第6話 書店院

009

懐かしい声だった。

この銃身の何処に心としての重鎮が置かれて要るのかは知らないけど、

しかし______それでも。

2年ぶりに聞いたその声は、

あまりにも懐かしく、

あまりにもそのままだった。

「______な」

「やぁ、こんにちは初めまして久しぶり。元気だった?」

声が天井から聞こえる。

黒い着物の、女性。

「だ、誰______!?」

書店院ショテンイン文庫ブンコだよ。以後お見知りを」

「……なんで、あなたが……」

ここに。

「用が会ったのでね、その少女に______凌撫ちゃんに」

「な、なんで名前……」

「そりゃあ、その名前は私が考案したからね」

「______なっ!?」

「いやぁ、懐かしいね。雨杭囲炉裏イロリちゃん。

君の母だろう?私も仲が良かった」

「ッ______」

絶句、と、言うべきか。

雨杭が押し黙る。

「……虐めるのは、その辺にしてやってくれませんか」

「おや、優しいねアリル君______ま、君に免じてこの位で手を引こう」

わざとらしく嗤う。

「……それで、用件は」

「言っただろう?彼女だ______

正確に言えば、彼女の探してる魔法について、だ」

「!?」

「______成程」

道理で。

こうタイミング良く。

「いやぁ、私も諸事情でその魔法に興味があってね……

それに私は、魔法の持ち主を知っているからね」

「なっ、本当ですか!?」

思わず立ち上がる。

「あぁ本当だとも……私は今から、ソイツに会いに行くのだから」

「な、なら私も連れていって下さい!」

______なっ。

「______!?」

「ノータイムか。いいね、気に入った」

「は、!?」

「アリル君、この子は私が貰うよ」

「なぁっ!?」

二つ返事!?

「物事は出来るだけ早く決定した方が良いんだよ、アリル君。

______しかし流石に、相棒だけ置いてきぼりっていうのも可愛そうだ。

君も連れていってあげようか?」

……相棒?

「……いや、僕は……」

「まぁまぁ、そう遠慮するな。何なら、私が新しい______」

『______書店院さん。生憎ソイツは俺の相棒なんでね。

勝手に引き抜かれると困りますよ』

010

「______!」

『お久しぶりですね、書店院さん』

「君は______いや、成程。

てっきりこの娘にアリル君が憑いてる物だと思っていたよ」

……失礼な。

「しかし、となると______君達はどういった関係だ?交際相手かい?」

「!?」

『おうおうちょっと待てや』

「そうか、遂に少年にも心を許せる相手が______」

『おーい。違いますよー』

「違う……?ッ!まさか君達、身体だけの爛れた関係で……」

『待って。俺が悪かったから』

「……少年。失望したよ」

『人の話を聞けえ!!』

「くくっ、まぁそう急かるものじゃないよ。逆に怪しいぞ?」

言いながら詰め寄ってくる書店院さん

______その手を軽く除けて、席に座る。

『……それで、何の用ですか。

貴女の事だから用無しってことは無いでしょう』

「流石、分かってる……私はこの少女に様が会って来たんだ」

『……と、いうと』

「彼女と私の探し物______魔法が一致しているんだ。

探し物を探すのなら、一人より二人の方が良いだろう?」

『……』

嘘だ。

雨杭はともかく、書店院はそんな理由じゃ

______損な理由じゃ、動かない。

「それで、共同戦線と洒落混もうという訳さ」

『……それで、その魔法というのは?』

「知りたいかい?」

『えぇ。……流石に興味も湧きますよ』

「宜しい、ならば条件だ______凌撫ちゃん」

「は、はい!」

「コイツも連れていっていいかい?」

「……はい!?」

______そう来たか!

『……』

「まぁ、荷物持ち兼盾位にはなるだろう______どうだい?」

「ど、どうって」

「精々悩めという訳さ______コレを旅に連れていくか、否か」

「……でも、流石に迷惑じゃ……」

「気持ちなんぞ考慮しなくてもいい。君の好きな様に選べ」

「……」

『……俺は別に構いませんよ』

「へぇ」

ニヤリと嫌な笑みを浮かべながら、此方を舐め眺める。

「それはまた、珍しいね。君が知識欲のためとはいえ、人の為に動くなんて」

『その言葉そのまま返しますよ______

なんで貴女が、態々人に協力を申し出たのかと』

「人手は多い方が良いだろう?」

『貴女にはそれをカバーできるだけの魔法とがあるでしょう』

「本棚も万能では無いんだ」

『全能ではあると』

「あくまで私が、だ。魔法はそれを補佐する物に過ぎない」

『……何をしようと』

「どうにかしようとしてるだけだよ______言っただろう、私の目的は。

あくまで、魔法だ」

饒舌が人の皮を被って襲い掛かる様な、感覚。

質問に答えているようで、答えていない、どころか。

感覚。

全ての回答が、的を得て、的外れ______。

「あ、あの!」

「ん?」

「……っ付いてきて、貰いたいです!」

『!』

「よし、それじゃあ決定だ」

パンと手を叩いて、ニコリと害意の無さそうな笑みを上する。

「君に教えて上げよう、私達の。目指す魔法を」

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