スノボ旅行⑥神田さん

静香さんとれんちゃんと、雪合戦をしたりプラスチックのソリで遊んだりしていた夕方。


「静香!山崎!」


笑顔全開のまま、声の先を振り向く私たち三人。



なんかイケメン来た。



「神田だ!」

「遅かったわね~!」


その人は大きく手を振りながら笑顔で走り出し

ズコッ

「こけた!」

「ダッサ~」

「うるせえ!」

笑うと可愛い。


雪に足を取られながら雪遊び広場に来たのは



「スズっち、福岡支社の神田くん」



神田さんという人。



「あ、スズちゃんと趣味合うかも

 甘い物大好きなのこの人こう見えて」

「ケーキバイキング連れて行かされたよね~」

「ホント、東京いるとき毎週行ってなかったっけ」

「だよね今どうしてんの?

 まさか一人で行ってんの?」

「博多美人捕まえて行くって豪語してたじゃんね」

「捕まえたって聞いたよ、博多美人」

「てか遅かったね

 仕事抜けれなかったの?」


雪遊びが楽しすぎて笑顔全開だった私たちと同様。

久々に会うお友達を見つけ、この人も笑顔全開で走ってきたのに



なんか急に真顔で

何かに見入るみたいに

何かに集中して

何かに気を取られたみたいに

静香さんとれんちゃんの会話は耳に届いてないみたいだった。



「あ…あの」



ハッと我に返り





私から視線が外された。





「あ…ごめん」

戸惑って泳ぐ目線。


「こちら青井スズちゃん」

「朝霧くんの彼女で~す」



「あ…え……」


「青井スズです!よろしくお願いします!」



「神田?どうかした?」

「何焦ってんの?」



「や……親戚の子にめっちゃ似てて

 すんげービビった

 なんでここにおるんや!ってなんか知らんけど

 焦りまくってた」

「なにそれ~」

「親戚の子だとしても焦ることないでしょ~」

「だってここにいるはずないだろ!」

アハハハハハハ



「神田巧実です、ヨロシク」



こーきのイケメンぶりとまた違う種類のイケメン。

柔らかい優しそうな感じの。

そうね、例えるならフロマージュみたいな。

こーきはどっちかというとプレッツェル的だし。

いや、スイーツ縛りを解けば、こーきは完全に強炭酸水で、この人はスコールって感じ。



これで全員揃った。


おさらいします←作者


東京から秘書課のれんちゃん

クールな真田さんと美人彼女のマドカさん


大阪から、静香さんに一途な竹内亮さん

京都から美人な平井さなえさん←朝霧を好きな


その他大勢の米山さんに

同じくその他大勢の村上さんとその彼女さん

同じく熊本支社の小沢さん


そして今来たのが福岡支社のイケメン神田さん


総勢13人になりました。







「え、スズっち一人部屋なの?」


日が落ちてやっとチェックイン。


れんちゃんが驚いてそう言うとみんなザワッとした。

だって彼女と一緒に来た人はみんな同じ部屋だもん。


「青井本部長のご指示だから

 スズちゃんは22時まで」

「え、早くない?」←平井さなえ

「やんちゃなオオカミに襲われちゃ困るでしょ」

「それは俺か」


「まぁ仕方ないよ。

 これでほら、甲田ホールディングスの名前出て

 未成年者にお酒飲ませたとかなっても困るし」


そっか。

迷惑掛けるかも?


「てかあれじゃね?

 俺たちも早く寝そう、俺眠いし」←竹内リョウマ

「確かに~」


夕ご飯終わったら部屋に籠もろう。

お母さんもお酒飲んだりするだろうからって言ってたしね。

一緒に居たらこーきだけじゃなく、みなさんに迷惑掛けるかもしれない。

それに遊び疲れたからすぐ眠くなりそう。



「はい、スズちゃん鍵ね

 オートロックだから

 部屋出るときは絶対持って出るのよ」

「はーい」

静香さんに鍵を渡された。

「じゃあ19時半に二階のカフェな」

「「「はーい」」」」


「スズ、大丈夫?」

「うん!」

「俺505だから何かあったら言えよ」


こーきは絶対に部屋には来ないんだろうな。

大魔王の言いつけだもん。


22時までは一緒にいていいのかな。


でも…


お仕事の仲間

久々に会ったっぽいし邪魔はしたくない。




みんなそれぞれ、荷物を持って部屋に向かうエレベーター前。


「全員乗れなくね?」

「体力あるやつ階段行けよ~」


「スズっち温泉行こ~ね~」

「はい!」

「俺も行く!」←賑わし役

「いや~混浴か~」←竹内


アハハハハハハ



「スズちゃん、みんなでお風呂入るの平気?

 苦手だったら部屋でシャワーでもいいよ」

「全然大丈夫!楽しそう!」

「そ、よかった

 じゃあ部屋に迎えに行くから」

「はい!

 あ…でも笑わないで下さいね!

 お腹ぷよぷよだから!」

「大丈夫、私鶏ガラみたいだから」

「スズっちより私の方がお腹やばいよ!」

アハハハハ


一緒にお風呂とか恥ずかしいけど楽しすぎる~

修学旅行みたい!



「朝霧」


「あ?」



静香さんがニヤって笑う。




「お先にごめんね」




「お前…!」




部屋は大きなベッドが壁側にどんと1つ。

その反対側にテレビと鏡とデスクが一体化した机。


壁は普通の白

窓は正方形

入り口の横にトイレとお風呂


↑一般的なシングルの仕様



私のお城~~!



なんだかワクワクした。

こんなの初めて。


ホテルで一人で寝るなんて!



コンコン

『スズっち行くよ~』

「はーい!」

ドアの外にいたのは、静香さんとれんちゃんとさなえさん。

「さなえも行くって」

「だってせっかく温泉だし」

なんか緊張する。

れんちゃんは気さくで優しくてフレンドリーで親しみやすいけど、さなえさんはなんていうか、ピリッとした壁みたいな線みたいなのがある。

れんちゃんみたいに親しみ感はない。


大浴場は最上階にあった。


「ゲレンデ見えるらしいよ、露天風呂」

「うそ!すごい!」

「凍えそうだけどね」

「雪見風呂~」

そんなことを言いながら暖簾をくぐり、もうわくわくが止まらない。


だって


「修学旅行みたい!」


広い脱衣所

棚がずらり

大きな鏡


「そっか~

 スズちゃんそんなにないよね

 こういうとこ泊まったり」

「ないです!ちょー楽しい!」

「テンションたか~…」

「いいじゃんさなえ

 可愛いでしょ、素直でウブで」


棚に荷物を置き、さなえさんはパッとニットを脱いだ。

続いてれんちゃんもトレーナーを脱ぎ

「あ、私トイレ行ってこよう」

静香さんも羽織っていたパーカーを脱いで

「私も行く!」

れんちゃんと二人、トイレに行ってしまった。


あ、静香さんがトイレに行くときは一緒に行く約束だった。


「脱がないの?先に入ってよ?」


早苗さんにちょっと微笑んで言われて嬉しかった。

だから言いつけを破り、トイレはやめて脱いだ。


「なーんだ」

「え?」

「私の方がラインいいじゃん」

ライン?ラインってライン?

「行こ」

「はい」


さなえさんの大きなお胸にくびれたウエスト。

そしてプリケツ。


いいな

どうやったらそうなるの?




ジャーーとシャワーを出し、置いてあるリンスインシャンプーでゴシゴシゴシゴシ。


「あ、いたいた~」

「ちょっとスズちゃん

 シャンプー貸してあげるのに」

静香さんが背後から私の頭にシャワーをかける。

「あーあ、ほらキシキシ」

泡が流れて振り向くと…


どこが鶏ガラーー!

細身のナイスバデーやん!

そしてれんちゃんおっぱい大きい!



「トリートメント貸してあげるから、はい」

「わ、いい匂い」

手の平に出してくれたクリームを髪に塗り塗り。


「この角度から撮って

 朝霧に3万で売りつけようかしら」

「犯罪だけど買いそう」

「おにぎり食べてる写メを

 3千円で買おうとしたからねあいつ」


「さなえ」


「別に大丈夫」


「そ?」

「なんか前と違うな〜って…

 好きだった頃と変わった。

 顔はやっぱ好みだけど」


「人を顧みない冷徹なとこが好きだった?」


「そうかもしれない。

 あれで時々見せる優しいとこがたぶん好きだった」

「今違うからね~

 終始ニヤニヤしててさ」

「どっちが本当だったんだろ」



「優しくなったから、あいつ」



「まぁ、悔しいっちゃ悔しいけどね」



なんの話かわからないけど、私にわからない話なんて沢山あるんだし聞いてない振りしてごしごしごしごし。


「スズっち柔肌なのに案外豪快に洗うね…」

「肌に悪そう、そんなこする?」


断トツ一番に洗い終わり、大きなお風呂へ。


「あーーー…気持ちーー」


疲れた筋肉がほぐされる。



「やあだ、そんな声出すの?」

ちゃぷっとお上品に入ってきたのはさなえさん。

「お湯弾くね~」

「ハジク?」

「色白いね」

「はい」

「はいって…」

「でもさなえさんも白いですね

 お腹締まってるし、いいな…」



「これに触ってんのか…朝霧くん」



え?


「シミ一つないしピーは綺麗にピンクだし…

 満足なんだろうな…」

「何が…」

「ちょっとおっぱい触らせて」

「は?!」

モミモミモミ

ギャーー!

「あーね、いい感触かも

 大きさ弾力肌質ウブな顔」


「ちょっとさなえ、それ公然猥褻」

「なにいじめてんのよ」

「静香さん!」タスケテ!


「おいでスズちゃん」

「静香さぁぁん」泣泣



「朝霧くん上手?」



え、何が?



「あんたそんなこと聞いてどうすんのよ」

「諦めるんだから

 これまでの妄想の答え合わせしたいじゃん!」

「どんな妄想してたのよ」

「ウケる~さなえ妄想してたの?」アハハハ

「するでしょ普通!

 同じ会社じゃなかったら

 セフレにでもなれたかもしれないのに」

「でたでた、肉食」


「ちょっとくらい教えなさいよ」


「え、何を?」


「イラつくわねなにキョトンしてんの!」

「そろそろ察して。素でこんな子よ。

 でもたぶんこんなとこが好きなんだと思う」

「自分が頭切れるから

 頭切れない子がよかったってこと…?」

「一理あると思う」

「じゃあ私ダメじゃん…頭いいもん…」

「それあんま失礼」

「スズっち癒やされるもんね〜

 私もおっぱい触らせて~」

ギャーー!また!



「さなえ」



「この子も正解知らないのよ、してないから」



「「は…?」」




「18才になるまでしないんですって

 禁欲よ禁欲

 本も動画も自己処理もしないんだって」




「ウソでしょ…」



なんか

れんちゃんとさなえさんが固まって



フラ~~…

ぶくぶくぶく



浸水した。

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