煽り王爆誕

次の朝

さっそくのシンガポール土産を使用。


「いい匂~い」


髪に塗り塗り。


「わ、いい匂い」

「麻衣ちゃんおはよ」

「ちょっと貸してよ」

「ワンプッシュだけだよ」

「尽くすね~朝霧さん、何あのお菓子の量」

「一個は学校に持ってくの」

麻衣ちゃんはヘアオイルをつけて髪を梳かすと、私の髪も綺麗に梳かした。

「一個もらお~

 かっくんもお土産楽しみにしてたし~」


準備をしてリビングに行くと、こーきはトレーナーにジャージ、ちょっと寝ぐせのついた髪でホットミルクを飲んでいた。


「こーきおはよ!」

「朝霧さんおはよーございます

 昨日はどうも」

「え、昨日って何?」

「スズちゃんには内緒なんだけど

 二人で遅くまで飲んでたの~」

「え!なにそれ!」

「やぁね麻衣ちゃん

 言っちゃったら内緒じゃないじゃない」

アハハハハハ

「ずるーい!」


朝ご飯を食べて支度を調えると、こーきは着てきたスーツを後部座席に吊し、起きたままのトレーナーにジャージで革靴を履いて笑った。

「靴まで思いつかなかった

 帰るだけだからいいけど」

自分のバッグと一緒に私のカバンも持ち、私が靴を履くのを待つ。


「すずちゃん忘れ物ない?」

「うん、行ってきます」


「お邪魔しました」


「いいえ、またいらして下さいね」


お母さんに見送られ、セーラー服の女子高生とジャージに革靴の商社マンは家を出た。


「指輪つけよ~っと」


飴や薬を入れてるマイメロちゃんから指輪を出す。

これは朝の日課になった。

家を出たらつける。

学校に着く前に外す。

そしてまた帰り道につける。


没収でもされたらとんでもないし。


「貸して」

「はい」

目線は前を向いたまま、こーきは左手でリングをこっちに向ける。


「どうぞ」


「なんか言って?」


「好きだよ、スズ」



私はそこに指を通す。



「髪跳ねてるこーきもカッコいい」

カシャ

「え…え?跳ねてた?しかも撮った?

 こんなステキなファッションを」

「足まで写らなかった」

「よかった」

アハハハハ


幸せすぎてたまらない。





「ただいま~」

「お帰り」

「さっき行ってきますだったのにね」

「スズ時間大丈夫?」

「補習ないし大丈夫」


こーきの家に着き玄関のドアが閉まると


こーきがギュッと抱きしめた。


「あーー…久々スズだ…」

「こーきだ~」

「髪いい匂い」

「シンガポールのやつだよ!

 さらさらだしいい匂い!」

「あぁ、あの赤い瓶のやつか

 よくわからなかったけど買ったやつ」

「そうなの?」

「つけるといい匂いだな。

 すげー匂いと思ったけど」


髪を香るように、鼻先と唇を滑らせる。

手はサラサラと髪を撫で、撫でたその手がクイッと私の顔の角度を変える。


キスしやすい角度


髪を香った鼻先が私の鼻先と合い


そっと唇を重ねた。



優しく優しく

キスは落とされていく



背中を撫でるこーきの手が…



何だろうこの感じ



もう少し




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ラインの音にパタッとキスは止まった。


見つめ合う目


こーきがクスッと笑って手を離した。


「絶対英介だ

 先に行くってラインしてなかった」

「俺が返しとく」

そう言って玄関に放置した荷物を取り、こーきは中に入っていった。


↑『早朝デート盛り上がってるので

  一人で行って下さい』送信


「ライン返してくれた?」

「返した」

スマホをクッションの上に投げ、トレーナーをガバッと脱ぎ、それを洗濯機に投げ入れて半袖シャツでウロウロ。

「寒っ」

ピピッ

エアコンのボタンを押し、パソコンのボタンを押してこーきはクローゼットを開ける。

「あ、髭剃ってねえ」

また戻ってくる。



私、なにドキドキしてるの。



トレーナーをがばっと脱いだ仕草が頭の中でエンドレスリピート。


漫画で見たイケメン主人公と脱ぎ方が一緒!



「スズ?どうした?テレビでも見てていいぞ」

「えぇ…?!えっと…」

「どうした?なんか変」

「な…なんでもない!

 そうだお茶でも飲も~っと!」

「あ、じゃあ俺も」


ビューーン


逃げるようにキッチンへ。


ふぅ…汗


どうしちゃったんだろう、私。

急にドキドキして変に意識しちゃった。



ケトルに水を入れ、ティーバッグをハリネズミのカップに落とした。


「そうだスズ~」


まだウロウロしてた!


「な…なに?!」

「え、だからどうした?」

「ななななななんでもない!」


「これ、東京行った時に山崎から預かったんだ

 ごめん忘れてた、腐ってるかも」

小さな包みをキッチンの上に置いた。

「なんだろ~」

「わかんねえけど、俺は見ちゃダメみたいだった」

「え、なんで?」

「知らねえ」


開けてみようと思ってその包みに手をかけると、こーきがその上から手を握り


「もうちょっとキスしてもい?」


背後ハグからのささやき。


「こっち見て?」


顔を少しだけ向けると、一瞬で唇は塞がれ、こーきの手が髪を掻き上げながら首に耳に触れる。



私やっぱりおかしい




足りない




キスをしながら背中を撫でるこーきの手がもどかしい




この先が




ほしい






「こーき…」


「ん…?」



離れたキス

絡み合う目線




考えるよりも先に




ただ欲するまま





背伸びしてしがみついたこーきの首に




キスをした。

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