第22話 俺の運命の女?
「鳴らないっすね~」
下田は毎日毎日ラインが鳴るのを待っていた。
「下田、これ総務な」
「ポイされちゃったんですか?」
「明後日までに仕上げろよ企画部に出す分
絶対やれよ、静香もいないんだからな」
「マリアちゃんどうしてるのかな~」
「うっせえな仕事しろ」
「朝霧、これ本社の木村さんに渡しといて」
「はい」
「もう時間だろ?
下田の子守は野崎くんに任せてどうぞ」
必要な物をバッグに詰め込み、デスクの上は片付けて残していく仕事を下田のデスクに
ドン!
「マジすか」
「マジっす」
「あ、下田こっちもね」
ドン!
静香も下田のデスクに仕事を置く。
「俺の土曜日返してくれ-!」
「今から出張に行く人によく言ったなお前」
「朝霧そろそろ行く?」
って言いながら静香は部長のデスクに書類をのせ、窓の外に釘付けになっていた。
そんなはず無い
「朝霧、それホントに彼氏なの?」
「バスの時間遅れるぞ」
「行っちゃうわよ、いいの?」
「関係ない」
やっかいなストーカーが終わって、俺は平和を取り戻した。
所詮、隣に男がいればいいただの女子高生で、俺がダメなら次。その程度だ。
会社の裏からタクシーに乗り、バスセンターに向かった。
バスの時間は11時。
そっか、今日は土曜日か
「コーヒー飲む?」
「いい」
「トイレ近くなったら困るもんね」
「牛タン買ってこい」
「食ってくる」
空港行きに乗る静香と、福岡行きに乗る俺は、隣同士の乗り場の前でくだらない話しをする。
先にバスが入ってきたのは福岡行きで、足元に置いてたキャリーバッグの持ち手を引っ込め
ハンドルを握って持った。
「お、こっちも来た」
「飛行機落ちなきゃいいな」
「うっさいわね」
「じゃーな」
親父からタダで手に入れた乗車券を胸ポケットから出し、人の列について行く。
「じゃあ何で聖奈ちゃんポイしたの?」
答えられず、バスに乗り込んだ。
どのタイミングで質問投げかけてんだあいつは。
代わり映えしない高速の景色は面白くもなく、イヤホンを耳に詰め込んで音楽を流し目を閉じた。
何しに来たんだよ
貴重な仮眠の時間なのに、保存した動画をタップして音量を上げた。
この音に重ねる画はどうしても
木のテーブルを弾いてる指で
申し訳なさそうに二十円を出す顔で
「私のこと彼女にして!」
真っ赤になって。
迷う指が迷い
胸の底から
腹の底から
勝手に息が吐き漏れた。
俺は
削除ボタンを押した。
.
福岡支社に寄ったのは、会社からの命ではなく自分の都合。
「光輝!」
教育係だった先輩と待ち合わせていた。
「久しぶりだな~」
「ご無沙汰してます」
「はい、言ってたソフト
重いから先に受け取れ」
大きな紙袋を渡された。
「え、白川さんUSBって」
「USB挿したパソコンって言ったろ?」
絶対言ってない。
今から東京行くのに何を渡してくれるんだ。
「浜田部長に渡しといて
お譲りする約束なの」オホホ
だから福岡寄るの二つ返事で了承したのか。
「昼飯まだだろ?博多と言えばあれだ」
と言いながら入った店は
「なんでドトールですか」
「福岡のドトールいいとこだろ?」
「そうですね」
席に着くと、今もらったパソコンをケースから出し、コンセントを挿して起動した。
「ILKの佐野さんからメール届いた?」
「いえ」
「納期がギリだから場所を変更するらしいんだ」
「今からですか?」
「これ見て」
ドトールで小一時間。
「じゃあそれでいいな」
「はい、よろしくお願いします」
パソコンを閉じると、白川さんはアイスコーヒーを飲み干した。
「どうよ最近」
「最近は目処が立って落ち着いてますね
ちゃんと休めるし」
「仕事の話じゃねぇ
まだ遊び回ってんのかと思って」
「遊んでません、初めから」
「早く結婚したまえ
いいよ結婚は。
家に帰ると可愛い嫁が裸にエプロンでさ
ご飯は美味しくないけど…」
半年前、福岡支社に転勤するのをきっかけに白川さんは結婚した。
「そろそろ運命の女に出会っただろ
あんだけ遊んでたんだから」
運命の女?
「……」
「え…えぇ?!そんな反応?!
9割いないと思って聞いたけど!」
「いません!」
静香のせいだ
発車間際にあんなこと言うから
彼氏持ちの高校生なんて
どうでもいい
博多から新幹線に乗り、東京までの時間、眠れなかったから仕事をした。
どこから情報が行くのか知らないけど、東京駅で新幹線を降りたとき
PPP
『来るんでしょ?夜会おうよ
仕事終わったらラインして』
優佳って誰だっけ。
『あとで連絡する』送信
これでいい。
これが普通だから。
最近やってなかったし丁度いい。
度々出張で来るから、転勤したとは言え懐かしい感じもなく、本社はいつもと変わらず四季を歩んでるのは大きな花瓶の花だけ。
青に統一された花が涼しさを主張していた。
あとはいつ見ても同じ。
スタイリッシュと名前をつけた無機質な空間だった。
あ、思い出した。
優佳ってお前だな。
受付の前を通過すると、3人座ったうちの1人がべっとり笑った。
それを冷やかす隣の女。
そいつは静香の大学の後輩だ。
情報源は静香か。
ぺらぺら喋りやがって。
こいつならいい
巨乳じゃないか
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