第29話 甘いね

025

「た、助けなくて……」

「死にたくなきゃ止めときな

______私だってあの嵐の中には好んで入りたく無いよ」

弾丸が

弾丸が

弾丸が

宙を舞い

地を這い

その身体を持ってして、駆ける。

「……」

地面は燃えて、凍って、帯電している。

『嫌だなぁ無言か。もう少し銃使い同士として語り合いたいところではあるんだけど』

恐らく、あの男の銃______詳細は分からない、が

どうやらかなりの魔法を使えるらしい。

「……」

答えず、ただ弾丸を撃ち込む。

手に持っているのは砂漠鷲デザートイーグル______名前に反して、そう甘くは無い。

かの銃が使用する弾丸は.50アクション・エクスプレスAction Express弾______主に大型獣、そして最終兵器の殲滅に使用される超高威力弾丸。

当たったら確実にその部位は

『……んで』

何でそれをで振り回せるかなぁ……。

「多分だけど______、だ。」

『……反転?』

反作用軽減とかでは無く?

「最初はそう思ったけど……相手の弾丸の威力が、通常の2倍になってる」

『2倍って……まさか』

「反作用の方向ベクトルしてるんだ」

『マジかよッ!?』

銃の反動を威力に変換する______成る程、道理は通らない。

「______が、生憎この世界には魔法がある」

『何でもアリのクソったれ技術がな……しかしどう攻略したモンか』

「魔法無効化でも張る?」

『お前の反動で俺が死ぬ』

「良いじゃん自分で足を撃つ位なんだから」

『俺の事ドMとでも思ってる?』

視界は相手に。

リロード。

重々しく宙を舞う薬莢。

「……喋る銃、か」

「君よりはお喋りな銃さ。よろしく」

「人喰博士の作品か?」

______は。

は?

人喰?


なんで、


なんで







なんで

なんで

なんで




お前がその名前を。


「……にしては刻印も無し、か。すまない、勘違いだった様だ」

『……さいですか』

……あぁ


この顔で良かった。

きっと俺は今

ヒドい顔だろうから。


『……』

「大丈夫?」

『正直若干ヤバいかも。動揺タラタラ』

。まだ人間なんだね」

『未だ、ね______OK、もう大丈夫』

「宜しい。それじゃあ」

『______あぁ』

早めに切り上げよう。

……と言っても当然、真正面から勝てる相手じゃあ無い。

ならば不意打ちか。

否。

それならば暗器か。

否。

ならば剣か。

否。

否。

否!

『______廻式パーシ

ならば、蹂躙。

全てを捩じ伏せ、螺伏せる。

それに相応しい銃を。

「了解」

組変わる。

銃身は太く。

四角く。

迎撃用砲台の様に

大きく

大きく。

銃口が形を描く。

十字を描く。

「……な、なんですか……!?」

「メタルストーム、か……!

まぁ少なくとも、あんな風に持って使うものじゃあないね……彼らしい」

「……ちょっと不味いな……」

『名を、夢叶Dream killer

その十字に______

『1分で100万発撃てる……なんて、子供みたいな銃だ』

我が儘の過ぎる子供の様な。

あの日紙に描いた夢の様な。

故に、Dream killer。

夢を殺す銃。

夢を叶えてしまう銃。

『夢を追い掛ける瞬間こそが、人生唯一の楽しみである』

「______成る程、理には叶ってると」

追い付いてしまったら。

もう追うものは無い。

『最も、負うものも無くなるんだろうけど……さて、アリル』

「なに?」

『反撃劇の狼煙を炊き上げる時間だ。

______その銃ならば、十分過ぎる程に煙は上がるだろう』

「仰せのままに______我が主人公マスター

『宜しい。では______迎撃ッ開始!!!』

026

「______ッ!!」

『……マジか』

立っていた。

男が。

満身創痍、と言っても差し支えない風貌で______しかし確り確かに。

『大体10万は撃ったけど……まさか立っているとは』

意外意外。

一体どんな魔法トリックを?

「……十三面銃身」

『……と、言うと』

「成る程、十三面______彼の銃は、多分13個の性質を持っている」

『ほう』

「そしてその内の一つがベクトルに関するモノ

______魔法技量的に、ある程度の操作は可能なのかな」

『……あの銃弾全部に対して?』

「まさか。そんなことしたら人間の脳味噌のキャパじゃ耐えられない」

『じゃあ』

「条件は弾丸との接触、操作は大まか方向に指定……ってとこ?」

「……!」

『それこそ無理が……いや。

間接的な接触でもって事か』

「そういう事。あの量を逆手に取られたね

______僕らの弾丸が、彼の魔法の対象になってしまっていた」

『っぱ数で押すのは良くねえか……廻式パーシ

アリルを組み換える______元のライフル姿へと変遷する。

『しかし、ならば』

一撃で全てを捩じ伏せれば、良いと。

長く伸びきったアリルの銃口を男に向ける。

「……良い銃だ」

『最高の相棒だ』

「殺すか」

『命乞いの有無による』

「______そうか」

トリガーに指を掛ける。

『……どうする?』

「遺言を遺したい」

『どうぞ』

「次の階層には二人組の子供が居る。

……どうか、見逃してはくれないか」

『……子供かい?』

「違う」

『ならば情か』

「そうだ」

『断ると言ったら?』

「______抗おう。この身尽きる迄」

『醜く、甘いね』

トリガーを引いた。

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