第3話 邂逅敵

003

音が爆ぜる。

焼き付く様な振動と衝撃。

勢いは銃の重さで相殺。

放たれた弾丸が空を駆ける。

射撃軸線上には最終兵器の、瞳。

強化ガラスの奥底から伽藍の街を見下ろして______。

弾け飛んだ。

『ヒットぉ!』

中のセンサーと思わしき部品が地に墜ちていく。

「視覚センサー破壊!もう片方のサーモは……健在!」

『流石に一手詰めは無理か!』

排莢。

再装填リロード

スコープを覗き込んだまま第二射撃______兵器の目元を抉り取る。

「______サーモセンサー破壊!」

『っしゃあ雑魚がぁ!』

中指おっ立て。

「後は装甲剥がすだけだね。なんだ、認知されないと四級でもこんな物か」

『はっはーこれでとうとう買えるぞぷよんぷよ!勝ったな』

「妙にフラグ臭のする台詞やめてね……」

排莢。

装填。

スコープを覗き込み、糸と繋がる装甲を探す。

取り敢えず足元から剥がしてやろうか。

上から辿って、糸を探る。

『……?』

が、違和感。

妙に視界が揺れる。

『……スコープ?』

レールに上手く入っていなかったかと、目を外して気付く。

動いていたのは最終兵器化物側だった。

「何か……変に動き回ってる______というか、変な動きだ」

『動物にでも作動したか……?』

立ち上がり、全体を見る。

幾度も執拗に、何かを踏みつける様な動作を繰り返していた。

『鳥……ではないな。となると、猫とか?』

「もう少し大きくないと反応しないんじゃない?」

『だよなぁ……?』

「………………人間とか?」

『……それは無いでしょ。だって駅の中にも人居なかったし?』

「ま、だよねー」

『そうそう、居るわけないって』

「あははは……」

『はっはっはっはっは……』

「……」

『……』

「……」

『……』

バッと取り外したスコープで、兵器の足元を覗き見る。

異常は無い筈だ。

崩れたビル

瓦礫

破壊された看板

倒れた木々

割れたガラス

何かの液体______

赤く。

紅く。

外壁と瓦礫を

塗り、潰して。


人影が、倒れて______


「______なッ!?」

『アリル!!』

アリルを反転、逆側に撃つ。

自由落下。

やや前進しながら、空に落ちていく。

「______またぁ!?」

『緊急だ!我慢しやがれッ!!』

硝煙の香り。

引き延ばされる視界。

弾丸の様に空を駆ける。

二発目______更なる加速。

風が頬を横斬る。

大きく駅を飛び越えて、最終兵器足元の人影へ______赤い脚。

出血多量。

若干ショッキング。

『気絶してんなっ糞が!!』

ふいに視界が黒く染まる。

影______兵器の足。

振り下ろされる鋼鉄。

下に潜り込み、手首を握る。

細く冷たく。

繊細だ。

『アリル!!追加を!』

______が、今はそれにかまけてる場合じゃない!

「今やってる!!」

三発目

加速。

身体がもうどうなってるか分からないスピード

でも、間に合わない。

鉄が眼前に迫る。

『______買ったばっかりなんだけど!!』

左腕を犠牲に______砕け散る義手部品。

僅かに遅れる鉄の速度。

手を引き、飛ぶ。

轟音

スライドブレーキ

身体を兵器側に向け、停止。

割れた瞳が

伽藍空っぽの瞳がこちらを向く。

「腕大丈夫!?」

『どちらかと言うと財布へのダメージの方がデカイ!』

「おっけー大丈夫って事ね!」

『意訳が過ぎるだろそれは!?』

人影を______少女をお姫様抱っこして、片手で下方向へ射撃。

打ち上がる。

全貌が見える。

腕脚の先、関節部に糸。

胴に一本、頭にも一本。

この一瞬じゃ破壊は出来ない。

______なら。

「うわ高!?」

『一旦逃げんぞ!流石に嬢様抱いたまま戦う訳にゃあいかねえからな!』

またまた駅を飛び越えながら、

銃弾を数発地面に打ち込み振動センサーを攪乱する。

意識の______あるかどうかはともかく、逸れた内に着地。

少女をそっと石畳の上に寝そべらさせる。

目立つ外傷は足のみ。

まぁまぁセンシティブに潰れている。

意識は______未だ戻らず。

頭を打っている可能性もあるので脛椎損傷を考慮、首を横に向ける。

『……とりま治療するか、アリル』

「治癒効果付与、何時でも」

迷わず足に打ち込む。

痙攣

そして滲々ジワジワと修復が開始される。

「……うん、大丈夫。この傷と出血量だと多分10分位だと思う」

『それまでには帰ってこれるといいけど』

レールの中にスコープを入れて、同時にマガジンも換装。

装填。

他に動作不良が無いかも軽く調べて……特に無し。

『アリルも違和感は?』

「特には……今からどうするの?」

『管制AIを直でぶっ叩く。パッと見上方には無さそうだったし

……排熱考えて下腹部だろうよ』

管制AI______言わずもがな名前通り。

最終兵器、いかに糸で動いてるとは言えど

動かし手がいないと彼らは動けない。

言ってしまえば只の人形だ。

動かず、蠢かず______。

そこで彼らの動かし手と、脳味噌と為るのが魔法動作管制AI

……長いので管制AIと略称する。

『まぁ、特段仕掛けが有るわけでも無さそうだし……叩けば死ぬ。

……はず?』

「なんちゅう不確定さ……」

そう言いながらも、既に炉を起動させている。

『ま、いいでしょ?いっつもそうだったんだし』

「……そうだねいっつも敵陣に突っ込んでたね……

……一応遠距離武器なんですけど」

『つまり近くで使ったらもっと強いって事だ』

銃口を下に構える。

「……ちょっと待って流石に今日ぐらいは狙撃を______

______まさか叩けば死ぬって」

『もう半分感知されてる様なもんだから。さぁ、諦めて行くぞ!』

「いや、だから遠距r」

銃声が銃声を掻き消した。

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