第19話 告白

「冬真さ~んただいま~」


 いきなりドアを開けて入ってきたのは秋奈だった。


「ってちょっと待って何してるの!?」


「見てわからないのか?死のうとしてるんだよ」


「なんで?とりあえず落ち着こう?話聞くからさ。早まらないで」


 秋奈は俺の目を見ながらじりじり距離を詰めてくる。

 どのみち今このまま首を切ってももしかしたら秋奈に疑いがかかるかもしれない。

 そんな中で自殺は結構できないな。


「わかったよ」


 そっと包丁を下ろす。

 そのしぐさに安心したのか秋奈がしゃがみこむ。


「とりあえず座ろ。なんで自殺なんてしようとしたのか聞かせてよ」


「別にお前に聞かせるような話じゃあ、」


「そういうの良いから!私は冬真さんに救われたの。今度は私が冬真さんを助けたいの」


 秋奈は俺に詰め寄ってきて手を握ってくる。

 暖かい。

 こうされるだけ安心感が湧きだしてくる。

 本当に情けないなと思う。

 きっと俺は秋奈に依存してしまったのかもしれない。


「そんなの気にしなくてもいいんだ。俺はお前に恩を着せたくて助けたわけじゃないからな」


「そんなのはどうでもいいの!恩とかそんなのはどうでもよくて私は冬真さんのことが好きだから助けたいの!冬真さんに死んでほしくないの!だから聞かせて」


「好きってお前、」


「しょうがないじゃん!あんなに優しくされたら好きになっちゃうよ。だから死なないで」


 秋奈は俺に抱き着きながらそんなことを言ってくる。

 まさか、秋奈が俺のことを好いてくれてるなんて思わなかった。

 でも、俺なんかを好きになっても。


「わかったよ。話す。話すから泣かないでくれ。お前に泣かれるとどうしていいかわからなくなる」


 目じりに浮かぶ涙を指ですくう。

 いったん場所を変えて俺たちはソファーに並んで腰かける。


「俺が死のうと思った理由か」


「うん。多分だけど、最近じゃないでしょ?冬真さんが死のうと思ったのって」


「まあな。結構長い話になるけどいいか?」


「もちろん。しっかり聞くよ。それで冬真さんが話おわったら私のやりたかったことを教えるね」


「わかった」


 俺は深呼吸をして昔のことを話し始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る