第2話 どうやら俺は疑われているらしい

 『魔獣』との激闘の後、目が覚めた俺は牢屋で拘束されていた。

 抵抗しようにも厚い鋼鉄の手錠をかけられ、俺の『星月紋』の力でもびくともしない。


 俺が目を覚ましたのを確認した看守は、緑を基調とする軍服を着た3人を連れてきた。


 燃えるような赤い髪と瞳を持つ長身の女性、身長190センチを超える茶髪の大男、俺よりも10センチほど小柄な金髪ツインテールの少女の三人組だ。


 赤い女性が牢に入り、獰猛な肉食獣を思わせる鋭い目つきで膝をつく俺を見下ろす。


 「ハロー、はじめまして、わたしはウルスラ。ここアルシャンの最強の戦士をしているわ。早速だけど、あなたには聞きたいことがあるの。まずは自己紹介しなさい」

 「・・・俺の名前は『榊 八雲』、異世界からやってーーーぐふぅっ!」


 痛い。腹パンされた。


 「あなた、ふざけているの?」


 ウルスラは俺の答えに納得していないようだった。


 「いやいやいや。本気の本気。ちなみに、ほとんど記憶を失っている。気づいたらあの場所にいて、目の前にいた可愛い子ちゃんがピンチだったから、お前らが『魔獣』と呼ぶ白い化け物と戦った。この左手に宿る力も知らない」


 「・・・あなた、面白いわねぇ。こんな状況なのにふざけていられるなんて、わたし、あなたのことが気に入っちゃったわ♡」


 ウルスラはおもちゃを見つけたかのような、嬉しそうな表情で俺を見て笑った。


 「いやいや!俺は確かにふざけた男だが、本当にーーーぐふぅっ!」


 ウルスラは俺の顔面を殴り、倒れた俺に蹴りを入れた。


 うぐ。いたい。やめてくれなのだ。


 「なんで殴るの!?」

 「ここで殴ったら面白そうかなって思っちゃった♡」

 「おまえも結構いい性格してんなぁ!!!」


 こいつ、絶対サディストだよ。ドSだ。


 「そうそう、あなた。軍上層部から『魔獣』との繋がりを疑われているわよ」


 殴られて傷ついた場所を修復すべく、左手の『星月紋』が輝き、白い煙が立ち上がっている。


 「あなたの『紋章』は異質で規格外、『魔獣』にそっくりな『再生』のスキルを持つ『紋章保持者』なんて前代未聞だわ」


 それにねーーーとウルスラは続ける。


 「あなたが放った光に包まれた『魔獣』は普通の動物に代わってしまったわ。・・・あなた『逆』もできるんじゃない?」


 なるほど、そうゆう疑いが掛けられて俺は拘束されたのか。


 「それに加えて、異世界とか、記憶喪失とか、怪しさが役満かしらねぇ」

 「いやぁ、俺も全くの同意見。笑っちまうくらい怪しいわ。はっはっはーーーぐふぅっ!」


 正直殴られることは分かっていたけど、何故かふざけた態度がやめられない。きっと俺はシリアスになれない呪いでもかかっているに違いない。


 「あなたぁ、心も体も丈夫だし、健気なところが可愛いわ♡」


 ウルスラは『一本鞭』を取り出して、俺に命令をした。

 「服を脱ぎなさい」


 俺は拒絶なんてできるわけなかった。


 「『拷問』の時間よ」


 俺は絶体絶命だった。



 ~~~~~



 ピシ、ピシ、ピシ、スパッァァァン!

 「あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁん!!!」


 俺は1時間ほどウルスラに『拷問』された。


 ウルスラは「今日はここまでにしましょう」と言い、牢から出た。


 「じゃあね。八雲」

 「う、ウルスラ様・・・」


 ウルスラが去ってしまう。

 俺は『寂しい』気持ちで胸がいっぱいになる。


 ・・・


 ・・


 ・


 「・・・ってなんでやねん!!!」


 危なかった。あと少しで完全にウルスラに『服従』するところだった。


 ウルスラの拷問技術は凄まじかった。

 『痛さ』もあり、『気持ちよさ』もあった。


 決して、性的な行為をしたわけではない。


 ただ、ウルスラは鞭一本だけで俺の感情を支配し、『服従心』を植え付けに来ていた。


 決して俺がMなわけではない、ウルスラが凄いのだ。


 需要があれば詳細を語りたいが、ここでは一旦やめておこう。

 ちなみに、後ろに控えていた大男と金髪ツインは早々に離脱していた。


 俺は脱がされた服を着なおしていると、鉄格子越しに人の気配を感じた。


 「ーーーねぇ、キミ。大丈夫だった?」


 俺は振り向く。


 シルクのようなプラチナブロンド、アメジストのようなすみれ色の瞳。

 全ての顔のパーツが完璧に整っている白衣の美女がいた。


 「さっきは『魔獣』からボクを助けてくれてありがとうね。ボクはソフィア、今度はボクがキミを助けに来たよ」


 俺にも"ツキ"が回ってきたようだ。

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