スノボ旅行13.倉敷デート

俺はなんちゅう愚かな男なんだ。


自分の高校生の頃を考えてみろ。

こんなとこに連れてこられて、どこに行きたいかなんて思いつくか?

ついついスズが高校生な事を忘れてしまう。

それを申し訳なかったと思いつつ、俺はなんとなく安心してしまう。


スズを18禁と意識していない証拠じゃないか。


ったく、親父達が変な意識するから。




スズはセブンに入っていき、俺は運転席で必死に


『広島周辺 デート』ポチッ


ふと頭によぎるのは


『倉敷 デート』ポチッ


あれは確かスズとつきあい始めた頃。

俺は急に岡山支社に日帰りで行く事になって、岡山駅でパンフを見たんだ。

スズ連れて行ったら喜ぶかなって。

スズと歩いたら楽しいかなって。


ナビをセットすると2時間もかからない。

大体ナビよりは早く着くだろうから昼前には行けそうだ。



お昼は歩きながら食べたいものを選んで、甘味を食べ、雑貨屋を巡り、スズが興味ありそうなら美術館を見てお土産を買う。

スズが可愛いと発した物は買ってあげたい。


「なんかアクセサリーないかな」


腕に付ける何か。

それにあわよくば指輪が欲しい。

スズに変なのが寄ってこないような、俺が言い寄られてスパッと断れるような。



いつでもスズを感じられるような

お揃いの物がほしい。





「あ」


スズがセブンから出てきた。

ニコニコ笑って小さく手を振る。


ガチャ


「お待たせ~」


5分経って、どうやら仕切り直しのデートが始まったらしい。


「おはよこーき、お待たせ」

「あ…うん」

「カフェオレ買ってきたよ」


暖かいカフェオレをドリンクスタンドに立て、スズは両手を広げた。


「おはよ~のギュは?」


完全リセットらしい。


「スズおはよ」


ギュッと抱きしめる、セブンのど真ん前の駐車場。


倉敷とかもういいから、このままひと気のないとこに連れてって、抱きしめまくって撫でまくってキスしまくりたいとこだ。


「今日どこいくの?」


「岡山、倉敷って行ったことある?」

「ない」

「スズと行ってみたいと思ったんだ」



仕切り直しのデートがスタートした。



「はい、カフェオレ」

スズが開けてくれたカフェオレの優しい甘さ。

優しい甘さのスズの笑顔。

なんて幸せなデートなんだ!

デートかったりぃ~って思ってた過去の自分よ。

デートは楽しいぞ!


ミュージックアプリでランダムに曲を飛ばし

「あ、この曲知ってる!」

スズは時々膝の上でピアノを弾く。


「ホント好きだな、ピアノ」

「うん!」エヘヘ



「音大楽しみだな~」



んーー…

スズわかってんのかな。

芸術系の学部って数も少ないし割と門狭いよな。

それに受験科目って英語や小論文とか、文系なんじゃねえのかな。

その辺は帰ってから調べようと思ってた。

塾やってる友達に聞こうかと。


受験、苦労するかもしれない。


でも今は黙ってよう。

帰って親に相談してそれからだ。





倉敷に着いたのは昼前だった。


「お腹空いた~」


車を降り、うーーんと伸びたスズはそう言って笑い、運転席側に回って来て腕に飛びついた。

「お昼ご飯食べたいな」

「うん、俺も腹減った

 朝ご飯早かったしな」

「納豆ご飯だけだったし~」


駐車場からそう遠くもなく、岡山駅で見たパンフと同じ景色がそこにあった。


「わ~~なんか綺麗!」


スズの顔がパッと喜び、俺の手を引っ張って先に歩こうとする。


タイムスリップしたような町並み。

街中を流れる小さな川に写り込む雲の流れ。


やはり綺麗だ。



「あれ何!」

「あ!あっち行ってみたい!」

「川~!」


「ちょ、スズ待って」


無邪気だ

好奇心旺盛だ。


なんだろう、年の差感じるな。


「川沿い行ってみよっか」

「うん!」

迷子になるほど破天荒に駆けだしはしないだろうけど、今急に小さい子供を追いかけてる親の気持ちになった。

「あ!こーき見て!なんか可愛いよ!」

「入ってみる?」

「うん!」


レトロな玩具の沢山ある博物館や、桃太郎の博物館。

味のある建物を見ては写真を撮り。


「わ~お洒落」

「コーヒーか」

「コーヒーは飲めないから写真だけ撮っとこ」


「あ、スズあっちパフェって書いてあるぞ」

「うそ!食べる!」


昼ご飯のことは忘れていた。

スズは俺の腕を引っ張る。

早くと急かして。


そんなスズが可愛すぎて


カシャ


「?!」

「あ、ごめん

 なんか可愛い犬がいて」

「早くゎん!」


やめろーー!可愛すぎ!!



何かを改築した流行のあれ。

↑古民家を改築したお洒落なカフェ

古いのがお洒落っていう感覚がわからないけど


「オシャレ~~」


「そうだな」


スズがそう言うならお洒落な気がする。


スズが注文したキャラメルパフェと俺が注文したフルーツパフェを



半分こ。



これぞデート。



「こーき、どっちの底食べたい?」



なんてこった!そんなとこまで気が合うのか!


パフェの1番美味しいとこは



底だ。



「キャラメル」

「じゃあジャンケンね」

「負けて泣いても絶対やらないって契約な」


「オッケー」



楽しすぎる。


ニヤけてならねえ。



スズ、愛してるぞ。

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