人類999/1000滅んだけどなんか生き残ったので喋る銃と終末世界ライフしたいと思う【月は返り血を浴びない】
欠完成品
序章 箱入り少年とその銃声の決起
第1話 忌み者二つ
000
空を飛んでいた。
比喩では無く、暗喩でも無く。
その男は______段ボールを被ったその男は、確かに。
撃ち上がって、打ち上がっていた。
『______来た!!射撃範囲内ッ……アリル!!』
途端、空間がうねり捩曲がる。
その先には人間______正確に言えば、人間を模した化物。
空に吊るされ、固定されている。
「気温気圧温度湿度魔素残量装弾数空間圧重力風速風向その他諸々含めて誤差±927㎝______修正完了!!」
その声が聞こえたと同時に、男がライフルを向ける。
只のライフル______ではなく。
対物ライフル。
主に戦車等への使用が目的とされた超威力の銃。
全長は約1.4m
重量約11.8kgといった所か。
空中戦。
恐らく撃てば吹っ飛ばされるであろうその状況で、
しかし男は迷いなくトリガーを引いた。
轟音が空気を切り裂き、灼熱の光が夜空を染める。
対物ライフルは、生きているかのように震え、唸りを上げ______。
『着弾したか!?』
「した______けど、多分……!」
ゆるりと。
立ち込めた煙が霧散していく。
堂々、人影。
『______マジか』
ぬるりと男の頬を汗が伝う。
『……何が張ってある?』
「……見たところ概念が。
弾丸が当たらない世界線を、無理矢理持ってきてる」
『……ごめん何だって?』
「……自分が当たらない50%の確率を
無理やり100%まで引き上げてるってこと」
『おけまる』
返事。
相変わらず顔は無表情の茶色。
『……しかし、それって取り敢えず物理は無理って事だよな』
「だね。せめてこっちもアレに干渉できる何かがあれば良いけど……案ある?」
『……干渉ねえ……』
暫く考え込んだ後、少し微妙な表情で男がライフルに深々と刺さった
「……これは?」
『干渉出来るかもしれない方法______書店院さんお手製の弾丸』
途端に、アリルと呼ばれたモノの反応が変わる。
「待って。考え直そう」
『曰く空間と時間と存在をごちゃ混ぜに______
全てをランダムに組み換える、らしい。
彼女はこれを
「ヤバそうな名前なんだけど……!?世界滅んだりしないよね……?」
『それで済めばいいけど!』
ボルトアクション。
慣れた手付きで薬室に例の弾薬を送り、装填。
「ねぇ待って撃ちたくないんだけど!?」
『安心しろ!死ぬときは俺も一緒だ!』
「嫌だ!せめて女子と一緒がいい!」
『はっはー俺もだぜこん畜生!!』
その先にはやはり、棒立ちの人間______未だ手一つすら動かしていない。
ただ低く呻き、立ち尽くして居る。
『ま、遺言は程々に______8秒後に射撃!』
「まだ死にたくないのに……!」
そう言いながらも既に外付けの炉から
大気中の物質を取り込み、弾薬に入れ込む。
傍目からのその上熱が伺えた。
『……残り5秒!!』
人型は未だ動かない。
ただ見つめている。
「4!」
炉の呼吸音が響き渡る。
首筋に伝う。
『3……』
そして、トリガーに______
アリルの、身体の一部であるトリガーに指を掛ける。
「2!」
緊張が這う。
『1』
______そして。
001
「……なぁ、いつ着くの?これ……」
『……予定ではもう少し早く着く筈だったんだけど……』
とあるビル街。
長々と続くモノレール沿いを、只淡々とその男は歩いていた。
『いや、確かに駅に繋がってるんだよモノレール。
今近付いてるのか離れてるのかは解んないけど』
「また地獄みたいな1/2ゲームを……」
空を走る線路に従い、右へ。
ビル群に入り込む。
『ま、最悪逆方向だったら戻ればいいし。大丈夫だってー』
「……確かモノレール9㎞弱あるけど……」
『……マジ?』
飲食店の手書き看板を横目に、国道のど真ん中を歩く。
もちろん車は一台も通って居ない。
『それはまた、こう……"歩けなくはないけど歩きたくはない"
みたいな距離感だな……』
「……やっぱり戻って地図で確認した方が」
『だが俺はこっちが駅側の可能性に
「馬鹿だ!馬鹿が居る!」
白線を踏み込みながら、更にジャングルの奥地へ。
視界一杯に灰色が建ち尽くす。
『安心したまえ、俺の中の辞書に失敗の文字は無い』
「世間はそれをフラグと呼ぶんだよお馬鹿」
その中に、空に紛れる様に青色。
所謂道路案内標識。
やや汚れた白文字で行き先が表示されている。
そこに駅の文字は______。
『……』
「……」
『……あ』
ある。
やや見えづらくはなっているが、確かに、駅への案内が。
『っし、フラグへし折ってやったぜ……!』
「……やるじゃん」
途方の無い安心感と高揚感を発散するように、歩行の______
走行のスピードを上げる。
モノレールの下腹部をすり抜けるように走り抜け、国道に沿って。
右に曲がって、途端に視界が開ける。
直通した道路、着いていくかの様に直線的なモノレール。
そして、それを吸い込むように口を開け聳え立つ建物。
大きく小倉駅と書かれたその駅は______。
『……駄目か』
「ちょっとは期待してたけど……コレは……」
大きく、崩壊していた。
002
この原因を探ろうとするならば、3年前にまで戻る他方法は無い。
というのも2031年。
第三次世界大戦、勃発。
当時■■■■■侵攻により経済的制裁を受けていた
■■■がその制裁に対し激怒、■■■■■■■の最高指導者である
■■■総書記と協力し、核弾頭含む複数の最新兵器を開発。
そして、その兵器を、非友好国全てに対し使用した______と。
ここ迄聞くとそれはそれはもう大きな戦争だったのだろうと、
一般平均的人間が聞いたらそう感じるかもしれないが。
しかし、その大仰な名前に対しこの戦争の知名度は案外低かった。
約800万人程度。
その程度の人間しか、この戦争を知らない。
と言うか______知れない。
全人類の、1/1000。
それが、この戦争の生き残り。
逆に言えば全人類の、999/1000______全員が、死に至った。
残虐に、極悪に、凶悪に、非道に、______そして、平等に、人道的に。
兵士も市民も、政治家もホームレスの群れも。
首を、足を、心臓を
もぎ取られ、切り刻まれ、食われて。
核弾頭に蹂躙され、最終兵器を前に死に曝した。
『……中はなんとか残ってそうだけど……』
……そう聞くと物語がもう終わっても可笑しくない程に
世界は壊れて
______が。
人類は、思ったよりしぶとかった。
「……でも、人は居なさそうだね」
僅かに残された、遺された通信衛星や電波。
これらを駆使し、アメリカに集結。
そして街を闊歩する兵器共______最終兵器という名目らしい。
これらを研究・破壊・使用する為の組織
『あ、でもここ焚き火跡あるじゃん……結構新しめ』
ほぼ瓦礫と化した軍事施設への無断侵入。
行動パターンの記録解析による、最終兵器に搭載されているAIの特定。
生き残った兵士及び研究員に対する拷問。
「となると……近くの別のビルとか?」
おおよそ人道的ではない、兵器とどちらが人道的だと問われれば些か回答に悩まされる様な手段を、しかし一切の慈悲無く行使して。
機関は研究を続けた______結果。
UWRIは、一般市民だった人々は。
遂に______終にその機密に辿り着いた。
『ここらで探す価値のあるビルと言うと……』
ソレは信じがたい、本来的には一笑に伏される様なデータだった。
新たな物理法則の追加。
世界を変えてしまう、技術。
ルール。
「確か、あそこのピンクの建物が______」
法則。
その名前は______
『______なッ!?』
爆裂。
たった今アリルが指したビルが崩壊していく。
突然、後ろから押された机上のペットボトルの様に。
『んだッ急に!』
うねり崩れ、その更に後ろのビルが丸見えに______ならない。
代わりに巨大なナニかが、蠢く。
蠢き______動く。
「……な、なんでここに……!?」
『アレの目撃情報13㎞先だったんだけど……!?』
ひたりと。
滲み出たモノが頬を濡らす______その鋼鉄が、目を焼き尽くす。
首と、足が異様に伸びた異形四足歩行。
身体の表面は、暴力的なまでに輝いていて。
最終兵器
四文字が頭を埋め尽くす。
感情の亡い化物。
地面を
悠遊と
踏み均らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます