第20話 神様

003

6日程。

広島県~大阪府まで

徒歩でざっと120時間

現在時刻12:22

現在地______救済実現委員会

本拠地

の、食堂。

食堂?

「やぁようこそ、歓迎します」

『……』

目の前には大量の料理が並べられていた。

「……どういうことでしょうか……」

「さぁ?ただまぁ、毒は無いみたいだ……間違いは無いだろう?アリル君」

「毒味にされたのは少々堪えるところがありますけど……確かに、毒は無いみたいです」

『……どうなってんだ、コレ……』

話を簡単に要約すると。

1時間前、救済実現委員会本部前

1日掛けて聞き込みを行っているところ、信者に出会う。

交戦を警戒したが幸い発展は無し。

本部への案内を要請、まさかの承認______結果。

神とのお食事会。

『……』

なるほど。

なるほどぉ……。

何だろうなこの理解出来るけど理解し難い展開は……。

都合が良すぎる、というか。

仕組まれたみたいに一瞬で神まで辿りついてしまった。

『……えと、お名前は』

クツワ黙秘モクヒ。一応神様だよ」

『……なるほどぉ』

「そして隣の人が______」

白々シラジラ私意シイ。お見知り置きを」

「私の親愛なる右腕だ」

『……』

あっやしいー……

「それで、本日はどのような要件で?」

『あ、あぁ……えっと、そちらが所有している魔法について、

少し尋ねたいことがありまして……』

「と、いいますと……」

『六文銭返しについて』

「!……その魔法が、如何しましたか?」

と言うことはやはり。

持っているのだろう。

『……無理を承知で申し上げさせて頂きますと、

______ソレを譲って貰いたい』

動揺は……無し。

揺さぶりに効果は無いようだ。

「どのような魔法かは、ご存知で?」

『死人の蘇生と、伺っております』

「……成る程」

「何処でソレを?」

『……この委員会の手に渡る前に、私達と関連のある組織がソレを持っていたものでしてね』

「組織というと」

『とある願いを叶える為に一般人が立ち上げた、小さな小さな組織です。

態々名前を出すような者共ではありません』

「______分かりました」

「それで、誰を?」

『……あー……』

やっべえ。

流石に許可なくは言えねえ……。

というかコイツ無神経だ。

ノンデリってヤツか。

仕方ない、ここはやわめに言わぬよう

「私の、母親です」

『!』

「母親……成る程、戦争で?」

「いえ、殺されました」

「誰に」

「……轡様、いくら何でもそれは」

「______父親に」

「なっ……」

「……父親、ね。成る程大体の事情は察した」

パンと手を打って立ち上がる、神。

「じゃ、じゃあ……」

「だが無条件というのはいただけ無いな______そうだね」

そして此方を一瞥。

「……うん、そこの箱入り少年」

『……私、ですか?』

「そう君だ。これから暫くの期間時間はあるかね?」

書店院さんと目を______頷く。

『えぇ、ある程度なら』

「私と勝負をしよう」

『……はい?』

「!?」

「へえ……」

「勝負だ______4日後の12時、ソレまでに試合の為のステージを作る……そこで、私と君で勝負をしよう」

004

「いやー随分と面倒な事に舞い込まれたねえ」

『その割には「あぁ、少年なら別にいいか」って顔に描いてますけど』

「おぉ、良く分かったね。来世は警察でもやるといいよ」

来客用部屋

18畳、畳敷き。

旅館に良くある端のスペース______あり。

「……しかし、随分と待遇がいいですね」

「飯の方も検査は掛けさせてるが全て問題無し……

更に言えば、ソレ以上に気になる事が一つ」

『……信者、ですね』

「そう、それだ。はっきり言って______善良だ」

「特にこう……お金を沢山捧げてます!

みたいな感じでも無かったですしね……」

「となると……この情報自体間違っていた可能性がありますね」

「確かに否定は出来ないな……少なくとも戦前は前述通りの団体だったらしいけど」『戦争により最高指導者が死亡______それによって、新たな"教え"が出された……ってのがまぁ、概ねな所じゃ無いんでしょうか』

「君に台詞を取られたのは大変癪に障るが、確かに否定は出来ないな。

もう霊感商法からは足を洗ったんだろう」

俺の頭を掴んでガシガシしながら言う。

「……にしては、幾分荒っぽい方法を条件として出しましたけど」

「そこはそうだね。勝負______それも少年とのタイマンだ」

「私、ではなく」

『俺が戦う______それこそ癪に障ったか、俺の見た目が』

「じゃあこんな厚待遇にはならないだろう」

『……うーん……』

「考えれば考える程合理性を欠いているね……」

勝負、ねえ……。

「……ま、ソコは考えてても仕方ないでしょ

______正しく、神のみぞ知るって所だからね」

『……それもそうか』

凡夫な俺達には。

崇高思想なんぞ分かるわけもなく。

「それに勝負事以外は別に悪い所があるわけでもないし。

こんな旅館みたいな……それこそ温泉もあるらしいし」

『おんせっ……マジで?いつ言ってた?』

「部屋に来るとき説明されてたよ。……案内しようか?」

『よし頼んだ』

部屋から出ようと腰を伸ばす。

俺達はそのまま噂の温泉に______

「……因みに興味本位で聞くんだが」

『……ん?』

「アリル君って風呂はどうするんだい?」

「行けますよ?」

『……え?』

「……え?」

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