第2話 世界はそれを魔法と呼ぶ

002

断続的地響。

不規則なのか規則的なのか分からないリズムでそのは鳴り響く。

『______ッ近いな!』

「い、一旦離れよう!流石にこの距離じゃ……」

『だな!』

崩れ落ちるビル群を背に、突き抜けた構内のコンコースを駆け抜けていく

______大量の看板と、相反するように一つ置かれたストリートピアノ。

幾つかの鍵盤は地面に伏せていた。

『ここじゃ碌に撃てないな______アリル!』

「……駅の裏に商業施設!多分そこからなら撃てるはず!」

『了、解ッ!!』

もはや転がる様な勢い、そのまま階段を駆け降りる。

開ける視界。

複雑に絡み合って続く空回廊______その先。

『アレかッ』

視界の先に高く聳える建物。

くるりと進むべき方向に背を向け、アリルを構える。

『弾丸固定』

射出______衝撃。

ショートカット

身体をガラスに押し当てて、無理矢理商業施設の中へ。

吹き抜けの店内。

至るところに落書きと漫画のポスター。

その脇に設置されたエレベーターを登り上がる。

『敵は』

「今はまだ立ち止まってる______センサーには感知されて無い」

『そりゃあラッキー』

2階

3階

4階

5階

駆けて、最終階

が、未だ屋上辿り着かず。

『……と言うか、よくよく考えると……』

「お客さんに対して屋上解放はしてないよね……どうする?」

『……外から直接行く』

「……はい?」

それだけ言って。

目の前の窓を撃ち破る______身を投げ出す。

ひどい浮遊感。

ブランコの勢いに乗った時の、あの感覚。

「……う」

アリルを下に向けて発射。

勢いで身体を押し出し、屋上の出っ張りに手を掛ける。

『おいしょ』

今度は横に。

身体をコンパス如く回転、屋上に着地。

目に悪い位青々しい空だった。

「……あっっぶな!?」

『これが一番無難かなと』

「無骨すぎる選択だね!」

『無論ぶっつけ本番』

「命が無下に……!」

無作為的閑話。

駅の向こうに視線を移す。

『……んで、話を戻すと……アレが

「マジで二度とやんないでアレ……第三等級?」

『いや、第四下位』

アリルの身体を這うレールにスコープを取り付ける。

「……第四……逃げた方が良くない?」

『コアデータ売り付けて金にしたいから』

「……なんか今買うものあったっけ?」

『この前市場にぷよんぷよのゲームデータが出ててな……』

「……」

無い筈の視線が妙に突き刺さる。

『……ま、まぁ街の平和を維持する意も兼ねてね』

「……ホントに思ってる?」

『そ、そりゃあもろちん!ほら見てこの綺麗な瞳』

「段ボールで見えないけど……」

『……』

「……」

『……綺麗な段ボールの表面でしょ?』

「それは関係あるの……?」

……まぁ常套句的な冗句はいい加減置いておくとして。

ともかく。

改めて兵器を観察______金属で出来た身体に、超強化ガラスのレンズ。

その皮膚下……もとい、鉄膚下には大量のセンサーと

動作魔法管制AIが敷き詰められ、接近する個体の感知及び撃破へと役立てられる。

そしてそれら全てを統べ、統括し吊るす______

上を見上げても果ては見えない。

『……』

「……どうしよっか」

彼らは操り人形の如く、糸で動く。

正確に言えば内部のセンサーは勿論電気で動いて______一説によるとこの電気すらを伝って来るらしい______いるのだが。

しかし、本体。

あの巨大な本体を動かしているのは電機ではなく、糸だ。

『……取り敢えず視覚センサーとサーモを。

その後は固定用装甲をゆっくり撃ち抜いて……後はコアデータコピー』

「りょーかい」

……どうしてこんな機構にしようと画策したかは分からないが、

しかし結果的にこの意図というのは成功を納める事になる。

『そいじゃ、マガジンセット』

装填ロード

圧倒的な速さを______吊るされることによって可能となる、

重力、そして重量を無視したチート的な動き。

『着弾位置修正』

「誤差±0.2㎝______修正完了」

今までの人類兵器で勝つことはほぼ不可能。

最強と、最終と呼ぶにはあまりに相応しすぎる、化物。

其れが、彼らだった______。

『______起動』

______が、そんな都合よく強い物が産まれる訳がない。

そんな訳が無いだろう。

なんだよ吊るすって。

子供の方がもう少し現実味のある兵器考えるぞ。

……しかし、ならば何故。

何故アレは動いているのか。

少なくとも当時の科学技術では不可能な動き。

どうやったって出来ない、

「充電中……あと20」

概要は、秘匿されていた物理法則は至ってシンプルだった。

①特殊図形を表記することにより、

②大気中のエネルギーを使用し、

③対応した現象を引き起こす。

なんて、子供でも分かる。

そして______何でもアリ、な。

『……最終調整終了』

図形さえ用意すれば、何でも出来る。

『付与は、貫通で』

そして同時に、それは唯一の兵器への対抗手段。

「了解……準備完了!いつでも!」

まるで夢みたいな。

まるで幻想みたいな。

まるで魔法みたいな。

『よし、そんじゃあ……』

______

『迎撃開始』

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