第5話 Let’s open

これで私たちどっちも味方いないの?やーん、私たち似たもの同士じゃん。仲良くしよーよー!」


「黙れ。」


「あのとき『楽しかった』っていってくれたじゃーん!私嬉しかったのに!」


「だ・ま・れ」



あの件から翌日。とりあえず私の自宅でラブを匿うことになった。

だが、あんなに派手にやったんだ。瞬く間にマフィア達にこのことは広がるだろう。当然ここがバレるのも時間の問題だ。

早く次の行動を決めなくては…。


「お屋敷に慣れてたからさぁ?ここだいぶ狭く感じるよ。」



コイツ鼓膜ないのかな。



「…てか、情報は?」


「えー、ハグしてくれたら…いいよ。」


謎に顔を赤らめている。きも。


「次変なこと言ったらこの家追い出す。」


「あーはいはい。いいます、いいます。」



…まず基本知識。

この国ではその時代ごとに、最も力の強いファミリーが他のファミリーを押さえつける。そうやってある程度の秩序が保たれるんだ。


本題はここから。

4年前にリベルタファミリーがいなくなってから、その空いたトップの座を巡って他のファミリー達で激しく抗争が続いた。

死ぬほど荒れてたよ。毎日銃声が聞こえてたし、爆発も日常茶飯事。夜の街に一般人はいなかったよ。


抗争は苛烈を極めたが、たった1年で終結する。


その抗争を制したのは、ザカースファミリー。

突如台頭してきたファミリーで、圧倒的な力で相手を捻じ伏せてきたらしい。


現在トップの座にいるのも、当然そいつらだ。


ザカースの特徴は2つ。


1つ目、ボスの素性が一切不明なこと。そもそもいない説すら囁かれてる。


2つ目、「スレイヤー」の存在。こっちの方が重要。

彼はザーカスの掃除人って呼ばれてる。

秩序を乱す輩のもとへやって来るんだ。

具体的に言うと、一般人を巻き込む大規模な抗争や身内同士の深刻な反乱、そしてザカースに危害を加えるなどなど…その関係者達を「掃除」するんだよね。


「…あれ、私達制裁されない?」


「うん、そうだね!」


「『そうだね!』じゃないでしょ!!ぜったい私たち殺されるやつじゃん!!」


私はラブに詰め寄る。


「まぁまぁ、落ち着いて…。まだ話おわってないよー。」


「…じゃあなに?」


「確かに秩序を脅かすと来るらしいんだけど、かなり大きな事じゃないとほぼ知らんぷりなんだよ。でも大した事なくてもたまに来るから、地雷がよく分かんないんだよね。」


「…なにそれ。」


「いや、ほんとそうなんだよ。猫ちゃんみたいに気まぐれなんだよね。なにがお好みなのかぜんぜんわっかんない。」


「でもそういう事だから多分大丈夫!……たぶん。」


「マフィアってなんでこんな変なやつばっかなの…」


「でもマフィアから見たらジータも変わり者だよ。君はマフィアなのに、とっても優しいんだ。愚かすぎるほどに。そんなジータのこと、私好きだな。」


「……うっさい。」




みんながただ普通に生きられる。

普通の幸せが得られる。


そんな当たり前を手にするのが、どんなに難しいか。


大義のもと振るわれる暴力に正義などある筈は無い。


なおさら人を殺す以上、悪と罵られようがそれは何も間違っていない。



でもね、私は信じたいよ。

この暴力で誰かを救えるなら。

この暴力に意味があるのなら。

なにか、私にさせてください。









…待て、ヴィオレンツァファミリーは?

あいつ普通に何人か殺ってたよな。

絶対ただじゃ済まないよね、これ。


「ラブ…一応聞くんだけど…」




「あ…」


「はぁ〜……」

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