第13話 噺をしよう

010

「……少年、私は君がそんな最低な奴だとは思わなかったぞ……」

『色々と誤解があるのは分かりますけど……』

博多駅前。

羽織っていた制服のブレザーを少女に、アリスに着せて______身体が小さくこれのみで事足り、持ってきた俺に向けての一言だった。

「まぁ冗談は程々にしておいてやろう……どうしたんだい?そいつ」

『救って来たんですよ、ビルの中に隠された実験施設から』

「痛いぞ」

『いや冗談では無くてですね……』

「ほ、本当なんです!」

「残念ながら書店院さん。これマジなんですよ」

「……嘘だろ、と疑いたい所ではあるのだが……流石に雨杭ちゃんとアリルちゃんが言っている以上、そう無下には出来ないな」

『俺の信頼性どないなってるんですか』

「天より低く地面より深い」

『最悪じゃないですか』

「ま、取り敢えず座れ______話は聞こう」

そう言って観葉植物で飾られた木の椅子を指し示す。

「で、何があった」

『向こうのビル、あそこの一階が研究室になってました』

「中には墓棺撃、そしてその少女______あと、朧蜀色と名乗る男が」

「!」

『中で男と交戦、殺害が難しいと判断して再構成ロードを使用……少女と一緒に此処に身体を再構成しました』

「……なるほど。朧蜀色が、か」

『……知り合いですか?』

「今さっき知った。

恐らくだが、ソイツが魔法を______"六文銭返し"を、持っている」

「!?」

『なっ……』

アイツが!?

「購入履歴を調べた______そこに、朧の名前が」

言いながら、手に持った焼き鳥を頬張……いつの間に?

『吊屋は?』

「もう見付けた。というかソイツから聞いたんだ」

『成程』

「……それじゃあ、どうすれば……」

「決まってる。強奪だ」

串を吊屋の写真と一緒に放り投げる______ベッドショット。

目の前の柱に突き刺さる。

「ご、強奪……」

「そうだ強奪だ。殺して奪う」

『……って言っても、どうするつもりですか?

今からじゃ追えないだろうし……』

「……何か店でもやっていればまだ追いかけようがあるのだが」

『……店?』

「……なんだ、心当たりでもあるのかい?少年」

『……あるには、ありますね。ただ……』

少女と、雨杭を一瞥。

「……成る程。雨杭ちゃん、ちょっと待っててくれるかな」

「……え、でも……」

「大丈夫、すぐ戻ってくる……その間この少女を守っておいてくれると嬉しい」

「わ、解りました」

「ありがとう______さぁ、ちょっと此方に来い少年。

私達は汚れた噺でもしよう」

011

『売春です』

「どのぐらいの規模だ」

『言い方的には恐らく複数人確定……下手したら二桁いくかも』

「クズだな」

『クズですね』

裏側、硝子を幾つか挟んで______最も、殆んどが割られていたが

俺と書店院さんは其処で話をしていた。

「……しかし、なるほど。資金には困らず魔法の対象も探せて……頭だけは回る」

『店名も聞き出せば良かったんですけど……すみません、中々』

「謝ることは無い。寧ろこっちが感謝するよ______絶望的に面白味の亡い本棚BOOK・ブック・本

彼女の手に、黒表紙の本が出現する。

「……ここから400m先だ。害蟲連合の傘下の風俗店がある……それも、小児専門の」

『襲撃しますか』

「……いや、まだだ」

チラリと腕時計を見る。

「今日はもう遅すぎる。襲撃は、明日の夜からだ」

『……でも』

「気持ちは解る……が、正直ここで今すぐ行っても勝てる気はしない。

それに______君もアリル君も、消耗している。休むべきだ」

『……解りました』

「……納得はしないで良い。でも、どうか理解はしてくれ」

それだけ言って、彼女は雨杭の所に戻る。

「……どうするの」

『流石に言われた通りにする……今の状態じゃ勝てそうにもないし』

「……ふぅん」

少しだけつまらなそうにアリルが言う。

『ま、大丈夫だよ。明日になれば嫌に成る程血を浴びるだろうから……取り敢えず今日は休もうぜ』

「……分かった」

『ん、宜しい』

ポケットから一つだけ個包装に入りっぱなしの苺飴______刺身を食べた店で貰った、を取り出し、アリルの銃口に入れる。

「……美味しい」

『そりゃあ良かった。さ、早く行くぞ』

012

「アイツは」

「宿を探している」

「付近の検索を」

「他に女が二人」

「そしてアリス」

「贄はまだ近くにいる」

「寝込みを襲おう」

「許可は」

「既に」

「方舟は」

「残り2割だ」

「もう少しで完成する」

「飛び立てる」

「地上の清掃」

「ノアの方舟を顕在する」

「我々の思想が」

「遂に完遂される」

「人員はどこに?」

「既に詰め込んでいる」

「殺れ」

「殺せ」

「影に滴り」

「刺し殺せ」

「刺し殺されるのが好みかい______影共」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る