第28話 私の言いたいこと3つ
遠くからでもすぐにわかった。
スーツじゃないのに
髪の毛決まってないのに
私はたぶんもう、クセみたいに探してしまってたんだと思う。
諦めようと思いながら、目も心もその姿を探してた。
だからすぐに見つけられたんだと思う。
誰かと待ち合わせかな
そう思ったら胸が苦しくて、気づかれたくなかったのに目が合ってしまった。
もう見たくないの
綺麗な女の人といるとこ。
もう聞きたくない
拒否する言葉は
今はツラい
「待て…待って!」
嫌だ
「も…聞きたく…ない…」
泣いたりしたらもっと嫌がられるのに
「これ以上聞きたくない…!
ストーカーしないから…ラインもしないから…!」
もう何も言わないで
「わかった…」
忘れるから。
見かけても気づかれないうちに消えるから。
「三つだけ言わせてくれ」
3つ…?
「ライン、返さなくてごめん
ちゃんと全部読んでた
ピアノの動画…何度もみた」
何…?
「それからあのケチャップ
店に売ってあるから」
ケチャップ…?
「あと…」
深いため息
嫌だよ
そんな顔で…何を言うの?
「やだ……」
聞きたくないって言ってるのに
怖い
「嫌…!」
「お前が好きだ」
ん……?
「じゃ、足止めてごめんな」
朝霧さんはさっきと別人みたいに、何かから解放されたみたいに、スッキリした顔で笑って
「じゃ、ピアノ頑張れよ」
もう歩き出していた。
「待って…!」
地下のスーパーに入る自動ドアの前で、朝霧さんは振り向いた。
「今の…私のこと…?」
「他に誰もいねえじゃん」
ホントに…?
「じゃーな」
行っちゃう…
泣くな私!
泣いたら喋れない!
「待…ってよ!」
言わなきゃ
「私も…言いた…こと、三つある…!」
今言わなきゃ
ストーカーしたら嫌がられるんだから
「ライン…既読だけで嬉しかったの!」
二つ目は…
「会いたくて……
嫌われても…会いたくて…」
「は…?」
「三つ目は…」
手の甲で涙を払って顔を上げると
しっかりはっきり
朝霧さんはちゃんと私を見ていた。
「私のこと彼女にして…!大好きなの!」
少女漫画のヒロインみたいに
掛けだして飛びつきたかったのに
私は座り込んで泣いてしまった。
人が沢山いるのにごめんなさい。
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