コアラとカンガルー②

その週末、土曜日。


PPP

「あらお父さんかしら」

お母さんのスマホが鳴った。

お父さんは今日は仕事に行っていた。


「お母さん七味は?」

お昼ご飯はうどん。

お母さんはラインを見ながら七味の小さな瓶をコトッとテーブルに置いた。


「あらすずちゃん」

「んー?」

七味ふりふり



「今夜朝霧さん来るって、夕飯何がいいかしらね」



え?!


ドッポン


「ギャー!」

「ちょっとすずちゃん!何してるの!」

「だって!」

七味がうどんの中にin


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お母さんのから遅れること少し


『今日スズの家にお土産持って行くから』


やったーー!

出来れば二人きりで外で会いたかったけど

やったーーー!

時間的に仕方ないけど


やったーー!


「そうだ、この前の牛タン解凍しときましょうね」

「うん!」

「あとは何がいいかしら」

「和食!こーきね、海外だったから

 日本っぽいの食べたいって言ってたの!」

「あらそう、じゃあ牛タンは今度にして

 んー…そうね何がいいかしら」

「ちくわのてんぷら!」


ということで、午後からはお母さんとお買い物に行く。

「すき焼きがいい!」

焼き豆腐を見たら急に食べたくなった。

私はすき焼きは牛肉よりも鶏肉が好き。


「油のとこを切り取って」

「こう?」

「そうそう」

こーきが来る20時に合わせてお母さんと準備をした。



甘辛いいい匂いがする。



「あら、来たかしら」


リビングの窓の外にブレーキランプの赤が光る。

お母さんはこれを目印にしてた。


しばらくすると


「ただいま」

お父さんの声と

「お邪魔します」

こーきの声が帰ってきた。




「こーき!」



「スズ」




こーきだ…!



コアラだ…!




え、カンガルーも?!




「まったく…多すぎるだろう土産」

「スミマセン…」

お父さんが紙袋をドサッと置いた。

「ほら、土産だと」

「こんなに?」

「つい買ってしまって…」

「贅沢に買い与えんでくれ」

「申し訳ありません…」


こーきが写真をくれたコアラちゃん。

「思ったより大きい~!可愛い!」

ギュッと抱きしめる抱き心地。


そしてカンガルー


「おっきい~!」

「スズ見て、腹から子供出てくる」

「わ!可愛い!お母さんだったんだ!」


大きなコアラのぬいぐるみとカンガルーのぬいぐるみ。

あの写真のこーきのスーツケースがカッコよくて、フレームインしてた革靴もカッコよかった。

お仕事してるこーきカッコいい。


「コアラ~~」

ギュッと抱きしめる感覚が気持ちいい。

「オーストラリアの匂いがする」

「朝霧さん、上着掛けましょうか?」

「あ、すみません」

「こーき、オーストラリアどうだった?」

「肉ちょー美味かった」

「うそ!」

「朝霧くんビールでいい?」

「はい」

「え、泊まるの?」

「うん」


やったーーーー!


「スズ、こっちも

 シンガポールのお土産」

「うわ~なんかいっぱいだね!」


そりゃお土産は嬉しいんだけどね

こーきに会えただけで嬉しいの

抱きしめてもらえないけど。



「スズ」



ぽんぽんって頭を撫でられるだけでもう大満足。




「さ、食べましょうか」

「うん!お腹空いた~

 こーきもお腹空いた?」

「うん、昼パン一つだったから」


こーきはなぜかすき焼きよりも先に

割り入れられてた生卵を

「掛けたい…」

「え、玉子ご飯?」

「お醤油持ってきましょうか?」

玉子ご飯にして食べた。

「美味い…!」

「そんなに?」

それからお酒を飲みながらすき焼きを食べた。

「一週間も海外行ってたらそうだよな」

「もう香辛料食べたくなくて」

「でもカニのやつ美味しそうだったね

 シンガポール行ってみたい」

お母さんがすき焼きを器によそいこーきの前に置く。

「あ、すみません」


「そうだ!新婚旅行で行こうよ!」


ゴホッ

こーきとお父さんがむせる。


「じゃあすずちゃんは英語のお勉強頑張らないとね」

クスクスってお母さんが笑う。

「じゃあいいや、日本で。大分の温泉でいい」

「近っ」


そんな話しをしながら笑ってこーきはすき焼きを食べる。

お父さんは新婚旅行の話しは面白くなさそうだったけど、だけどやっぱり楽しそうにこーきと話した。

仕事の話しも会社の話しも。


「すずちゃんそろそろ寝たら?

 眠そうな顔してるわよ」

「お、もうこんな時間だな」

「ほんとだ」


え、おひらき?


やった

じゃあちょっとだけこーきとラブちゅっちゅを…


「おやすみスズ」

「朝霧くんこの前の仙台の酒あけようか」

「いいですね」


飲むんかーい



そして私は一人寂しく寝る。



いいもんいいもん

どうせ明日学校だし

早く寝るもんね


「コアラちゃんカンガルーちゃん寝ましょうね」


コアラを抱っこし、カンガルーを担ぎ、子供はさっさと退散。



「あ、スズ」



え?!

なになに!おやすみのらぶちゅっちゅ?!



「赤ちゃん落ちたぞ

 ちゃんと腹に入れといてやって」



はい、寝ました。

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