欲望に勝る着信
「先って?何するの?」
そういう本とか動画とか見たことないのか?
少女漫画にはそんな場面ない?
「んーー、まずは」
「はい!何をしますか!」
はっ…!
よく考えたら俺ってば…初めてな子が初めてじゃないか!
「ねぇ何するの?」
いや…さすがに今日最終ステージまでは考えてないけど。
「こーきのしたいようにして?」
どっからそんな台詞出てくるんだ。
完全無知のくせに。
「嫌だったら言って」
さっきまでのキスとは違う。
大人のキスはもっと大人の色香を纏い、スズもさっきと違う。
スズは気付いてないかもしれないけど
こぼれる息はさっきより100倍エロい。
トレーナーの裾からそっと侵入。
スズはやっぱり一瞬体を震わせ、厚地を一枚隔てないそこはスズの体温が濃く華奢な腰の線がはっきり手に伝わった。
もう一枚、スカートインの薄いシャツをスカートから抜き取ってしまったら、この手を目的地に到達させたい欲望を俺は我慢できるのか。
てか目的地に到達したらさすがにスズは嫌がるよな。
そこやそこに触るなんてわかってるのか?
腰から上にスズの体の線を辿ると、手に当たった目的地オープンへの鍵。
開けたい
今すぐ開けたい
そんな邪念に気を取られていたら
「スズ…?」
震えてる。
「ごめ…!やめる!怖かったよな!」
あーーーしまった…
「ちが…」
はぁはぁ息が上がる。
息止めてたのか?
「な…んか…力入んない…」
まだキスしかしてない。
「ったく…可愛すぎ…」
これで理性が勝ついやついるか?
一歩前に出ろ。
耳にキスを落とすと、スズはギュッと背中に掴まった。
トレーナーを裾から引っ張り上げると、スズはされるがまま腕を抜き、耳から首筋にキスで辿る。
汗ばんだ首
キスが更に降りていくと、スズは両手で胸元を隠した。
「嫌?」
「や…じゃないけど…恥ずかしい…」
その恥ずかしそうな表情が、理性をバッサバッサとなぎ倒す。
隠した手をそっと降ろさせると、スズは恥ずかしそうに顔を伏せた。
胸元の大きく空いた黒の長袖のインナー。
ピタッとしたそれは、はっきりと線を表した。
セーラーってたぶん体型を隠す。
「大人のキスの先って…これ?」
「うん」
「服を脱ぐの…?」
「キスしたい」
「うん…」
「口じゃなくて
スズの体全部に」
「えっと…」
「怖い?」
「い…いいよ…
こーきがしたいこと…して?」
予定変更、一歩じゃ済まない。
早々に理性崩壊。
その背中の鍵に手を掛けた
その時だった。
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すぐ手元でスズの電話が鳴った。
着信の相手は
『お父さん』
「スズ…」
「いいって、シカト」
俺は一瞬にして理性を取り戻した。
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『どこにいるの?お父さん心配してるわよ』
「スズ…えー…と」
「家出したの
もう帰らないから泊めてよね」
ドッカーーーン
また爆弾投下しやがった。
「お父さん…なんて?」
「とにかく駄目だって
高校生のくせに男と付き合うなって」
「で…?」
「みんなやってることだって言ったら
得意のうちはうち、余所は余所
だからこんな家嫌だって言ったら
お父さんが出て行けって言ったの」
チーーン
「いいの
絶対帰ってやんないんだから」
PPPPP PPPPP
寝室から聞こえる着信音
「……」
「こーき電話鳴ってるよ」
見なくても誰なのかわかる気がする。
押さえ止めていたスズの手を離すと、スズはトレーナーを拾って被った。
せっかくのチャンスが…
という気持ちなんか微塵もなかった。
転がるように寝室に駆け込む。
見た画面の表示は
『青井本部長瑞葉』
心臓吐きそうになった。
手が震えてスライドが上手くいかない。
PPPPP PPPPP
落ち着け俺!!
やっとボタンがスッと右にずれ、通話の画面に変わった。
もう一回言う
心臓吐きそうだ。
「は…はい…」
えっと…とりあえずあれだ
昨日のお礼から…
「青井本部長…昨日はその…」
『スズは?』
「き…来てます…」
ため息大きすぎてスマホが風を拾う。
「あの…すぐ送ります…」
気配は感じなかった。
「ちょ…スズ!」
背後からパッと取られたスマホ。
「お父さん!こーきにかけないで!
お父さんがいいって言うまで帰らないから!
こーきの家に住む!
なんでもダメダメ言ってお父さんなんか大嫌い!」
目…回ってきた…
画面を連打で通話を切ると、スズは布団にスマホを投げ捨てた。
俺のスマホは投げられるのが好きらしい。
「お茶いれてくる!!」
「はい…」
ぷりぷり怒ってスズはキッチンへ。
俺は布団に倒れ込んだ。
「マジでどうしよ…」
とにかく送っていこう
そんで謝ってお願いしてそれから。
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向こうでスズのスマホが鳴る。
「お母さん?
私お父さんがいいって言うまで帰らないから…
え?え、ホントに?うんうん」
キッチンの向こうでカップにお湯をそそぎ、ケトルをトンと置くとスズは顔を上げた。
「お父さんが夕方うちに来いって言ってるって」
「行く!絶対行く!」
文句でも何でもいい
話しを聞いてもらいたい。
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