ダンジョン配信4話目

永遠封鎖都市2024

 付けっぱなしのライブカメラを切り、クタクタで椅子に腰かけた。あんな思いはもう二度としたくない。そう思いながら、ダンジョンの掲示板をチェック。自分の話題が出ていないかを確認する。


 ダンジョンライバーについて語り合うスレ324【運命】。


 214;定職決まんなくてワロタ〔;;〕。


 345;最強はホートマーだろ。アイツのスキルの数とんでもねえぞ。宝石を幾つ割ってるんだよって思っている。俺らの知らんスキルバンバン出てくるし。


 432;間食ちゃんスライム氷漬けにして食ってるwコアの部分がクリーミーで美味いらしい。


 563;配信映えしか考えていない奴の名前出すな。受け狙いすぎておもんない。


 492;はじめてこのコンテンツに触れたけどおもろすぎん 。


 564;間食黙れカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカス。


 232;さっき宝石割ったらワープクロップ手に入れた。これ便利スキルだよね。


 372;それダンジョンから外にワープするとき超便利。


 498;ダンジョン配信刺激的でいいよな、時に死人も出るし。


 897;この前推しの配信者のテキドウさんが死んでまじショックだった。


 467;無名の名前出すな。


 321;ダンジョン配信を元に色んな創作物も出てるよな。アニメやら漫画やらでライバーを増やそうと政府は案を練っているらしい。


 453;おいw間食ちゃんやばいスキル使ったぞ。オーク素手で殴り殺しているぞw。


 342;マジで草。


 769;「皮膚が固いので殴って柔らかくしてるんです。包丁で切る時大変ですので」マジで言ってます。


 653;これなんてスキル?


 702;自身強化系のスキルとかあったっけ?


 564;最近噂の合成映像だろ。フェイク乙。


 864;アンチ見苦しいぞ。めちゃくちゃレアドロで出るらしい。スキルの名前はプロテイン・スナック。お菓子を食べることで一時的に筋力が大幅に強くなるらしい。


 567;間食という名前にあっていて草。


 908;略してプロスナじゃん。あの誰も使わないゴミスキルと名前被ってる。


 

 俺はそっ閉じした。まあ俺の話題なんてひとつも上がっていなかった。まあそれはそうだ。あの観客も冷やかしに来ただけで、応援しようという気概はさらさらない。俺はどんよりとした気持ちで間食ちゃんの配信に飛び込む。

 そこにはオークを殴り殺している美少女の姿が映っていた。


 そういえば元々間食ちゃんも最初から有名で人気なわけではなかった。配信を始めた切っ掛けは家庭が貧乏だったから。料理配信に移行したのは意外性で数字を稼ぎたい。後普通にモンスターは美味しい。と、間食ちゃんは直々に語っていた。


 そういえば、彼女が人気になる切っ掛けってなんだったっけ。それを真似れば俺も有名になれるんじゃないか。という事で調べてみると、配信を切り忘れたことがどうやらすべての始まりらしかった。有名ダンジョン配信者と偶然出会い、キングドラゴンをやつ裂きにしたという伝説の回が切り抜きでSOATUBEに上がっている。


「俺も配信を切り忘れて偶然有名人と出会えば!」


 自分でも正直何を言っているか分からない。それはもはや配信切り忘れではなく、配信切り忘れしたフリである。でも俺は自分自身を止めることは出来なかった。


「社会に教えてやるよ。俺という存在を無視した罪」


 取り敢えずすることは超強いスキルを引くまで宝石を買い続けることだ。会社員時代の給料が手元に残っている。これを降り注ぎ、すべて使う。ゴブリンやスライム〔モンスターゼリーフィッシュ〕という低級モンスターは簡単に倒せるスキルは手に入れておきたいな。


 という事でワープクロップを使用。銀行にワープし、貯金を引き出す。またまたワープクロップを使用。宝石店にワープし、最後尾にしがみ付く。


 今自分が手に入れているのはゴミスキルのプロミネンス・スナイパー。そしてまだ使っていないアース・シンボル。ワープクロップのみっつ。インターネットで確認したところ自分が欲しいのは低級モンスターを操れるモンスター・パペット。間食ちゃんも使うアイス・ファン。範囲が広く、適当に放つだけで相手が凍る可能性のある優れモノだ。


「また来たんですねお兄さん。何が入ります?」

「ほっ、宝石30個ほど」


 そういった瞬間、店員はこちらをまじまじと見つめ。


「お兄さん、有名配信者じゃないよね?」

「まあそうっす。これから有名なるんで応援よろしくっす」

「まあ繁盛なりますので嬉しいですが、あんま足を踏み込むのも危ないと思いますけどね。マ、次のお客さん待ってるんでおおきに」


 意味深な言葉を発しながら、店員は宝石を手渡してくる。ずっしりと重く、両手で抱えないと持てないほど。


「まあ、ワープクロップで一瞬じゃ」


 ビュン!自宅。目の前に母がいて、ビビビビックリした。


「うわあっ!」


 驚いた拍子に、宝石を床にばら撒いてしまう。


「楽しそうやな、ホンとに稼いでくれそうで楽しみ。今度は長続きするかもんなー」


「見ていてくれ母。まじで狙うわ。有能だってこと、きしもとそうりに見せちゃる」

 

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