第27話 暗い部屋

021

「!?誰だ貴」

「何」

「追加の傭」

「助け」

「侵入者!?応」

「なぜ侵」

「門番はな」

「______これで、この階層は御仕舞い」

積み上がる首無し死体。

御丁寧に首は別の場所に纏めてある。

『早ぁ……2分も掛かってませんよ』

「2分も掛かったのか。我ながら腕が落ちたね」

『落としてるのは頭でしょうに……アリル』

「……うん、第四階層に生命体反応無し。攻略完了」

銃身にこびりついた血を拭き取る。

『いやぁ、書店院さんの言ってた通りというか……

ホントにすぐ終わりましたね』

「前戯みたいなものだしね。

セックスでも無い限り、時間を掛けるべきものではない」

『さらっとなんちゅう事を』

「おや、早く挿れたい派かい?童貞臭がプンプンしてるね」

『今日は四段と貶しが強いですね……』

「健気だろう?こうも一つの事に向かってひたむき努力する私は」

軽口を、軽くのしながらマガジンを刺し直す。

「……しかし、少年の童貞的事情は一先ず置いておくとして」

『おうおう一番重要な所ですよ』

「雨杭ちゃんは……大丈夫かい?」

『無視ぃ?』

「……うえ゛……」

びちゃびちゃと吐瀉物が吐き降りる。

おっと別にマジマジ眺めてる訳ではないぞ。

音で判断してるからな。

勘違いするなよ。

「うーん中々に吐くねえ。流石に年頃の乙女には少しキツイか」

「……ず、ずいまぜん……」

「ま、仕方ないね。流石に酷だろう」

書店院さんの糸が、さっと雨杭の目を包む。

「あ……」

「ほら、さっさと行くぞ少年」

『……なんか優しく無いですか?』

「そりゃあ君でも無い限りは基本私は優しいよ」

進む。

『何故に俺に当たり風が強いのか訊ねたいところではありますけど』

「男だからね」

『フェミニストが黙ってませんよ……?』

「全員死んでるからね。信じる者がいない思想は死んだも同然だ」

『……救済実現委員会の様に?』

「男女平等世界平和の様に。

……最も、そう言ってたヤツらからナイフを手に取ったんだけど

虹色の大義を掲げながら」

階段を上る。

誹謗テキストナイフを、ね。振りかざして振りかぶってたよ」

『皮肉ですか』

事実指摘皮肉だよ。実際それも第三次大戦の引き金になったんだし……

いやはや、言葉は怖いね。思ったよりも簡単に人を殺める」

『だったら今さっきまでの暴言を是非撤回』

「安心しろ。君はそう簡単には死なせない」

『格好良いのかそうじゃ無いのか……』

上りきる______扉が一つ。

雨杭の目の糸を外して、ドアを切り刻んだ。

「……ようこそ。随分と派手なご登場で」

「歓迎どうも______だが生憎君に構ってる暇は無いんだ』

「まぁまぁそう言わず、せめて名乗口上だけでも。

私の名前は咬条かみじょう空室くうしつ。「刀絶千カタナタチ

______以後御見知りおきを」

『……』

咬条空室。

当然だが聞いた事のない名前だ。

「さて、私の手番は終了……次は貴方の名乗り番ですよ」

「残念だが"咬ませ犬"に咬ませる様な

陳腐でチープな名乗りは持ち合わせていない」

……書店院さーん……?

「……そう、ですか」

妙に血管の浮かんだ手をポケットにし舞い込む。

「ならば、言葉はもう必要ありませんね」

「あぁ存分に十分だ______さっさと掛かって来い青二才。

022

刀。

刀刀刀。

刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀刀___________刀!!!!

「魔法で一から刀を組み立ててるのか。やるねえ」

軽く100は越すであろう刀達

私は軽く去なす。

『……すっご……』

「ありゃあ人間じゃないね……」

「……と、というか助けなくていいんですか!?」

『助けるって……なに、相手を?』

「いや、そうじゃなくて、書店院さんを______」

「非常に有り難いが、今回は不必要だ雨杭ちゃん!」

弾き返しながら返す。

「で、でも」

「君のその能力は非常に有用だ______当たれば、確実に効く

だから、こんな相手に使うべきじゃあ無い」

糸を一本、直線上に張り付ける______跳ねる刀。

咬条の1cm右に突き刺さる。

「だから、私を信じて待ちたまえ。」

「……無視は堪えますね」

「なんだ君も少年と同じ寂しん坊か?可愛いヤツめ」

少年達を守りながら射線誘導。

刀の方向を少しだけ変える。

もう少し

もう少し

そう。

良い子だ。

カーテンの張り巡らされた窓を。

その刀が外に持っていく。

ガタが来ていたのだろう。

窓も外に落ちる______そして。

「光が、降り注ぐ」

当然。

窓一枚隔てたその先には、外が______太陽がある。

どうやら随分綺麗な夕焼けらしい。

そう。

光で一瞬視界を奪える程には、綺麗で美しく、強い光なのだろう。

「______!」

「確かに、やましい物には布を被せたくなるよね。

ま、だからこそその布が剥がされることなんて

君は考えていなかったのだろうけど」

落ちていた刀を拾う______一投げ。

脳天を突き刺した。

『……1分半。はやぁ』

「君の敗因は一つ。

私を敵に回したからだ」

血が滴り始めた。

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