楽しいお風呂
マンションの玄関に入ると、こーきは鞄の中にスマホを探した。
鍵が上手いこと反応しなかった。
「私がやる~」
スーツのこーきと、制服の私のデート。
大魔王にバレたら怒られるんだけど、私はこれが好きだった。
スマホをピッとかざすと、大きな自動ドアが開いた。
「ねぇこーき」
「ん?」
「写真撮ろ」
インカメラを向ける。
スーツのこーきと制服の私。
だってこれは今だけ限定。
.
「「ただいま~」」
雨だから暗くなるのも早かった。
家の中は真っ暗。
こーきは玄関の電気を点け入って行くと、部屋の電気を点けてブラインドを下ろした。
「スズ濡れなかった?」
「靴びしょ濡れ~」
玄関で靴下を脱いだ。
「洗濯機に入れといていいぞ」
「これ指定ソックスだから数ないし持って帰る」
「あ、じゃあビニール」
キッチンの引き出しからコンビニの小さな袋が出てきた。
「私お風呂洗ってくるね〜」
「え…?!」
え?
そんな驚くって事は…
ぎゃーーーー!恥ずかしい!
こーきそのつもりじゃなかった?!
「風呂掃除係は俺だからスズは鞄拭いといて」
頭をぐしゃぐしゃって撫でて、こーきはお風呂場へ行った。
「朝から洗っとけばよかったな」
こーきもそのつもりだった?
そのつもりだったんだよね?!
恥ずかしくて顔が熱い。
言われた通り、水滴の沢山ついてしまった鞄を拭いた。
「え…ティッシュで?」
「だってどれで拭くの?」
「ごめん、タオル渡さなきゃだったな」
ボロボロになったティッシュ5枚の塊を、こーきはキッチンのゴミ袋に捨てた。
「スズ宿題は?」
「今日は漢字だけ~」
「あ、英語のテストどうだった?」
「68点」
「微妙だな」
「覚えられなーい」
「よし、英語で喋ろう」
「アイアムスズ-」
「ksoufd bkjsk pdkj jfdjfa」
「アイドンノー」
「スズが言うと日本語だな」
「あいらぶゆーー」
ププってこーきが笑う。
「あいらぶゆーってば」
抱きつくとこーきは笑いながら腕の中に囲った。
「ミートゥーです」
「キスミー」
チュッと頬にキスが。
唇って英語でなんだっけ。
あかん
英語力ヤバい。
「腕冷たくなってる、寒かった?」
「足が寒い、濡れたから」
「すぐ溜まるからシャワー行こう」
シュッとセーラーの脇のファスナーが開けられる。
初級編の時と違ってなんか自然に。
「結構濡れたな」
「冷たい」
「あとでアイロン掛けてやるよ」
「いいの?」
アイロンかけてくれるならスカーフ外そうと思って抜こうとしたら
「え!それ取る?!」
「うん、アイロンかけるなら」
「させて」
「え?」
「それシュッてやりたかった」
意味分かんないけど
「どうぞ」
そして顔を作り直すこーき。
顎クイ
からのキス
からの
シュッ
スカーフが抜かれた。
え、なになに?
これがしたかったの?
「満足」
「よくわかんないけどよかったね」
「これはすぐ乾きそうだな」
スカーフを広げ
こーきは丁寧にハンガーに掛けた。
それを寝室とリビングの境のドアのとこに引っかけて、こーきは私のとこに戻ってくる。
「はい、バンザイ」
ブラウスが取られ、裏返ったそれをこーきは表に返してハンガーに掛け、そして平然とウエストのホックを外し、スカートのひだを整えながらクローゼットから挟むタイプのハンガー取ってきた。
「これってアイロン掛けれるのか?
スーツのパンツと同じだよな?」
しまった…
脱いで気づいた。
デートの予定なかったから下着が普段着の
スヌーーーーピーーーーーーー!
制服を掛け終えたこーきと目が合った。
「あ…(スヌーピー)」
「えっと…ごめんなんか…」
ちょっと吹き出したこーきが近づいてくる。
ネクタイ緩めながら。
「いつだったかな
スズがここで昼寝しててさ」
昼寝?
「風でスカートめくれて
見ちゃったんだ、そのスヌーピー」
は?
「可愛い」
なにそれ恥ずかしい!
こんなお子ちゃまな下着…
普段から気を抜いちゃダメだ!
なにが起こるかわからない!
わかってたらおニューのピンクのやつ着て来たのに…シクシク
パサッ
プチッ
スルリ
赤面してるうちにスヌーピーはあっさり脱がされてしまった。
「シャワー出してて、すぐ行くから」
.
「シャンプーします」
「お願いします!」
この前も思ったけど、こーきが洗ってくれるの気持ちいい。
美容室で洗って貰うのとはまた別物。
「あ、目閉じて
泡入りそうだぞ」
「うん」
いい匂い。
これはこーきの匂い。
「流しまーす」
「はい!」
泡が流れると、こーきはトリートメントを手の平に伸ばす。
そして撫でるように髪の毛に馴染ませていく。
「マジ気持ちいい、ツルツルだなスズの髪」
湯気でぼやける視界。
こーきは私の髪に釘付け。
「まだ?」
「これ永遠に触れる」
切りがない。
ジャーーー
「え、もう?!」
「私もこーきも洗ってあげる!」
「んじゃ今度風呂椅子買っとくから」
そっか、座って貰わないと届かない。
「ズルーい自分ばっかり
私も洗いたかった~」
「ごめんごめん、今度な」
こーきはシャワーをかぶり、わしゃわしゃと頭を洗い始めた。
だって洗ってあげるのしたいんだもん。
ボディーソープを泡立てて
「…?!え!なになに!」
泡で目が塞がってるこーきが焦る。
「洗ってあげる~」
「や…!スズ待って…!」
「いいからいいから〜」
何そんな焦ってんの。
目の前の胸からわしゃわしゃ
丁度腕上がってる脇をわしゃわしゃ
体の横から
「後ろ向いて~」
背中をわしゃわしゃ
そのままお尻にわしゃわしゃ
足に
「こっち上げて」
「次こっち」
「前向いて~」
「スズ待って!」
ジャーーーー
いきなりシャワーかぶられて
頭のてっぺんから全ての泡が流れていく。
「あっぶね…そこは無しだろ…」
「もぉ!せっかく洗ってたのに!」
「じゃあ次俺の番ね、全身洗ってやる」
こーきはボディーソープを手の平で泡立て始めた。
「スポンジ使わないの?」
「手で洗いたいもん」
「え、私スポンジで洗う~」
わしゃわしゃわしゃわしゃ
こーきを洗ったスポンジでそのまま体を洗った。
別にこーきと同じスポンジは全然平気。
ジャーーーー
「よし入ろう!」
↑邪なことを狙っていたこーき、化石になる
「こーき?入らないの?寒くない?」
「あー…タマゴ取ってきまーす…」ガッカリ
「そうだった!お願いします!」
ザップーーン
「あ~気持ちい~」
お風呂の小さな窓のふちには、この前の緑のトリケラトプス。
待機してる卵はたぶん洗面所に置いてあった。
こーきはすぐに戻ってきた。
「どっち?」
「んーーー…右!」
「こっちな」
「私から見て右」
「あ、こっちか」
袋を破り、種類の書いてあるそれは浴槽の縁に置いて、タマゴに巻いてあるフィルムを剥ぐ。
ポトン
からの
ザップーーン
「あ!タマゴ行方不明!」
こーきが波を起こしたから見失った。
「あった」
こーきが救い出したシュワシュワのタマゴ。
手の平に乗せてお湯に沈める。
「何かな~」
「今度こそティラノ」
小さくなって崩れていくタマゴ。
そして現れるバラバラ事件。
「え、また緑じゃね?」
「あーーまさかのかぶり!」
「トリケラトプスじゃん」
こーきが笑いながら二つのパーツを合体させる。
「こうなったら3つ目もトリケラがいい」
「それな」
小さな窓の縁に置いてあったトリケラトプスの横に、同じトリケラトプスを並べた。
「スズ、こっちおいで」
トリケラを並べてまた向き合って入ると、こーきは私の腕を引っ張った。
お湯の中だから体は浮いて、ふわーっと簡単に引っ張られた。
こーきの腕の中でぴったりくっつく背中。
こーきの腕がお腹に回ってギュッと抱え込む。
「まだ緊張する?」
「この前よりしない」
首のとこをチュッチュとキスがくすぐる。
お腹にあった手はいつの間にか胸へ。
浮力の中で無力な感触を
「ふわふわ~」
って楽しそうに。
「こーき、今度お休みいつ?」
「来週…じゃないか潰れたんだった。
ロス行ってくる」
「そうなんだ」
「お土産何がいい?お菓子?」
「じゃあ一緒に食べるお菓子」
ふり向くと、微笑んだこーきがキスをする。
チュッとして笑って見つめ合って笑う。
キスをしたり
お喋りをしたり
「まだおっぱい触るの?」
「俺永遠に触ってられる」
おっぱい触ったり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます