第2話 手当
「結構広いんだね~」
女子高生が俺の家に入るなりそうこぼした。
普通のマンションだと思うんだけどな。
両親の遺産で一括購入したマンションの一室。
もう住んで8年くらいになるのかな。
「普通だ普通。それよりとりあえず風呂にでも入って来いよ。その様子だとあんまり入ってないんだろ?」
「それはそうだけど、まさか!?エッチなことしようとしてるの!?」
「なわけあるか。それこそ一発で逮捕だわ。そんな気は無いから安心しろ。そもそもそういう事がしたいんだったらお前に事をもっとノリノリで家に連れ込んでるわ」
「確かにそれはそうかも。というかいつまでもお前って呼ばないでよ!」
「しょうがないだろ。お前の名前知らないんだから」
出会ってからこいつは自己紹介をしていない。
まあ、見ず知らずの男に名のる必要はないんだが。
「あ!そういえば言ってなかったね~私は
「ああよろしく。俺は
一応自分も名乗り握手する。
こいつがいつまでここにいる気なのかは知らんけどここにいる間は面倒を見てやろうと思う。
金はあるしな。
「じゃあ、冬真さんって呼ぶね~私のことは秋奈でいいから」
「あいよ。んじゃ改めて秋奈とっとと風呂入ってこい。さすがに下着の着替えは用意できないけど上と下は俺の奴を貸してやるから制服も洗濯しとけ。結構汚れてるから」
「わかった!ありがとね~」
そそくさと秋奈は風呂場に消えていった。
終始テンションの高い奴だったな。
「ま、久しぶりに業務連絡以外で人と会話をした気がするな」
楽しい。
相手が女子高生とはいえ普通に他愛のない会話をするのがとても楽しいと感じる。
流石にちょっとまずいとも思うけどしょうがない。
「俺ってなんでこうなったんだろうな~」
なんでか、なんて理由はわかりきっている。
でも、わかっていても変えられないこともある。
理性では理解していても感情がそれを許してくれない。
「ま、もうどうでもいいか」
いくら自問自答を繰り返したとて意味がないだろう。
それこそ9年間も自問自答する時間はあったのだから。
「そういえば晩飯まだだったな」
今日は仕事を終えてからすぐに公園のベンチに座っていたのでまだ食べていない。
あの様子だと多分秋奈も食べていないだろう。
「インスタントってここら辺にあったかな?」
適当に棚をあさる。
冷蔵庫の中は空だ。
買いに行くのはとてもめんどくさいからあってほしい。
「あった」
ちょうどカップラーメンが二つ棚の中に置かれていた。
運がいい。
「とりあえず、お湯だけ沸かしとくか。秋奈が出てきたら食べるか聞けばいいし」
やかんに水を入れて火にかける。
そうこうしていると秋奈が出てくる。
長風呂はしないタイプみたいだ。
「お風呂ありがとうございました~」
俺が置いておいた半袖のTシャツと短パンを着た秋奈が風呂場から出てきた。
さっきはよく見て無かったけど明るいところで見るとこいつが美少女であることが分かった。
肩より少し長めの茶髪。
綺麗な翡翠色の瞳。
身長は160cmくらいだろうか?
「ん?」
でも、そんな容姿に気を取られる前に俺の目に留まったのは二の腕付近の紫色の跡だった。
「秋奈ちょっと来い」
「ええ?いきなりどうしたの?もしかしてお風呂上がりの私に欲情しちゃった?」
「なわけあるか!大人をからかうな」
「えへへ~で、なんなの?」
少し笑った後に秋奈は俺のほうに歩いてくる。
「とりあえず座れよ」
「うん。どしたの?」
「腕出せ。湿布貼るから」
「あっ、別にいいのに」
「よくないだろ。こういうのはしっかり処置しないとな」
痣っていうのは痛いし目立つ。
別に目立つのは問題ないんだが処置しないと痛みが長引いてしまう。
「よしっ。これでいいな。痛くないか?」
「うん。ありがとね」
にこっと笑って秋奈はお礼を言ってくる。
そんな様子の秋奈に俺は悪い奴じゃないんだろうなという印象を受けた。
「お前腹減ってるか?」
「減ってるけどなんで?」
「カップラーメンあるけどどっちがいい?」
「う~んじゃあこっちで!」
「あいよ。お湯はもう沸いてるから先に食べててくれ。俺は風呂入ってくるから」
「わかった!ありがとね冬真さん!」
「おう」
照れくさくなって俺は短く返すとそそくさとリビングを後にした。
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