートメンバーと呼ばれる、ペントハウスでの謁見を未だ許されていない、そもそもエンマコンマとして組織だって活動することを違和感を持つ大澤、杉多、綾瀬、戸泉、神無月、村田、原、向井、京本、大槻、室賀の11名。

準レギュラーとサポートメンバーを竜馬が指揮し、その時々により招集し、活動を共にする。

数例挙げると、杉多は未成年女性への前科があり、神無月は新興宗教を転々としていて、それ程でもないにしても、綾瀬は引きこもりで、戸泉レイ(男だ)は大学を中退した今現在28歳でも仕送りを親から貰い続けている。

故に、仲間にすることを躊躇したのだ。

そこで、サポートメンバーという体裁を作って囲うことにした。

つまり保護であり、監視である。

保子はテロルの実践者ということで重宝がられたが、その活動は同盟の益になる諜報や隠蔽、新規エンマコンマの捜索・保護、そしてボランティア活動が最近動き始めている。

初期の頃、斗美と亜夜子で銀行の立てこもり犯を捕縛したような、〈この身体を用いての正義のための活動〉のことを総称してボランティア活動と呼んでいた。

斗美たち元老院の6名の女子は今となってはそのボランティア活動に消極的であった。

なによりその正体を晒す可能性が高くなるし、、組織としては何の益もない。

だが、竜馬が強弁に他の6名に反対した。

「サポートメンバーらにこのカラダの正しい使い方を教えることで、生き方を学ばせ、徳を身に着けさせることになるんだよ」

サポートメンバーたちは今現在もペントハウスから全ての挙動を監視されている。

ヘタを打てばエンマコンマの存在そのものがバレて、自分らも危うくなるという動機からのもので、当然その監視システムが張り巡らされていることはサポートメンバー(や澤洋保子ら)には伝えていないが、おそらく信用されているとは思われていないので、薄々気づているハズである。

この距離感を埋めることは急務と思われていた。

正直、斗美たちは新メンバーに会いたくないのであった。

その代行を竜馬が務めているカタチになっている。

竜馬に恩義を感じている有紀と元自衛隊の木本レンジが竜馬の副官となっており、有紀が斗美たちを繋ぎ、木本が実行部隊の実質的なリーダーとなることで、竜馬の将軍待遇の地位を支えていた。

「試しにやってみたはいかがでしょうか」

代表である川嶋美香が発言した。

そこで美香が提案したのは広域に展開し、海外に拠点を置く、特殊詐欺グループの摘発であった。

エンマコンマの能力により、警視庁のサーバーに潜入しているのは自分らの存在が官憲にリークされていないかチェックするものであったが、このようなネタも拾うこともある。

オレオレ詐欺とも呼称される、自宅電話に多くの場合、親族を装い憐みを誘い、自分らの口座に振り込ませる手口、それには電話回線や口座の設置と同時にその破棄も重要となってくるので、縦社会の犯罪組織でなく、フランチャイズ方式を取るのだ。

つまり組織が壊滅しても、残ったものはそのメソッドを知るので、又同じような組織を作る。

それが網目状に増えているので、セクト主義の警察による対応では後手後手に回っている。

根本となるマニュアルは同じことと、幹部クラスの人材がかぶったり・交流あることから、全国的な犯罪組織なのだが、その関係は淡く、頭をとって済むような形態をしていないのだ。

「なるほどね。確かに私たち向きの相手かも」

斗美のひと言がGOサインとなる。

「私たち院生が組織の構成や拠点を抑えるよ」

と亜夜子(元老とは云いたくないのだ)。

「では部隊はサポートメンバーを全員招集し、実施訓練する!熊本さん!ユニットやアタッチメントも使用させてもらうぜ!」

竜馬である。

「実際の摘発では是非使ってもらいたいユニットやアタッチメントが多数ある。実践記録こそが、大事ですので」

と浜野。

「面白くなってきましたね」

と沙也が璃恩に微笑み、璃恩も沙也に微笑み返す。

いちばんおたく気質が強いので、いちばん武闘派から程遠いみゃーこだけは、これで大丈夫なんだろうか、と思っていた。

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