二章 信仰と踊る欺瞞、その背後の暗闇と歯車

第19話 信仰する者

001

1ヶ月が経った。

早いもので、もう外では寒さを感じる。

……え?

あの少女達はどうしたかって?

そりゃあ、アフターケアだったり、食糧だったり生き方だったり。

色々与え教えて、後は知らない。

まぁ、生きてるとは思うけど。

……無責任?

責任が生じて無いからね。

俺達はあの子達を救う立場には無いし、そこまで俺は聖人じゃない。

あくまで、たまたま目についたから助けただけだ。

見捨てる可能性だってあった。

それでも可哀想だって言うのなら、君がボランティアでもやっておけばいい。

おすすめするよ。

君の様な誠真な聖人にはお似合いだ。

______ともかく、俺達は彼女達にそれ以上干渉はしていない。

必要最低限は与えた。

それだけだ。

「……と、言いつつ別れるとき君が一番涙ぐんでたけどね」

『書店院さん、今格好いいところなんです』

ともかく、そう言ふことで。

数日の滞在の後、俺達はあの街を出た。

『……んで、それから暫くは本州を彷徨いてる訳ですけど……』

「うん、全く持って情報が無いね」

生憎、ご覧の有り様で。

渡り渡り辿るも、全く持って手掛かりは無かった。

「全然情報見つかりませんね……」

『そのくせ兵器共は一丁前に出てくるからな……今週何体だっけ』

「3だね……内訳は二級が1、三級が2」

『まだ四級が出てないだけマシなんだけど……それでも多いよなぁ』

「しかも中身はハズレばっかり……この前のとか、

なに丸いものを好きなだけ回せる魔法って……野球でもするの?」

「結局アリル君の銃口の上でバスケットボールを回すという

遊び方に落ち着いたよな」

「概ねそれには賛同せざるを得ないな……流石に、暇だ」

『せめて一人位生きてりゃ良かったんですけど……』

「悪い、皆殺しだ」

『おおう強者……軽く探しましたけど残党も居なさそうですし』

「ま、そこは諦め______………………」

「……どうしました?」

「……六文銭返しの名前が使われた資料が、たった今作られた」

……はい!?

「!?」

『ま、マジですか!?』

「マジもマジの大真面目だ……どうやら、

とある宗教団体が作成した資料らしい」

「宗教団体……?」

「信者1000人の大規模近代宗教______名前は、救済実現委員会」

一人の神を信仰し、その教えを守れば死後

______そして来世は救われる。

という教えらしい。

……まぁ、実態は良くある霊感商法が目的の集団催眠だけれど。

「問題なのはその神______クツワ黙秘モクヒと名乗っている人間だ……戦前の情報だが、彼は自分を神と語り、救済の名に基づいた寄付行為を信者に要請している______儲けている。最も、本人達が救われた気になってるのなら、それでも良いのかもしれないけど」

正直今の世の中じゃ、もう来世に期待するしかない……そう悲観的になって

ならばせめて来世はどうか______なんて、そう願ってしまうのも。

分からなくは無い

『……ところで』

「ん?」

『その救済実現委員会がどういう活動をしてるのかっていうのは大体分かったんですけど……どこでやってるんですか?』

「ああ、そうだね。そう言えば言ってなかった」

にやり笑って、突然壁にマジックペンで絵を描き始める。

「!?お、怒られちゃいますよ……」

「どうせ死んでるさ______どうだ、コレで」

そして現れたのは日本列島。

妙に上手い。

「んで……」

いつの間に用意したのか、赤いペンでとある位置をマーク。

『……遠くは無いけど……なるほど、中々面白そうですね』

「だ、大都会ですね……」

「……?ここは……」

「ふっふっふ、分からぬかね……まぁ安心したまえアリル君。

今回行くのはそんな君でも必ず知ってるであろう府だ」

「……府?」

「そう府だ______府は府でも西日本、超大型大都市

天に昇るは通天閣、空を覆う巨大な広告塔共道頓堀、そして遊びはUSJ

摩天楼と繁華街で溢れる街______大阪だ!」

002

「……」

「……来る」

「……来る?」

「あぁ、来る」

「と言うと……何が?」

「とある人物______それも、相当に強い」

「へぇ」

「目的は……六文銭返しか」

「あの蘇生魔法?」

「それを求めてココに来る……拒むか?」

「んーいいや」

「何故」

「別に、そう戦ってもねえ……態々信者を減らしてもアレだし」

「……」

「それに、私達はあくまで救済実現委員会だ。

人の子一人救わずして何と名乗ろうか?」

「了解した……オノマトペにもそう伝えておく」

「ありがと、それじゃあ……皆に祝福が有らんことを」

「皆に祝福が有らんことを」

0003

「ほう、来客か」

「はい。私の能力で観測が確認できました」

「名前は」

「書店院文庫、雨杭凌撫、そして______不明」

「……不明とな?」

「物語の登場人物として定まっておりません」

「それならば、直ぐに脇役に降格______

もしくは、自我崩壊を起こすであろうに」

「しかしその人物……仮にAと置きましょう、

彼は現在も尚自我を保っています」

「……興味深い」

「報告は以上です。それでは」

「待て」

「……?」

「ソイツは生け捕りだ」

「!?」

「気に入った……中々、気になる」

「……お言葉ですが、それは救済実現委員会の理念に______」

「ならば旧理念だ。戦前の理念を急遽法典に適応させろ」

「……不可能です。いくら何でも、この数日の間では……」

「第1法則のみでよい。"救済実現委員会は、その名の下に全ての人間を救済する事を宣言する"______あくまで、人間のみだろう。

Aは名を持たぬ。それすなわち、人物ではない______人間ではない」

「……」

「命令だ」

「……承知、致しました」

「成功報酬はガジェットの追加……

失敗した場合は生命維持機構を停止させる」

「……はい」

「それでは、皆に祝福が有らんこと」

「……皆に、祝福が有らんこと」

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