よそ様のお嬢さん✖取引先の若造
大人のキスの先
昨日の夜はあんなに遅かったのに、朝6時半に目が覚めた。
飲んだけど、飲んだだけで酔えなかった。
「あーー…頭いて」
独り言を声に出したい気分だ。
起き上がりパーカーを羽織りエアコンをつけ、冷蔵庫から水を取った。
今日は土曜日。
大イベントの次の日だから部署全体が休みで、急な仕事も入らなかった。
昨日のためにピアノ漬けだったスズと、久々にゆっくり会えるかもしれない。と、昨日までの俺は浮かれていた。
それどころじゃない。
青井さんが反対してることは、昨日の夜、スズからラインが来た。
これは家に謝り&挨拶に行っていいものか。
スズを介さず青井さんに連絡するか、それとも普通は彼女を介すのか。
「あー…どうしよ」
こんなことなら、つきあい始めた最初から挨拶に行けばよかった。
それでも状況は変わらなかったかもしれない。
変な虫がつかないために女子校にやったのにこれ。
しかも相手は俺。
青井さん
彼女と上手くいってほしいと言ったじゃないか。
瑞葉コーポレーションとの契約
大丈夫だよな
そんな不安もよぎった。
スズ、怒られて家に居づらくなってないか。
彼女の親
取引先の上司
大反対
面倒くさい要素が揃いまくってるのに、不思議と、面倒くさい、もういらないとは思わなかった。
どうにか許してもらえる打開策はないかと考えていた。
そんな自分に安心した。
スズだけはやっぱり、適当な気持ちで付き合ってない。
まだ早すぎる。
10時を回ったら青井さんに電話しよう。
そう思ってもう一度布団に潜り込んだ。
決心したら精神的に落ち着いたのか、二度寝でぐっすり。
スー…zzz…スーzzz…
「ぐふっ…!」
な…なんだ!
何かがドンッと乗っかってきた衝撃で目が覚めた。
「こーき!」
え…?
乗ってきた何かに手を回す。
確かに何かを抱きしめて、寝ぼけた視界に入ってきたのは、真上からのぞき込むスズだった。
しかもすんごい近距離。
「どした…え、何時?」
「11時くらい
今日仕事入らなかった?」
「うん」
完全に襲い込んでるじゃないか。
寝てるとこ上に乗ってくるとか。
これは完全無知の無意識なのか…
あ、酒臭いかもしれない。
飲んだ後の寝起きだぞ。
「スズ、ちょっと顔洗ってくる」
「うん」
俺の上からゴロンと布団に落ちた。
だから起き上がった。
待て
なんだその生足は…
スズは黒のトレーナーにカーキの短いスカートをはいていた。
そして彼氏の布団に寝転がるという完全無知具合。
耐えられるだろうか。
顔を洗い
歯を磨き
洗面所を出ると
「こーき何がいい?」
スズはキッチンではりねずみカップを並べてお湯を沸かしていた。
「スズは何飲む?」
「紅茶にハチミツかな~
牛乳ハチミツは家で飲んだし」
「じゃあ俺は緑茶で」
「かしこまりました~」
香典返しでもらったティーバッグの緑茶を、スズはカップに落とした。
ケトルはまだうんともすんとも言わない。
「スズ」
振り向き微笑むスズ。
「こーき、ギュッてやって?お湯が沸くまで」
「うん、おいで」
いつぶりだ。
スズをこうやって抱きしめられたのは。
あー…スズの匂い
「こーき」
「ん?」
「昨日…」
「お父さん怒ってる?」
「私のピアノどうだった?」
あ…
そうだ、青井さんの事で頭いっぱいだった。
「ごめん…」
「え…なに駄目だった…?」
「あ、違う違う
ピアノのお礼言うの遅くなってごめん」
そうだよな、スズはそれが気になるよな。
「スズに頼んで良かった
二次会でもみんなピアノよかったって
言ってくれたよ」
「ホントに…?」
「ありがとう、スズ」
そんなに喜ぶのか。
スズに弾いてもらって評判良くて、俺の方が助かったのに。
スズに頼んでよかった。
そんなに喜んでくれるなら。
「じゃあよく出来ましたのキスして」
は?
「ご褒美はつきものでしょ?」
そんなのご褒美になるのか?
喜ぶのは俺の方だ。
半笑いで目を閉じ、ご褒美を待つスズはそれはもう可愛いの一言で、チュッと一瞬つけると目を閉じたまま笑った。
「まだ」
またつける
「もっかい」
またつける
わざとやってるのがまた可愛い。
「大人のがいい」
急に爆弾投下。
だけどこれを拒否するわけがない俺。
口をつけると、さっきのふざけてたのとは違いスズは唇を緩め、怯むこともなく覚えたての大人のキスをする。
背中に捕まる手が、ギュッとシャツを握りしめた。
それが拍車を掛けてしまう。
止まらない
止められない
↑かっぱえびせん
違うか
キスからこぼれる吐息がキッチンにあふれ、抱きしめていた手がついついその細い腰に。
「んっ…!」
なんちゅういい反応するんだ!!
「スズ」
キスを離すとスズが腕の中で見上げる。
やめてくれ…
赤くなった頬
うるうるな目で上目遣い
テロリストかお前は。
「も…終わり…?」
だーーーーー!もう!
「スズさん」
「はい」
「一歩進めさせて貰ってよろしいでしょうか」
「何を?」
「大人のキスの先」
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