運動会①スポーツライクなこーき
半袖のオーバーサイズTシャツに白デニムのショートパンツ。
薄手のパーカーを腰に結んで、スニーカーはお正月にこーきと買ったプーマ。
「鈴、本当にちゃんとするんだぞ
挨拶をして余計なことは喋らない」
「わかったってば」
「スズちゃん、朝霧さんと静香さんの言うこと聞いて
ニコニコしとくのよ?」
「大丈夫」
お父さんとお母さんが会場の近くまで送ってくれた。
こーきの迎えは無し。
こーきは昨日、ゴルフからのお酒で遅かったのに、今朝は早くからその運動会の準備に行かなきゃいけないらしい。
「忘れ物ないわね?クッキーは入れたの?」
「入れた~」
「お行儀良くな」
「しつこいな~」
駅前を通過し、高級住宅街を抜けた先の大きなグラウンドが会場だった。
車はその手前のコンビニに入った。
中まで行ってしまうと、お得意先のお父さんにこーきの会社の人は気をつかってしまうから。
「静香さん!」
「あ、おはよ~」
ここで待ち合わせだった。
「静香さんごめんなさいね~よろしくね」
「いいえ~」
「すまんな」
「全然!部長がよろしくと」
「こちらこそだ」
ベージュのスキッパーシャツにスキニーデニム。
大人カジュアルも素敵。
一方、動きやすい格好で来てと言われて私はこんな格好。
大人っぽくすれば良かったと後悔。
「見張っててね」
「大丈夫ですよ~
うちの部署はみんな楽しみにしてます
スズちゃんが来るの」
「そう?それならいいんだけど」
そんなに心配か。
「じゃ、スズちゃん行こっか」
「はい!」
コンビニを出て歩き出すと、うちの車が出て行った。
「連休どこか行った?」
「全然…あ、いとこの家にちょっと行ったくらい」
「朝霧全然会えないでしょ?
ここぞとばかりにゴルフに誘われてるから」
「仕方ないけど…」
「あぁ見えて取引先のお偉いさん達に人気だからね
ツンツンして愛想なさそうに見えるけどさ」
「人気なんだ」
「最近特にね」
「ふーん」
よくわかんないけどお父さんも好きだもんね。
「スズちゃんのお陰よ」
え?
「まぁ前から仕事はできるヤツだったけどね。
スズちゃんと付き合ってから
人付き合いも丁寧になったし
仕事選らずに頑張るし、何よりね…」
静香さんが立ち止まる。
立ち止まって私の手をつないだ。
「ちゃんと笑うようになった。
愛想だけじゃなくて気持ち付きで」
どういうことなのかあまりよくわからなかった。
こーきが何か変わったようには私は思えない。
「私なんてどん底に引きずり落とす天才なのに…
どうやって上げてんの~」
「え、何上げてるの!」
アハハハ
「頑張ってる彼氏見に行く?
きっと花田さんって先輩にこき使われてるよ」
「見たい!早く行こう!」
少し歩いて到着したとこは広いグラウンド。
本当に運動会みたいにテントがはってあり、集まりだした人がちらほら。
「あ、あれかも」
前が見えないような大きな箱を持った人。
「コウキ!」
静香さんが私の口を押さえ、プププって笑いながらマネをした。
「静香だろ、バレてるし」
箱の向こうからこーきの声。
箱から見える足は、家の靴箱で見たナイキのスニーカー。
それに黒のハーパンに黒のスパッツ
スポーツライクなこーきも
たまらん…!
「え、どこにときめいてんの?」
「ときめいてんの?」
こーきが箱を下ろし目と目が合う。
まさかの
キャップ逆さかぶり…!
「え、だからどこときめいてんの?」
「私もう乙女の心わからないかも
ときめく要素が見つけられない」
「スズ」
こーきがぽんと頭に手を置く。
「リレー頼んだぞ!」
え?
「あと、玉入れと綱引きと大玉と飴食い
エントリーしてるから」
大人しくしとけって言われたけどいいのかな。
「大玉は俺とペア」
こーきと大玉転がすの…?!
「え、どこにときめいた?」
「競技押しつけられたのにね」
「朝霧、なんか手伝う?」
「大丈夫、スズのこと見てて
テントあっちだから、部長来てる」
「オッケー」
こーきはまた大きな箱を抱えて行ってしまった。
運動会のこーきもカッコいい!
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