第28話 青色の酒

023

六階層には何故か誰も居なかった。

のでカット。

「……しかし、案外あんな者なのかね。ここの門番とやらは」

『貴女が法外に強すぎるってのもあるとは思いますけど

……しかし確かに、如何せん肩透かしを食らったような感じは否めませんね』

門番というには……あまりにも、弱すぎる。

決着まで5分足らず。

書店院さんが相手とはいえ、もう少し粘れると思うが……。

「まぁ、それは許してやってくれ。生憎新人でな……人手が足りて無いんだ」

『!』

声______上から。

階段の先に、誰か立っている。

『貴方は……』

「ここの門番、さ。名前は向在コウザイアカ。「十三面銃身サーティーン」だ。宜しく頼む」

男が片手で拳銃を構え答える。

……というか今さっきから二つ名格好いいな……。

「なんだい、見ていたのか」

一寸ちょいとカメラでね……いや、凄いなアレは。糸かい」

「あぁ、そうだ______しかし、中々やるね。

私の才をそうすぐ見抜くとは。やるじゃないか」

満更でも無い様子で書店院さん、が……答えてるなぁ……。

『……書店院さん』

「分かってるよ。この完璧で無欠な私だぞ?敵にベタ褒めされたところで油断はしない」

『……』

大丈夫かなこの人……。

「……ま、立ち話も何だしな。是非上がってくれ」

階段上の扉が開く。

言われるがまま付いて行って

中は……バー?

「趣味でね」

カウンター側に入る向在。

「少年少女は未成年かな?安心しろ、ウチはソフトドリンクも入れてるんだ」

「あ、ありがとう……ございます……?」

「メニューはそこに張り付けてる通りだ。ソフトのオススメはオレンジ。直絞りだ。

んで、あんたは______」

「文庫。書店院文庫だ」

「いい名前だ。オススメはマタドールなんかだが……」

「ベースはテキーラかい。それも良いが……今日はショートで飲みたいね」

おいさらっとショートいきやがった。

「しょ、ショート……?」

『カクテルグラスで提供する度数高めのお酒の事。

氷を入れないから早めに飲むのが世間一般の了解だね』

「少年、詳しいな」

『昔本で少し仕入れまして』

「成る程、OK。甘めと辛めは」

「甘めのを」

「エクソシストなんかは?」

「いいね、最高だ」

「すぐ作ろう」

暫くすると、三角のカクテルグラスに入った青色の液が出される。

『……まだ戦闘残ってるんですけど……』

「良いんだよ、酒でも飲まないとやってられない」

俺と雨杭の分のジュースが目の前に置かれる。

「あ、ありがとうございます……あ、おいしい」

『ありがとうございます』

「いやいや、未成年とはいえ飲めないのは楽しくないだろうからね。

せめて気分だけでも是非味わってくれ」

ジュースに口を付ける。

……成る程、確かに美味しい。

「______それで、今日はなんで此処に?」

「君と飲み交わしに……と、言いたい所だけれど。とある魔法を探しにね」

「魔法、というと?」

「死者蘇生」

「______!」

『良いんですか、そこまで話しちゃって』

「人を見る目はあるんだ。コイツは______大丈夫。酒代掛けたって良いよ」

『随分な自信の事で』

「絶対な私の事だ。間違いは無い」

いつの間にか飲み干したらしい。

グラスをそっと机に置く。

「ところで向在君。何か知ってはいるかな」

「……」

「寡黙が語ってるね」

「……上だ」

「ほう?」

「10階層に居る男が持っている」

「成る程、ありがとう。それじゃあ私達は______」

「______が、此処は通せない」

男の空気が変わる。

「……へぇ」

懐から糸を抜く。

「弁解位は聞いてあげようか」

「……通せない。俺のエゴだ」

「それは、死んだ人間を復活させることに対するエゴ

……では、無いのか」

表情を読んだであろう書店院さんが言う。

「なら、そうだね……次の階層に知り合いでもいるのか」

「……」

「お、当たり」

「……ともかく、通せない」

「生憎私達もそんな君の私情を押し通して通らない訳には行かないんだよ」

「ならば」

「よろしい」

「「______戦争、だ」」

024

「戦争は戦争でも、代理人戦争だけれど______さて、少年」

『はい?』

「私は今疲れている」

『……さいですか』

「もう一度言おうか、私は今非常に疲れている」

『お疲れ様です』

最後の一回ラストチャンスだ。私は今非ッ常ーに疲れている」

『……出ろと?』

「YESだ。もう少し早く乙女心を読んでくれたら満点なんだけど」

『闘争心では無く?』

「逃走心でも無く、だ。なんだビビってるのかい?」

『そりゃあまぁ……正直に言えば』

「ならば宜しい______アレ相手に恐怖を感じれるなら満点だ」

『……強いって事ですか?』

「そう言うこと」

……マジかよ。

「ま、精々頑張りたまえ。最悪君が死んでも次弾は居るぞ」

『特攻前提ですか』

「二発目迄はね。三発目は確実に仕留められる弾を出すから安心したまえ」

……死ねば雨杭二発目を装填するのも厭わない、と。

『……趣味悪いですね』

「おや、私は何も言ってないぞ」

『そこが悪趣味だって言ってるんですよ』

「分かっているなら______存分、逝きたまえ」

『分かりましたよ……

アリルを手にもって、進む。

「対物ライフル、か。取り回しが悪そうだが」

『慣れてるモンでして』

「成る程。なら私はもう何も言わないよ

______「十三面銃身」。推して参る」

『「2/2Two One Two。何時でもどうぞ」』

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