第10話 強敵との対峙

 俺とウルスラは強烈なプレッシャーを放つ魔獣の接近を感じていた。


 「ちょっとケガするかもしれないけど、これくらいなら多分勝てるわ。手を出さないでね♡」


 うん、まあ、ウルスラがそうゆうならいいんだけど・・・。


 魔獣は一直線でこちらに近づいてきた。

 その姿は氷を纏った大型の虎だった。


 「あいつ、なんなんですか?いつもの魔獣と違いますけど。」

 「あいつは特殊能力持ちってやつ。たまにいるのよ。もちろん強さは格別よ!」


 氷虎の咆哮が響き渡ると、周囲の温度が一気に下がった。地面が凍りつき、木々に霜が降るのが見える。俺は身震いしながら、ウルスラと氷虎の戦いに目を凝らした。


 「キャー!素敵!」ウルスラが歓声を上げる。「こんな面白い相手、久しぶり!」


 彼女は氷虎に切りかかる。氷虎は瞬時に氷の盾を展開し、攻撃を防いだ。


 「やるじゃない!」ウルスラの声に興奮が滲んでいる。彼女の目は

興奮で輝いていた。


 氷虎が氷の刃を作り出し、ウルスラに向かって突進する。ウルスラは華麗に舞い、氷の刃をかわしたが、その一撃が彼女の腕を掠めた。


 「いたっ!」ウルスラの腕から血が滴る。しかし、彼女は痛みを楽しんでいるかのように笑っていた。「いいね、いいね!もっとやろうよ!」


 戦いは激しさを増し、両者が互いに傷を負わせ合う。ウルスラの動きが徐々に鈍くなっていくのが分かる。しかし、彼女の笑顔は消えない。


 突然、氷虎が巨大な氷柱を生成し、ウルスラに向けて放った。ウルスラは避けようとしたが、間に合わない。


 「ぐおっ!」


 氷柱がウルスラの脇腹を貫く。彼女は膝をつき、苦痛に顔をゆがめた。


 「ウルスラ隊長!」俺は思わず叫んでいた。


 しかし、ウルスラは立ち上がる。彼女の目に狂気じみた興奮の光が宿っているのが見えた。


 「アッハッハ!最高!こんな痛み、久しぶり!」彼女は血を吐きながらも笑っていた。「でも、まだまだ終わらないわよ!」


 ウルスラの『麋鹿紋』が強く輝き出す。彼女の体から生命力が溢れ出し、周囲の空気が振動するのを感じた。


 氷虎が最後の一撃を放とうと跳躍する。その瞬間、ウルスラも跳んだ。

 両者が空中で交差する一瞬、ウルスラの剣が閃光を放つ。


 「はあっ!最後の一撃よ!」


 ウルスラの一撃が氷虎の胸を貫いた。氷虎の体が崩れ落ちてた。


 ウルスラは着地したが、すぐに膝をついた。脇腹の傷から血が流れ続けている。しかし、彼女の顔には勝利の喜びと戦いの陶酔感が溢れていた。


 「ふう・・・最高の戦いだったわ」彼女は苦しそうだが、満足げに呟いた。

 俺は急いでウルスラの元に駆け寄った。「大丈夫ですか?!」


 「あと10分くらい放置したら死ぬわ」

 「あああ!すぐ治療します!!!」


 俺は『再生』スキルを発動し、彼女を治療する。


 「はぁ・・・。八雲ぉ、あなたとっても便利ねぇ・・・。あなたのおかげで、普段なら、戦えない相手とも、戦えたわぁ・・・」


 ウルスラは、興奮が収まっていないようで、目がまだイっていた。


 「あなたのこと大好きになっちゃった♡」


 俺はやばい人に目をつけられたのかもしれない。 

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