大魔王降臨
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『そろそろトイレ済ませて会場に来てね』
静香さんからラインだった。
だからとりあえず部屋から出てトイレへいった。
そしてトイレを出て、遠目に会場の場所をキョロキョロと確認。
「スズ」
「あ、こーき」
「そろそろこっち来てて」
「うん、今静香さんからラインあって
トイレに行ったとこ。楽譜取ってくる」
「スズ待って」
こーきが私の手を掴む。
「この手…どうした?」
「あ、大げさに青くなったけど痛くないよ
ピアノ弾けるから大丈夫」
すっごい心配そうな顔で変色した指先ガン見。
「怪我?どうした?」
「今日昼休みにね
愛理がピアノにぶつかっちゃって蓋が…」
「は…?」
え…
そんな怖い顔するの?
「こーき…?」
「ぶつかった…?」
「あ、うん。
でもわざとじゃないし弾けるし大丈夫!」
「……」
「ごめ…こーき怒った…?」
「あ…や、ごめん何でもない
よかったたいしたことないなら…」
「うん」
ビックリした…
一瞬すごく顔が怖かった。
痴漢騒ぎのぶち切れてた時ともなんか違う。
こんなこーきは嫌だ。
「スズの綺麗な手が…」
「すぐ治るよ」
ナデナデすりすり。
「よかった、折れたりしなくて」
「信じられない反射神経持ってた」
「運動神経ないのに?」
「いいの、その代わりピアノ弾けるから」
指を絡めた左手。
こーきは痛そうな顔で中指を見た。
「痛くなったら言えよ」
「うん」
「あー…離しがたくなった」
「行かないでいいの?」
「行かなきゃ
もう来てる人いるから開場する」
いちゃいちゃが足りてないの。
ここひと月はこの日のために没頭してたし、こーきも平日休みだったから会えてない。
見つめ合っては笑い
こーきは手を離さない。
「マジ行かなきゃ」
「行きなよ」アハハハ
そんなバカップルな事をやってるホテルの一角
「鈴…?」
ん?
「え…」
こーきの向こう側から聞こえた声に
「お前なにやってるんだこんなとこで」
こーきも振り向いた。
「なんでお父さんが…?」
なんでこんなとこに?
見学は無理だって学校から伝えてあったはずだし、家には終わる時刻しか知らせてない。
ただの課外活動だって。
「あのねお父さん今日の…」
説明をしようと思ったのに、お父さんはもう私の方は見てなかった。
「朝霧くん…?」
こーきの顔と
いちゃいちゃしていた手を、お父さんの目線が行き来する。
「ちょっと待て…」
混乱
なんてピッタリな言葉
「どういうことだ…」
絡んだままの手を下ろすタイミングは、完全に逸した。
「朝霧くん」
「知り合いなの?
こーき、お父さんのこと知ってるの?」
「お…お父さん……?」
顔色のないこーきが、恐る恐る、私とお父さんを交互に見た。
「まさか君がこんな事…」
お父さんが私の手首を、こーきから奪い取るみたいにガシッと取った。
「鈴、帰るぞ」
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