ダンジョン配信2話目


 〇え?

 〇マジ?ドラゴンの攻撃を避けながら、翼を切り落とすって。


 今話題のダンジョンストリーマー、間食ちゃんのライブ配信のコメントだ。俺はコメントを打たず、ただ眺めているだけ。

 流れていくコメントを読みながら、母が買ったコンビニ弁当に手を付けていく。


「はは。まじ?」


 ダンジョンが急に現れたときは、世界の終わりかもと思ったが、どうやらそれは違ったらしい。逆に人間を元気付けるコンテンツになろうとは、思いもしなかった。弁当を食い終わり、適当にその辺に捨てる。


「ねえ、そんろ職に就かんの?」


 母のこえー声が聞こえる。俺は無視しながら、間食の配信を拝見する。


 〇倒したぞ……。

 〇やっぱり合成映像だろこれ。国が推奨する戦い方一切してないじゃん。


 確か国のやり方だと、ちまちま氷魔法で、ドラゴンの足元を狙って動かなくするとかだった。間食は火の通りがよくなるように、ドラゴンの口を塞ぎ、体内で自爆させた。


「ドラゴンの炎攻撃を無力化し、体内でその炎を暴発させる。結果、美味しくなる。なるほどな、戦いながら味付けをするのは、なかなかいい」

「そんなんみんといでー」


 母はそう言うが、そうもいかない。だって面白いんだから。面白いものを見て、何が悪い。


「自分でダンジョン配信をやろうという気にはならんのっす?」

「は?母のくせに何言う?それ、しねいうとんと一緒やん」


 俺は扉を開け、母とご対面。そこには配信付きドローンカメラと、ユニークスキルが詰まった宝石を持った母がいた。


「は?まじいうとん?死ねってこと?」

「あんた自分で言うとったやん。俺ダンジョン配信者になりたいって」

「いや、普通親は止めるもんやろ。それが社会の常識やんか。ダンジョンに行ったら、死ぬかもしれんのやぞ」

「だからや。あんたには死ぬ気で働いてもらう。ダンジョンにレッツゴーしてな」

「いやそもそもや。配信しても売れる確率はゼロパーやぞ。俺なんかバズりもせん」

「社会で自分がどれだけ、無能かって思い知ったからか?」

「そうよ」


 説得できたと思った。しかしそれは俺の勘違いだったらしい。両手に持ったそれを俺に押し付けてきた。


「無能だって思ったなら、社会に自分を見せつけんとな。俺は有能やぞーって。まあ、死ぬかもしれんがな。アハハハ!」


 嗚呼、最低の母親だ。俺は心の底からそう思った。


 一晩たったが、まだ心の整理はついていないまま。バンジージャンプに挑戦するよりよほど怖いことを今からするのだ。サメの居る海を泳ぐ感覚に多分近い。確かに一獲千金のチャンスは狙えると思う。モンスターの素材であったり、お宝であったり。


「まじでか」


 でもそれも運がなきゃ無理だ。強いモンスター〔ガーゴイル・キングリザード〕なんかに出会ってしまえば、そいつらの餌食となり、帰らぬ人と成り果ててしまう。


「ええい、もうどうにでもなれー!」


 運が良ければワンちゃん有るのだ。買いたかったアニメグッズが買えるのだ。

 パリーン!右手でユニークスキルの入った宝石を砕くと、俺の内部に感じたことのない感覚が流れ込んできた。

 脳の中に鮮明に文字が浮かび上がってくる。スキルの説明だろうか。


 ・居場所・巣・を探知するスキル・「ワープクロップ」を獲得しマスタ。


 誤字ってるけど。でも居場所や巣を探知できるって何だろう。っていうかこれだけ!?攻撃スキルはないのかよ。という事で調べてみると、ユニークスキルは宝石一個にひとつしか入っていないらしい。

 つまり、もっとスキルが欲しいなら、どこからか宝石をお取り寄せするしかない。という事で、販売店を調べてみた。


「遠っ!」


 ○ ○市○ ○町○ ○ ○ ○3939393。


 無理だ。そう思っていた時、脳の中にメッセージが現れた。


「ワープクロップ」で移動シマスカ゚?


 え、まさか。どこでもドアってこと?

 

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