第5話「ってか、時給ってなんだよ」


「えー……。それっていいんですか?

 何だか、美味しいとこだけ頂く感じで気が引けるんですけど」


「いいの!

 結果的にその世界を救うことになるんだから!!」


 まぁ、それを言われたらな。

 悪いことをしているわけじゃないし。


「で、どんな感じで転生するんですか?」


「私に各世界を統括する女神からSOSが送られてきます!

 そしたら、君の出番!!

 その世界に転生して、ラスボスをボコボコにしてください!!」


「なるほど……」


 要は、非常時を迎えている世界を渡り歩く、と。

 こういうことか。


「もちろん、チートや祝福も任せてね。

 時給1200円で、各世界の均衡を破壊する程度の実力なら、身に付けさせてあげるから!」


 それはそれは。

 なかなかの好待遇と言える。

 俄然、やる気が出てくるというもの。


 そこで。

 俺は女神の言葉に引っかかりを覚えた。

 脳内で反芻する女神の今の言葉―――――。


「もちろん、チートや祝福も任せてね。」


 いや、そこじゃない。


「各世界の均衡を破壊する程度の実力なら、身に付けさせてあげるから!」


 いやいや、そこでもない。


「時給1200円で、」


 ……んそこだあっ!!!


「いや、あのちょっと待ってください。って何?」


「あー……、やっぱ聞き逃さなかったか……」


 微妙な表情を浮かべる女神。

 マジで何?

 時給って何?

 異世界転生って、バイトなの?


「正式に君が引き受けてくれるなら、私とを結んで貰います」


 雇用契約……?

 おおよそ17年の人生で聞くことのない言葉。

 ってか、何で女神とそんな会社みたいなことを……?


「天界も最近こういうことが厳しくなってきてね。

 途中で冒険とかすっぽかす転生者とか多いから……」


 あぁ、なるほどね……。

 スローライフ始めちゃったりする人もいるからね。


「雇用契約のことは、まぁ分かりました。でも時給1200円で世界救うのは……」


「ごめんっ! ウチの会社ピーピーなの!!

 もう色んな人に逃げられて今に至るの!!」


 そんな事情、知らねぇ。

 えー……。

 どうしようか……。

 ちょっと悩んできたぞ。


「っ……」


 うわ。

 めっちゃウルウルした目でこっち見てる。


「……」


 でもまぁ。

 死んだ俺にワンチャンスくれた、と言う意味では恩はあるんだよな……。

 バイト感覚でやってみてもいいのかな。


「まぁ、ちょっとくらいなら……」


「え、ホント!!?

 ハンコハンコ!!!」


 うわ、怖い……!

 女神はどこから持ってきたのか、「日下部」の印を俺に渡してきた。

 書類に、ハンコを……。

 ええい!!

 押してまえ!!!


「――――!」


 押した瞬間、視界が大きく歪む。


「じゃあ、依頼あったらー!!」


 呼ぶ?

 呼ぶって何だ……??


 真っ白な部屋が真っ暗に、これは俺の視界が暗く……。

 やがて、俺は眠るように意識を失った。







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助っ人転生者、時給1200円でラスボスを倒す。 澄空 @suminosora

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