年末年始⑧お年玉とお守り
「「「明けましておめでとうございます」」」
とりあえず厳かにみんなでご挨拶
からの
「はい、お父さん」
お母さんがお父さんに渡したのは、毎年恒例お年玉。
大体、元旦の朝一でくれる。
ワクワクワクワク
咳払いしたお父さんは
「じゃあ年長者から」
例年に無い言葉を言った。
「はい、朝霧くん」
「え…」
「ま、貰わなくても持ってるだろうけど」
「もぉお父さん」
お母さんがお父さんの腕を叩く。
「えっと…」
戸惑うこーき。
「たいした額入ってないのよ
お正月だから縁起物よ」
「あ…ありがとうございます」
サンタさんに引き続き、こーきにもお年玉があった。
驚いてたこーきの顔は嬉しそうに笑った。
「はい、次かっくん」
「やーりーー!」
「やぁね、そんな喜ぶほど入ってないわよ」
「違うぜマミー!
数に入ってたことがやーりーー!」
「麻衣」
「はーい!」
「鈴」
「やっぴー!」
中身もやっぴーだった。
「1万円だ!」
去年まで5千円だったのに。
「みんな仲良く平等にね」
平等制度のおかげで大幅アップ。
「さ、朝ご飯にしましょうか」
朝ご飯は元旦らしからぬトースト。
お雑煮は食べないのかって?
これはうちの大魔王にしたがってこうなったんだよ。
朝にあまり食欲が無いから、そんな餅の入った汁物なんて食べられませんわ。
ってことで、いつの頃からなのか、うちではお雑煮もおせちもお昼ご飯から。
それに昨日からご馳走食べてばっかりで、常に満腹状態だからね。
ちょうどいい元旦のトースト朝ご飯。
「かっくんまたコーヒーでいい?」
「はいな!」
「朝霧さんは?」
「じゃ…あの牛乳を…」
遠慮がちに注文。
「こーきはちみつ入れる?」
「はちみつはトーストがいいかな」
「それいいね!バターとはちみつ!」
まったりしたバターに
あまーいはちみつがとろーっと
「美味しい~」
「うん」
もぐもぐ
「味覚が合うのね」
「そんな成りして味覚が鈴と同じレベルか」
「ジブンアマイモノハチョットって言って欲しい」
「マイマイそれな」
はちみつを掛けたのは私とこーきだけ。
かっくんなんてマヨネーズ塗ってるし。
パンで小腹が満たされたとこで、全員で馬由が浜神社へ出発した。
この辺りで一番大きな神社
ちょっとだけ不安もあった。
こーきの家族も馬由が浜神社に来るんじゃないかって。
「こーき…」
「ん?」
そんなこと聞いたら嫌だよね。
自分の家族のこと嫌がられたら嫌だよ。
「何でもない!手つなご!」
「や…ちょっと無理…」
あ
ですよね。
この集団、どんな関係に見えるのかな。
どう見ても保護者なお父さんお母さん。
金髪の若者と黒髪真面目イケメン、普通の女子大生っぽい麻衣ちゃんと、せめて女子大生っぽいの目指してる私。
「4人兄妹に見えてたりして」
つぶやくと、前を歩いてた麻衣ちゃんが振り向いてクスッと笑う。
「スズ、たぶんそれ」
「だよね」
「腕でも組んで歩いたらいいかも」
「それヤバい兄妹だと思われない?」
「思われる」クスクスクス
馬由が浜神社は、馬由が浜駅の方に下りツタヤを通過し、お祭りの大きな公園も通過し左に少し入ったとこ。
神社が近づくにつれ、普段よりも格段に通行人は多く
「「あ」」
英介と正面衝突。
彼はお父さんに知られてはいけない男友達
「スズちゃんお友達?」
お母さんがニコッと頭を下げ、お父さんは真顔で見る。
「あ…えっと」
わが家の事情を知る英介も焦る。
「僕の知り合いの弟で」
サラッとこーきが言った。
「家近所なんです」
「あらそう」
「こ…こんにちわ…」
「じゃ、兄ちゃんによろしくな」
「お…おっけ」
難を逃れた。
こんな近所の神社だもん
色んな人に会うじゃん。
「まぁどうも~」
「久しぶりね~近所なのに」アハハハ
近所のおばさん、増えた兄妹を二度見。
「スズ!」
「あ!明日香!」
中学の同級生に会い。
「麻衣!」
「うわ~久々!」
麻衣ちゃんも同様。
そのたび、こーきは少し笑ってどうもって頭を下げた。
「かっくんどうしたの?なんで泣いてるの?」
「あとで年中無休の
やっすい床屋に連れてくから大丈夫
スズは心配しないでいいよ」
「もう坊主にして…」シクシク
神社はすごい人。
年に一度神様にご挨拶する日だもん。
『神様、去年はありがとうございました
とても素敵な1年でした』
まずはお礼。
『今年は受験もあるし
やりたいことを見つけてお勉強頑張ります』
今年の目標を誓う。
『こーきとずっと一緒にいられますように』
そして厚かましいお願い。
5円で大層なことをお願いした。
お参りが終わったら、私はお守りに並ぶお母さんについて行く。もれなくこーきも。
お守りの色を選びたいから。
お父さんは境内をふらっと歩き回り、かっくんと麻衣ちゃんはたき火の前で楽しそう。
「家内安全のお札と肌守りを…」
お母さん指を折る。
「6枚」
6枚?
「あと車のが三つと」
三つ?
「スズちゃん何色にするの?」
「今年は青にする!」
「学業の青を二つ…いや三つ」
三つ?
ここでもちゃんと数に入ってた。
家に帰って分けられたお守りを、こーきはお財布に入れ車に置き、かっくんは青いお守りをリュックのファスナーに結びつけた。
「早いけどお昼ご飯にしましょうか」
朝ご飯はトーストだけだったから、もうとっくにお腹は空いていた。
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