第27話 藤谷みゃーこ 2
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〈ミダス〉は集金アカウントを同時存在させ、一度使ったアカウントは二度とつかわない。
だがモグラが掘った穴は存在するように、無いことが示唆になる。
ネット内に大量に落ちている小銭をかき集める、他人の預金や貯金を奪う、そして無から生み出す、の三種が〈ミダス〉の能力で、小銭はいちばん罪悪感が少ないので誰もが使うがその手法から数千万が限度、奪うのは後に出てくるヤツがやっている、無から有はこれこそ斗美がやっていることで、実態がないから破産する危険性があるのだが、斗美は元々資本を持っていたので、当面は見せ金でいいため、借金というカタチでやりくり出来ている。
これらに付きまとう後ろめたさが皆が〈ミダス〉の痕跡からの〈同類〉の発見を思いつかなかった。
この三種は同時に、その人物の道徳観・倫理観の物差しにもなる。
そして15人のエンマコンマが見つかった。
その物差しによると、無から有派0、小銭派4、強奪11、である。
斗美、亜夜子、沙也子、みゃーこ、有紀(こよりは別の部屋で待機)、竜馬のエンマコンマ6人と普通の人間である美香、熊本、浜野、矢部、澤井の5人、計11名が会合を催した。
みゃーこ「この強奪11人は論外でしょう」
亜夜子「実際、ニートにロリコン、過激派に宗教マニアと裏取ってもロクなヤツがいないのよ」
斗美「その通りで仲間にしたくないんだけど、そんな連中が目立って警察等の官憲に捕まり、私たちの存在が暴かれるのはヤバいよ」
熊本「量が増えると質の低下は免れませんしね」
沙也「私たちが教え、導けばいいのでしょう」
浜野「皆が皆、変われますかね。そしてもしそれでも矯正できない者をどうするか?」
澤井「でもさ、正直このペントハウスは日本政府の次くらいにこの国で力を持っているよ。そりゃあ、世界的企業には資産では負け、自衛隊には装備で劣っているが、メンバーの半分がエンマコンマだから即戦力という意味で強い。その傘下に入ることはお得と連中も考えるんじゃあないか」
竜馬「こちらが考えることはあちらもそのうち考える。俺たち6人に対し、あっちは15人、今のうちに取り込んでおいた方がいい」
矢部「ああ、そのうち政府や企業に取り入るエンマコンマが出てもおかしくない」
美香「では、こうしましょう。組織の中に階梯を作るのです。私たちフラットスキャンは背広組だから例外として、エンマコンマでは斗美さんが1位で、他の今いる5人の方は2位、これから入るこの15人は3位です」
斗美「えげつないわー」
美香「でも、そうすれば、良き事でなく、位が上がるから他人の貯金を奪わない、とか、竜馬さんのように善行を積むとか判り易い指針になるでしょう」
熊本「前から、組織化すれば、階級は必要になるとは思っていました。いい機会です」
この後に細かい決め事をして、そのように決まった。
そしてもういきなりこのペントハウスに連れてくるのではなく、皆がその者たちの住処に行き、事の次第を教え、その場で仲間となるよう勧めるという方向性を取ることとした。
つまり臣下として成長なければ、この城には来られない、なによりユニットやアタッチメントの使用は許さないのだ。
男性は全て織豊竜馬が行くこととなった。
天田有紀が「是非私も連れて行ってくれ」と頼まれたので、そうしたのは相手からすれば同じ能力を持つヤツがもう二人は合流しているという事実だけで反抗はしないと判断したからだ。
大澤康弘、35歳の部屋に突然入ってきたのだが、長い間、実家にパラサイトの子ども部屋おじさんだったから、親が頼んだ引きこもり連れ出し業者だと竜馬と有紀は思われた。
「ほぇぇぇぇ! やめろ! オレは日雇いバイトはしているから、渋谷系じゃねー!」
みゃーこと亜夜子は澤洋保子という四十路の過激派共産主義者の元に向かった。
23区内ではあったが、家賃が一万円切る部屋に二人は初めて来た。
保子「資本主義を打倒するために、資金運営をしたことを咎められる筋合いはない!」
みゃーこ「その資金、瞬時にゼロにできるけど」
斗美と沙也は二十歳の韓国からの留学生の元に赴いた。
池袋方面にある学生寮だったのだが、会った瞬間、同類だと理解したようで、泣かれた。
そして韓国人の美少女は沙也に抱きつく。
沙也は抱きつかれた様を楽しそうに眺める斗美に気づいて、眉間にしわを寄せる。
確かに沙也好みのかわいい女の子だった。
異国の地で、いきなり自分のカラダに異変が起こり、超常の出来事だから祖国の家族にも言えず、毎日悩み通しだったのだ。
勿論、彼女・韓璃恩は小銭派であった。
―こんなコでも金は、能力使って取るのかよ。
とも斗美は思ったが、それよりもこの事実に気づいた。
―日本人以外でもエンマコンマにはなれる。だが、土地としては日本しか発生していない。海外にも網を張ったが、該当する者はいなかった。これはどういうことか?
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