第15話 この物語はフィクションです。

015

頬を、

糸が掠める。

「成程!君は観測者として______読者として舞台に立てているのか!

面白い……!」

「私はそんな立派な者じゃないよ。所詮登場人物さ」

「そう遠慮するものでは無いよ。君は、選ばれた人間だ……!

どうだ、私の方舟に乗るつもりはないかね?君なら、きっと______」

「断る」

一瞬の隙。

見逃さず、身体に糸を絡める。

「______やるじゃないか」

「その言葉君にも返してあげよう……なぜこの世界に気付いた?」

「飽くまで偶然だ______世界が、

君達の様な人間が歩けば、トラブルが起こり、助けを求める人々が現れる……そこに違和感を持った。それだけさ」

「……成程。概ね正しいね」

「……是非、君の意見も聞かせて貰おう。何か含みのある言い方だ」

「人の台詞の裏を読める所は褒めてあげよう______

______君は、半分間違っている」

「……半分?」

「そう、半分だ______私はではない」

「______!?」

「私の横に居た______今は君の経営している悪趣味な風俗に居るけれど、あれがこの世界の主人公だ」

「成程!だから君は……!」

「そう言う事」

首に罹った糸を強める。

一筋、垂れる赤。

「……」

「さて、お喋りは此処までだ。君を殺して、方舟内の人間も皆殺す」

「……彼らも、殺すのか」

「当然だ」

「くく、流石の残虐性だ……!一人でも生きて居れば希望があるのだが」

「安心しろ。君の希望は悉く私が絞め殺す」

さらに強める。

皮膚に食い込む。

「私も此処迄ココマデか」

「あぁ、ここまでだ」

「人を殺すのには抵抗は無いのかい?」

「無いね。でなきゃ私が死ぬし」

「心無き読者ドクシャだ」

「心無き読物ヨミモノだよ」

「……そうか」

「それじゃあ、死んでくれ」

グッと、首を跳ね飛ば

「間に合ったか、棺撃」

当然えぇ、それはもう。尋常に

016

「……血腥ナマグサい」

『それは同感……近距離で高火力ぶっ放すのは良くないね』

暫くして、

そろそろ何処かに誘導されてものかなと、店内から這い出す。

中は______屍のみ。

うんともすんとも言わない死後硬直共。

『行ったかな』

「ぽいね……それじゃ、雨杭さんと一緒に書店院さんの所行きますか」

仕度。

最低限の血だけ落として、服を着る。

『……服は買い換えかだな』

「どっかに売ってるといいけど」

言いながら、外へ。

血が身体を冷やす。

「うへー夜だとやっぱり寒いね……」

『終わったら暖かい布団で寝むりたいな……書店院さんの位置は』

「あの研究室の近く。多分交戦中」

『交戦中?意外だな。あの人ならすぐに終わらせると思ってたけど』

「ま、概ね甚振イタブってるって所でしょ」

『それもそうだ……雨杭、誘導終わったー?』

……返事はない。

「……先に行っちゃったかな」

『いやぁ、そんな事は無いと思うけど……』

廃材の突き刺さった道路を突き進む。

全く声もしない。

『______人払いされてる?』

更に進む。

前へ。

少し前へ。

「やぁ、少年」

「……!」

『……あぁ、成程』

そして理解する。

裏を掻かれた。

胡座を掻いているところに。

少女と影。

絡み付く様に、口と指先を押さえられていた。

017

報告彼女は、確りと影に抑えさせました

「ありがとう」

「……人質って訳か」

成程、有効手段だ。

私をここで押さえて、向こうに少年と雨杭ちゃんだけ残す。

アリル君じゃ威力が強すぎて、放てない。

更に言えば

「雨杭ちゃんを魔法の贄にするつもり、か」

「正解だ。アレは主人公に限りなく近い。魔法もきっと成功するだろう」

「上手いね」

「君ほどではないさ……さて、拮抗状態だ。どうする?今降伏するのなら、君の事は生かそう……最も、すぐに死ぬことにはなってシマうのだけど」

「……」

どうするべきか。

ここで時間を稼がれたら、間違いなく雨杭ちゃんは魔法の贄として死ぬ。

完全敗北______これだけはなんとしてでも避けなければならない。

しかしコイツらを生かして置けば、間違いなく何らかの損害が起こる。

方舟起動の可能性がある。

どう、すれば______。

「……花火?」

バッと。

外の窓を見る______確かに、花火。

それも普通の花火では無く、大きな、白の花火。

少年だ。

彼処に、少年が居る。

あぁ、そうか。

彼処には少年が居るんだった。

なら______大丈夫だ。

斬り鋏ダントウ

/背景が赤く染まる。シルエットで私と、朧が写し出される。

男の______朧の首を切り落とす。

切り音。

驚愕______!

「さて、ならば安心______心置きなく、だ。少年、ここは任せろ。

皆平等に、殺してあげよう」

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