第17話 やりたいこと
最近は前に比べて体が楽な気がする。
身体だけではなく心も軽い。
「全部秋奈のおかげなんだろうな」
秋奈が来てから食生活が改善された。
秋奈がいるから孤独を感じることもなくなった。
でも、やはり死にたいという気持ちが変わることは無かった。
なんなら一層と強くなった気がしなくもない。
「ただいま~」
玄関を開けてただいまというようになった。
「冬真さん!おかえりなさい」
するとすぐに秋奈が玄関まで出迎えてくれる。
それだけでなんだか心が温かくなるようなそんな感覚を覚える。
信用するのは怖い
でも、そんなことはもうどうでもよかった。
秋奈に裏切られようが裏切られまいがどのみち俺は死ぬ。
最終目的地がそうである以上もうどうでもいいんだ。
「冬真さんなんかいいことあった?」
「そんなことは無いが」
どうやら少し顔に出ていたらしい。
秋奈は不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
もう少しで死ねると思ったらどうにも頬が緩んでしまう。
気をつけないとな。
「そうなの?にしてはかなりにやけてると思うんだけどな~」
「別にいいだろ。お前もなんだか顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」
すぐに秋奈の額を触って確かめる。
「ちょ、ちょっと冬真さん!?」
「うん。熱は無いみたいだな。よかったよ」
触ってみたけど、どうやら熱は無いらしい。
少し安心したけどじゃあなんでこいつは何でこんなに顔が赤いんだ?
「もう、冬真さんってそういう所が良くないと思うんだよね」
ため息をつきながら秋奈はやれやれと首を振る。
俺が一体何をしたっていうんだ。
少し理不尽に感じたがまあいいか。
「まあ、いいや。それよりも冬真さん私決めたよ!」
「何を決めたっていうんだ?」
いきなり目を輝かせながら秋奈は俺に詰め寄ってきた。
「やりたいことが決まったの!」
「!?そうか。何がやりたいんだ?」
「秘密~もう少ししたらいったんこの家を出ていくね」
「ああ。わかったよ。お前にもやりたいことが見つかってよかったよ」
これでやっと死ねる。
僕の遺産や持ち物に関しては全て秋奈が受け取れるように手続きを済ませている。
秋奈が家を出て行ったタイミングで俺は死ぬ。
やっと目的の達成が見えてきた。
「ありがとう冬真さん!」
秋奈は嬉しそうに俺に抱き着いてくる。
この前は反射的に拒絶してしまったけど今回はそんなことはしない。
しっかりと秋奈を受け止めてそのまま頭を撫でる。
「秋奈はしっかりやれよ」
「え?」
「何でもない。それよりとっとと離れろ」
「え~もっと頭撫でてほしかってけどまあいっか」
秋奈は少し残念そうにしながらもすぐに離れてくれる。
聞き分けが良くて大変結構。
「まあ、お前がやりたいことを全力で出来るようにサポートするからな」
「うん!本当にありがとう」
秋奈が家をでるまで少し。
それまで俺ができる全力を尽くそうと誓おう。
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