第7話 序章終
011
名前は、六文銭返し。
と、言うらしい______が、まぁ名前はどうでも良くて。
その効果というのは
『死者蘇生……?』
……なんだそのいかにもな響きは……。
「そう、蘇生魔法だ。そして問題の持ち主は……
名前は聞かせた事あるだろう?」
『ごめんなさい全く覚えてないですね』
「鶏かね君は……私の部下だった男だ。戦前研究職だった頃の」
『……あぁ』
確かに、言われてみればそんな話をしていた様な気が
……したような……気がする?
「その男が研究していた魔法が、死者蘇生に関する魔法だ。
完成間近という話は聞いていたが……
今は博多辺りで何かやってる事ぐらいしか知らん」
『
「生憎ながら電子の方で纏めてやがる______癪に障る男だ」
『……いい加減その電子書籍は本では無いってムーヴ止めませんか?』
「いいや、あれは只のデータの集合体であり本ではない」
……性格の方も相変わらずだな……。
「……あの、その
『……説明して無いんですか?』
「うん」
『……』
「……」
『……』
「……君が説明するところだよ?」
『うっそだろおい』
丸投げしやがった……。
「さ、早く説明したまえ」
『マジで俺がやるんですか……仕方も無しですか。
そんじゃあまぁ、差し支えの無い程度に』
「よろしくねー出来るだけ早めに」
『はいはい……といってもまぁ、そこまで複雑な能力では無い______
簡潔に完結するなら、図書館の一言で説明は尽きる』
「……図書館?」
『彼女の脳には、この世全て総じての本が入っている』
「______!?」
『全てを総じて、統べている______といっても、あくまで本だけという条件はある』
「で、でもそれって充分強いんじゃ……」
『正確には、表紙含まず49ページ以上で無いと、
書店院さんはその文章を閲覧出来ない。
何故ならば、それは本の定義から外れてしまうから。
他にも、オリジナル限定だったり電子本は含まれない
______なんて、妙に面倒臭い条件が付いてたり……。
ま、使いどころだね』
「失礼な」
「な、なるほど……」
頷きながら、しっかりと聞く雨杭。
どこぞの書店院と違って純意の塊だ。
『出来るだけ早めに、と言っておられましたが______どうですか?
クライアントの意向には沿いましたが』
「ムカつく奴だね……まぁ、概ね正しいのでよしとする」
『ありがとうございます……魔法陣に関する説明もしておきましょうか?』
「いや、いい。後で私が説明しておく______君もテキストだけじゃ説明しにくいだろう」
『……テキスト?』
「分かっていないならそれで宜しい……さて、それじゃあ話を戻そう」
私達の目標の話だ______。
言いながら、机に地図を広げる。
「……これは?」
「我らが福岡の地図だ______私達は、ここ」
何処で拾ったのか、人生ゲームのコマ______しかも人数分車に乗っている、を、小倉に置く。
「そして問題の吊屋の位置が……」
ペンを取り出して、やや左側の地方に大きく印を付ける。
「博多だ」
「こ、この中に……ですか……?」
「あぁ、この中にだ。ムカつく野郎だろう?」
「もう少し絞れたりは______例えば、研究所付近のみとか」
「流石に期間が経ち過ぎている……
そこにそもそも研究所があるかどうかすらわからない」
『……と、なると……』
「人海戦術一択だね」
だから君を雇った訳だ。
『……』
面倒いなぁコレ。
相当数にめんどくさい。
「ま、こう悩んでても仕方無いというのは分かったろう……行くぞ」
『……は?』
「……え?」
「……わーお」
「私達三人の博多旅行記だ______書き連ねるぞ」
012
「しかし少年、腕はどうした?」
『今さっき壊れましたよ。
修理できる人も居ないからこのまま放っておくつもりですけど……』
「へえ」
突然、肘までになった腕に触れる。
そして。
「
パッと。
腕が重く”成った”。
『______!』
「な……」
左手を動かす______操作感は全く変わっていない。
『……また変な技術を』
「魔法だよ、少年______一つ貸しだ」
『うげ、マジすか……?』
「マジだよ______雨杭ちゃん、準備は出来たかい?」
「あともう少しです!」
「そうかい、それじゃあレール近くで待っておくよ」
言いながら、駅のホームに腰掛ける。
足はぶらり浮いていた。
『……これから、何日位でしたっけ』
「ざっと休憩含んで2日だね」
『……』
俺達目の前には______線路。
何を隠そう長々遠路遥々続く線路だった。
「……後悔してるのか?」
『別に、後悔はしてませんよ……ただ歩くのが面倒ってだけで』
「ふぅん、中々に怠惰的な解答だね」
『人間はみんなそうでしょうよ。
じゃなきゃ、このレールも無かっただろうし』
「それもそうだね______お、準備できたかい」
「はい、大丈夫です!」
「うむ元気があってよろしい……
それに比べてなんだその茶色の
これから旅をする人間の表情じゃ無いぞ」
『段ボールですからね』
「しかも面白みがない」
『しがない段ボールの面に面白みを求めないで下さい』
「私がもっと面白くしてやろうか」
『……はい?』
書店院がポケットをまさぐる______中からは、油性ペン。
学校でよく見かけたタイプだ。
『……待って下さい』
「大丈夫
『俺の顔はお絵かきアプリじゃないんですよ』
「茶色のキャンバス?」
『だからフリースペースじゃねえって』
「まぁまぁ私にまかせたまえ……こう見えても美術の評価は3だ」
『3かぁ……』
「問答無用ッ!」
俺の顔を片手で掴んで、残った右手を近付け______三回、ペンと段ボールの摩擦音が聞こえる。
「……よし」
手鏡を受け取り、自分の顔を眺める。
……なるほど……。
「分かりやすくていいだろう?」
「か、可愛いと想いますよ!私は!」
「……随分愛嬌のある顔になったね……」
縦直線二本。
口の様に曲線が一本。
ニコニコと笑みを浮かべている。
『……』
「他のパターンも試すかい?」
ニタニタと笑みを浮かべている。
『……いや、録な事にならなそうなので遠慮します……』
「失礼な」
『こちらとしては御免蒙って欲しい気分なんですけどね』
「誤用じゃないか?」
『そのペンの使い方が一番の誤用でしょうに……はぁ』
少し、表面を______表情を撫でる。
動かない顔。
「気に入ったか」
『お気に召しましたよ……ま、無感情よりかはマシですし』
「だろう?前々から思ってたんだよ。いくら何でも無骨無愛想過ぎるって」
『なら前働いてた時に言ってくださいよ』
「あの頃君蔑んでたでしょ、色々と」
『……』
蔑んでた……といわれると否定は出来なかった。
「今は随分割り切れてそうな顔だけどね」
『そりゃあ、年月は経ってますから』
「けど決着は付けれて無いって顔だ」
『いいんですよ。逃げることは悪いことじゃあないでしょう』
「最善策ではないがね______ま、今日はこのぐらいにしてあげよう」
そう言って顔から手を放す。
「それじゃあそろそろ行こうか……アリル君も準備は出来てるかな」
「問題無しです」
「宜しい
それじゃあ、行こうか。私達の旅の始まりだ______歓迎したまえ!」
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