第11話 半地下の研究室
007
一時間以上探した______と言っても、中盤以降は雨杭と一緒に色んな小物屋等も回って若干浮かれ気分が入っていたのは否めないのだが、結局見つかる事はなく。
俺達は若干の諦めムードの中飯を食っていた。
「……全然見つかりませんね……」
『だな……流石に無作為じゃ厳しいか』
「かといって策があるわけでも無いけど……どうしたものかな」
刺身を口のなかに放り込む。
新鮮……とは言いがたいが、食べられない事は無い。
『あの人にもう少し情報聞いておくんだった』
「だね……どうする?」
『捜索範囲を円形10kmに広げる。愚直だけどやらないよりかはマシだ』
「分かりました!」
「了解。それじゃあさっさと探しに出ますか」
『だな。店主、会計を!』
「あ、私……」
『いいよ別に、ここでぐらい格好付けさせてくれ』
「どうせ使うことも無いもんねー」
『失礼な……先外で待ってて』
「は、はい。ありがとうございます!」
現金で支払い。
3000円を手渡し店を出る。
外は幾分暗い。
『……』
何人かがその通りを抜けていく______吊屋は居ない。
が、代わりに。
俺はその手を見た。
恐らくポケットから鍵を取りだそうとして、手袋を外したのだろう。
男性にしては少し細い指と
そして______その刻印。
魔法陣。
が目に入る。
一般人なら珍しい人も居るものだと、気にも止めないだろうが。
しかしその刻印を見て、咀嚼、頭のなかで理解して、気付く。
奴隷化。
身体の意識と操作を一時的に奪う魔法。
『______マジか』
「……どした。何か美味しそうな食べ物でも」
『やべえ魔法持ってる奴が居る……身体と精神の一時掌握』
「……それはまた……なんとも胸糞展開がありそうな魔法だね……」
『この距離で刻印読みきれるかな』
「……まさか君魔法コピーしようとしてんの……?」
『魔法は多い方がいいだろ。
それに例のヤツ捕まえる時にも役立つだろうし……雨杭』
「……え、あ、はい!」
『ターゲット確保に向いてそうな魔法見つけた……
ちょっとコピーしに行こう!』
「……コピー……?」
一人置いてきぼりな雨杭を手招きしながら、ビルの手前へ。
陰に隠れて覗き見る。
『さてさて……』
男がドアノブに手を掛ける。
『あ、もうちょい左……クソっ見えない』
そのまま扉を開く______中には人が一人。
『……ん?なんか見覚えが……』
「______
「え!?」
『なっ……って誰?』
「今さっき君を撃ち抜いた奴だよ!!なんでここに……」
男が中に入って、扉がゆっくり閉まっていく。
「ちょ、早く追いかけて!」
『えぇ?何でまた』
「良いから早く!」
「あ、ちょっ、ま、待って下さい……!」
仕方も無しに、言われるがままに、
ビルの陰から身を移し扉の僅かな隙間を通る。
後ろで静かに扉がガチャリ閉まった。
「こ、ここは……?」
『……』
「……随分静かだね」
深く入り乱れている回廊。
何かの機械の作動音だろうか、
低く呻く様な小さい音以外、何も聞こえない。
『というか……何で追いかけろなんて言ったんだよ』
「そりゃあ、もしかしたら吊屋のヒントがあるかもしれないし」
『何でアイツがその情報を持ってんだよ……
……ま、ここまで来たら仕方ない。ちょっと奥行ってみるか』
「……い、行くんですか……?」
『後ろの扉もう閉まってるだろうしね……進む以外道が無い』
「え、嘘」
雨杭がドアノブに手を掛けて回す______回せない。
固く閉ざされてる。
「……どうしよう……」
『無理矢理アリルで開けれないことも無いだろうけど……
多分音でバレて殺される』
「ころっ……!?」
『悪いとは思うが付き合ってくれ。最悪やばくなったら逃がすから』
無機質なコンクリートの中を進んでいく。
出来るだけ足音を立てない様に。
壁には、何かのパイプ
天井はそれに加えて、剥き出しの電球がぶら下がっている。
『……なにかしらの店にしちゃあ、随分装飾が無いな』
更に奥へ。
壁に紙が張られて居る。
が、文字が汚くて読めた物ではない。
スルーして進む。
……暫くして、曲がり角に突き当たる。
『……』
ごくりと、唾か何かを嚥下して顔を出す。
人は、居ない。
中央には液体で満たされた______
中は逆光でよく見えない、よくアニメで見る研究施設のアレ。
回りには錯乱した資料、拭き取られずに乾ききった謎の液。
端にある机には大量の紙が建っている。
『……よし』
身を乗り出し、中に入る。
全体的に薄暗く、光源は中央の筒のみ。
中央の、筒。
正式名称は知らん。
「な……」
『……ちょっとコレ不味いんじゃ無いの……?』
「……ホントにヤバいやつじゃん……」
の中身。
児童ポルノ的にも絵面的にも不味いが
しかしそれ以上に人道的に不味い。
中には
10才もいくかも分からない少女が入って______
「やぁ、そんなに気になるかね。私の研究が」
「!?」
男の声。
墓、ではない。
『……あぁ、流石にね』
「驚かせないのかね。折角期待していたのに」
『生憎だが重度のオタクでね……ラノベで見慣れてるんだ。こういう展開は』
振り返る。
白衣を来た男が一人立っていた______
錆びた眼でこちらを見詰めている。
「そうかい、それはとても残念だね。
私も少しこの登場の仕方を考え直さねば」
『……名前は』
「相手に先に名乗らせる、か。
自分から名乗るのが礼儀では無いかね」
「あ、雨杭凌撫です!」
「……多分、名乗らない流れだよ雨杭ちゃん」
「……あれ?」
『名乗るほどの者では御座いませんよ』
「……なるほど、では僭越ながら私は名乗り上げさせて頂こう。
私の名前は
手を構える______影が、彼の周りを覆う。
「なっ、戦闘!?」
『どうやら手荒いのが好みらしいな……アリル』
「ロリコン野郎がお怒りらしい______さっさと黙らせるよ!」
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