スノボ旅行12.丸投げこーきとデートの始まり
「デート♡デート♡デート♡」
雪が薄ら積もってた山道を下ってしまうと、こーきは手を握ってくれた。
「どこ行こうか
スズどっか行きたいとこない?」
「デートならなんでもいい!」
「広島…広島か~
原爆ドームしか思い浮かばない」
「それ中学の時行った、修学旅行」
「俺の時も広島だったぞ
10年後も変わってなかったのか」
「高校の時はどこに行った?」
「高校はオーストラリア」
「オーストラリア?!」
「スズは?」
「まだ!うちは三年の四月なの!」
「珍しいな、三年で行くの」
「東京なんだ~」
「東京か…なんか近所だな」
そりゃこーきはしょっちゅう行ってるけどさ。
「私ね、東京で行きたいとこがあるの」
「え?どこ?ディズニー?」
エヘヘ~
「ナイショ」
「なんだそりゃ」
甲田ホールディングスの本社が見たい。
わたし的にそれ一択。
自由行動は絶対それ。
「どこ行くか~」
「こーきどこ行きたい?」
「んーー」
「癒やし?」
「癒やしはスズだから」
サラッとトキメキフレーズ。
意識が集中してるのは運転で、適当に答えた感じがなんだかいい。
「スズ行きたいとこない?
見たいものとか食べたいものとか」
「えっと…」
「折角こんな遠くだし
スズの行きたいとこでいいよ」
こーきは車を走らせる。
目的地は決まってない。
私にはデートのプランが一切思いつかない。
この辺りに何があるのか、距離感もわからないし、こういうデートの仕方はさっぱり不明。
どこに行きたいとか何をしたいとか、言った方がこーきはいいんだと思う。
私の行きたい所に連れて行きたいって思ってくれてる。
でも本当にわからないの。
私の想像できる知り得たデートは、定期券で動ける範囲で、お小遣いで事足りる内容だから。
お小遣いがなければ、どこかに座ってちょっとだけくっついてとりとめのない話をするような。
そんなデートしか思い描けない。
こーきが思い描くデートとは、きっと違うの。
だから私は本当に、こーきといれたらそれでいい。
大人になったら変わるのかな。
好きな人とここに行きたい、一緒にこれを見て有名なあれを食べて。
そういう事をしたくなるのかな。
「なんか無い?行きたいとこ」
「えっと…」
「うん、どこでもいいよ」
「えっとね…」
「どこ?」
なんか申し訳なかった。
せっかくそう言ってくれてるのに。
「ごめんね!
どっか行きたいとか色々意見言えなくて!
私こういうデートってわかんなくて…
駅とかマックとかカラオケとか
そんなのしかわかんないの!
なんか…ごめん…」
こーきと私の差。
普段は気にならないのに、時々見えてしまう。
こーきの仕事が忙しいのに、でもわかってあげられなかったとき。
こーきの家族に反対されたとき。
キスの先に進む勇気がなかったとき。
この差が
時々私を苦しくした。
「あ…そっかごめん」
車が赤信号に停まり、焦ったような表情のこーきが、私の頭に手をぽんと置いた。
「や…遠慮してんのかなって思ったりしてた」
「遠慮はしてないんだけど…」
「そうだよな
ごめん、つい高校生ってこと忘れて…」
「ごめんね…でもホントに
こーきが連れてってくれるとこが嬉しいから」
「ごめん…ちょっとデートやり直しな…」
やり直し?
帰るの?
「忘れてくれ…
スズに丸投げしようとした俺の事…
カッコよくデートさせてくれ…」
そんなにバツ悪いの?
初めて見たそんな顔。
プププ
「じゃあ最初からね」
「いい?」
「いいよ!さっきまでのナシにする!」
「すぅ様…!」
「あ!そのセブンに停まって!」
車は少し先にあったセブンに入る。
「何?何か買う?トイレ?」
「初めからやり直し~
ここで待ち合わせな設定ね!
こーきが迎えにきたとこ」
キョトンとして、フフって笑ったこーき。
「五分ちょうだい」
「わかった、じゃあ5分後に来るね」
広島のどっかのセブンで、私たちのデートは仕切り直しになった。
ブィーン
「らっしゃ〜せ~」
こーきにあげた5分の間に、トイレ行ってお化粧直そ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます