第24話 違和感
「そろそろ行くか」
「うん!」
秋奈の話を聞いてしばらくしてから俺たちは家を出た。
お昼ご飯を秋奈に作ってもらったから時刻は1時を過ぎたころだ。
「今から何するか」
「だね~この時間からイルミネーションを見に行くことはできないし、とりあえず街を見て回ろうよ!」
「わかった。今日はとことん秋奈のしたいことに付き合うよ」
「ありがとう」
並んで俺たちはクリスマスの空気に染まった街を歩く。
そっと隣にいる秋奈の手を握る。
少し冷たくて、俺の手より小さくて柔らかい。
やはり、秋奈もしっかりとした女性なんだと改めて認識した。
「な、なんで手をつないでくるの?」
「だって今日はデートなんだろ?だったら普通かなと思ったんだが嫌だったか?」
「嫌じゃない、というかむしろ嬉しいけどいきなりされるとちょっと照れる」
前から思っていたのだが秋奈は自分からはぐいぐい攻めてくるくせに攻められるのは弱いみたいだ。
「いつも秋奈のほうが大胆なことをしてきてるだろ?」
「それはそうなんだけど、むう」
秋奈は頬を膨らませながら顔を赤くしていた。
「怒るなって。それじゃあいろいろ見て回ろうか」
「うん!今日の冬真さんはなんだか大胆だね?」
「そうでもない。意外と楽しいんだよお前と一緒にいるのは」
「告白?」
「何でもかんでもそこに繋げようとするなよ」
でも、俺にとって秋奈はかけがえのない存在だ。
それは昨日認識した。
なら、付き合ってもいいのではないかと思うけど今まで娘のように思っていた子といきなり付き合うのはなんだか個人的に思う所がある。
「むぅ~素直に付き合ってくれたらいいのに」
「そうはいかない。でもまあ、今年中には答えを出すさ」
もう一週間を切っているけどその間に気持ちの整理をつけないとな。
「今年中って言ってももう少しじゃんか」
「だな。だからそれまで待てって。逃げたりしないから」
「わかったよ。楽しみにしてるね?」
ウインクをしながら秋奈は俺のことを上目遣いで見つめてくる。
翡翠色の瞳に見つめられてどうにもドキドキしてしまう。
「あれ?課長ですか?」
俺と秋奈がそんなやり取りをしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「万か?奇遇だな」
「ですね。そちらの方は前にあった人ですか!?」
「ん?秋奈と知り合いなのか?」
なんだかこの二人には俺も知らない接点があったみたいだ。
「知り合いなのか?秋奈」
「うん、昨日家を出たときに会ってね。戻ったほうがいいって言ってくれたの」
「そうなのか万」
「まあはい。なんだかそうアドバイスをしたほうがいい気がしたので。もしかして課長の恋人ですか?」
万はすごいものを見る目で秋奈を観察していた。
「いや、別に恋人というわけじゃないぞ」
「そうです。まだ恋人ではありません」
秋奈は妙にまだと強調していた。
「なるほど~そういう感じですか~課長も隅に置けませんね!」
万は口元を手で押さえながら肘で俺の脇腹をつついてきた。
お調子者なのは変わらないらしい。
「冬真さんもこの方と知り合いなの?」
「ああ。会社の部下だよ」
「万紗夜ともうします。初めましてではないけどよろしくお願いします」
「こちらこそお願いします。秋月秋奈と申します」
二人は頭を下げあってそう言いあっていた。
というか、なんだかおかしくないか?
なんで秋奈に的確なアドバイスができた?
それにタイミングが完璧すぎる。
なんだか妙な違和感がある。
「あっと、邪魔しちゃ悪いですよね。私はもう行きますので。では」
「ああ。元気でな」
「失礼します」
万と別れて俺たちは再び街を見て回るのだった。
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