第9話 人々

003

本当にあの人は。

全くもって格好を付けてくる。

『______アリル』

凶弾アクジキ

地面に伏せられたアリルを手にとって、

放つ______ここまで0.23秒。

弾丸が

頭を突き刺す。

横から見たらきっと綺麗だろう。

「なっ……!?」

______ッ!なぜ、貴様……!?

『こちとら鋼鉄に押し潰されてぐちゃぐちゃになった足を10分で治せるんだ______てめえの稚拙チャチい弾なんぞ1分も掛からんわ』

「相手が悪かったね」

言いながら二発目______今度は脚に。

崩れ落ちる男。

「にしては遅い気もするけど」

『ヒーローは遅れてってやつですよ……ちょっと格好付けすぎですかね』

「高校生らしいと思ったよ」

『うーん心に刺さるお言葉をどうも……さて』

地面に浮かび上がる模様に近付き、端に線を入れる。

『無効化しましたよ、書店院さん』

「ありがとう少年……雨杭ちゃん」

「は、はい!?」

「ちょっとだけ向こう行っててね」

「……

え」

書店院さんが手を翳す______途端に、雨杭の姿が掻き消えた。

「安全な所に送らせてもらったよ。

流石に、こんな光景は見せたくないからね」

そう言って、平伏ヒレフした男に近付く。

威嚇______なにを

男の指に糸を絡めて。

「えい」

痛苦!?ぐ……

「……わーお」

『残虐ぅ……』

そのまま切断

鮮血がドクドク流れ出す。

「さて、今君の指を切断した糸には毒が染み込んである……私相手に交渉を持ちかけた______少しでも私と対等であると思ってしまった君への罰だ」

憎痛……成程、不純な理由ですな

「まだ余裕がありそうだね」

今度は右手首に______一瞬で切断。

顔がさらに苦痛に歪む。

「痛そー……ちょっと同情するなぁこれ」

「私が君程度の人間と対等に見られてしまう……

君を殺すのには十分純粋な理由だろう」

沈黙……

「……もう少し虐めてやりたいけど、生憎ながら時間もない」

懐から小さな瓶を出す。

「……君に掛かっている毒の解除薬だ」

理解……なるほど、それが交渉材料というわけですか……

「いいや、情けだ。君が私と交渉するなんて、万年早い。

本来なら君はすぐに死んでる立場なんだ______感謝したまえ」

尋訊……条件は

について教えたまえ」

拒否______断るッ!

稲光

閃光が目を焼く。

「な______マジか!?」

『閃光弾!?』

「魔法のね……逃げたか、中々の忠誠心だ」

視力が取り戻される。

赤く染まった地面と、左手、右の指。

『毒は』

「ハッタリだ。ああ言えば逃げないと思ったんだが……舐めてたね」

『……取り敢えず雨杭を呼びましょう。色々話さないと……』

「そうだね……と、言いたいところだけれど、その前に指と手を片付けないと。流石にお年頃の少女には見せたくないからね」

『珍しく優しいですね』

「珍しくは余計だ……この手食べる?そしたら後片付け楽なんだが」

『俺に人喰させようとしないでください』

「アリル君は?」

「食べ物には拘りたいので」

「そうか、残念だ」

004

「な、なんでたってトイレの中に……」

「丁度いい距離感だったからね」

血塗れた服をCtrl + Zで戻して。

何食わぬ顔で俺と書店院は、雨杭と合流した。

「アリルちゃん、他に気配あるかい?」

「……居ますね。駅の中に数人______いや、下手したら10人ぐらい?」

「面倒だね」

一階。

改札を乗り越えて、突き進む。

「ただ、位置的にこのまま外に出れば鉢合わせる事は無いと思います」

「どうする?殺して何か貰ってくのもアリだとは思うけど」

『どこぞの戦闘民族ですか貴女は……無駄な交戦は避けましょう。今さっき見たいに頭ぶち抜かれるのはもう懲り懲りですよ』

「いのちだいじに派か」

『ガンガンは行きたく無いんで______っと、出口です』

曲がり角で止まってスパイ映画如く、壁に張り付く。

そのまま顔を

少しだ

け出し

て?

『______は』

「……秋成?」

顔を戻す。

意味が解らなかった。

いや、狂気的な光景が繰り広げられていたとかではなく。

むしろよく見る光景だ。

光景だった。

『……ま、マジかぁ……都心部、でも、そうか……』

「?なぁ、何が……」

今度はアリルだけを大通りに出す。

「______な!?」

『おいバカあんまり大きい声出すな……気持ちはわかるけど』

サッとアリルを引き戻す。

「……マジか……なんかこう、凄いね」

「……何があったんだいそんなわざとらしい反応して」

『いや、今回は本当に凄いんですよ……マジで驚くと思います』

「そ、そんなに凄いものが……?」

『それはもう驚くよ……衝撃というか、凄い』

「はいはい、分かったから……」

そう言いながら今度は雨杭と書店院さんが出口に出る。

「……!」

「……なっ、え……?」

それを見計らい、俺もいい加減外へ。

「……なるほど、そういう感じか」

「こ、これは……」

やや明るめの街頭が目を突き刺す。

ビル群、コンビニ、露店______様々な所に光が。

そして何より______

1/1000が

人が

人が大量に。

その大通りを、闊歩していた。

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