第16話 再建

017

周りが、

光に照らされる。

月光ではなく、炸裂した弾丸の光に。

「っ小賢しい。無駄だと」

「______本気!?」

『撃つ』

影が、雨杭が、銃身が______光を帯びる。

迷わず向ける銃口。

ぎゅっと閉められた雨杭の目。

影も指を向ける。

互いに、狙って。

『死んでくれ』

放つ。

当たらない。

僅かに横に逸れて後ろへ。

影が、その真っ黒な顔を歪ませる。

口を歪ませる。

「勝った。貴様は______」

『______光よ』

______が。

弾丸が突然、光を帯びる。

閃光。

超威力の______光。

フラッシュライト。

後ろから、焼く。

「!?何っ」

『じゃあな』

「貴っ」

中指。

影が消える。

ボロボロと、消えて去る。

「……え、な、何が……?」

『光で殺した』

光あるところに影無し。

何時だって日向に影は居ない。

「飽くまで暗闇が影として生きる必要最低条件だから……懐中電灯で照らしてやればすぐに死ぬよ」

「な、なるほど……っ」

フラりと、突然雨杭が倒れる。

「うあっ」

『っと危なぁ……大丈夫?』

「……な、なんとか……」

支えて、ゆっくり寝かせる。

『ちょっと待ってね……今結界の方に運ぶから』

「い、いえ……そこまでしてもらう必要は」

『ありだ。しっかり眠りなさい』

お姫様だっこ。

なんやかんや楽な運び方だ。

「あ……」

『アリルー索敵よろ』

「りょーかい」

持ち上げて、持ち運ぶ。

ここから結界は300m程度。

そんなに時間は掛からないだろう。

一応身体に考慮して、ゆっくりと。

『……?』

「あ、秋成さん……今日はその、本当、ありがとうございます」

『……ありがとう?』

「私の我が儘に、付き合って貰って」

『あぁ……いいよ、別に。好きでやってる事だし』

「でも、私に美味しい物奢ってくれたり、一緒に色んな小物見てくれたりとか……」

『どうせ使う事の無い金だからさ』

「……嬉しかったです。こんな、私に付き合ってくれて」

『そう自分を卑下する物じゃないよ』

「そーそー。こいつも久し振りの女の子で舞い上がってるだけだから」

『てめえ折るぞ』

「止めて暴発しちゃうわ」

『何その銃身ならではのジョーク』

妙に壺に入ったらしく、雨杭が顔を隠しながら笑ってる。

耳が赤い。

「お、受けた」

『やるじゃん……その返しに免じでお釈迦にするのは止めてあげよう』

「そんな洒落みたいなノリでお釈迦にされるところだったんだ……」

言いながら足を進ませる。

若干顔を出した太陽が、少し道を照らした。

『……ん?』

「どした、忘れ物?」

『いや、何か……雨杭』

「……は、はい……」

未だ妙に笑っている。

『いまさっき、影に触られた時。何か身体に異変あった?』

「……異変、ですか?」

少し考える。

「……なんか、身体が少しダルくなったというか……力が抜ける感じが」

『______!』

不味い。

片手で雨杭を支えて、もう片方の手でアリルを構える。

放つ。

衝撃、身体が一気に吹き飛ぶ。

「______うわぁ!?」

『ちょっとだけ我慢してくれっ……!』

更に数発撃つ。

加速した身体が、風を切る。

結界前。

雨杭を立たせて、結界中に入れる。

「あ、秋成さん!?」

『中の奴を頼む!』

それだけ言って、もう一度飛ぶ。

朝方。

少しづつ空が黒から青に染まる。

『アリル!魔法の反応を全検出!』

「全検出!?なんで急に……!」

『俺達は敗北していた!あの魔法は……貯蓄魔法……!

眠ってた少女と、雨杭の分!この二つを、合わせたら……!』

空を。

突然。

黒が引き裂いた。

018

「……?」

墓と、方舟の中の人間の首を削ぎ落としている所に。

その音は突然聞こえた。

血溜まりから立ち上がる。

「……方舟は既に崩壊して______」

まさか

魔法のみ成功させた?

方舟を捨てて。

この世界の浄化だけでも行おうと______。

「……ちょっと不味いかもね」

必要最低限の血だけ落として、方舟を跡にする。

研究室を走って、走って、走って。

外に出て、気付く。

空が、

引き裂かれて

「……間に合わなかったか」

そして

その身体が顕になる。

皮膚で覆われた。

その無感情な身体が。

「______最終兵器」

その無感情な眼が。

世界を見つめていた。

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