第7話 雑司ヶ谷のトレス
4人は青山霊園、神宮の森を抜けて新宿御苑に向かった。我々タヌキにとって移動する事はたやすい事。小刻みに人間で言うところの難波歩きでスタスタ移動してしまう。
そういえば、ニキと一緒に来た奴はハチとか言ったな!どう見てもお祭り好きな感じがバリバリするんだけど!
ハチは市ヶ谷から来た。
靖国神社そして皇居の森が自分の居場所だ。今日はとりあえずこの3人について行く事にした。自分のことは後回しでいいだろう。
御苑はいいところだ。
ロコも気に入っている。
とりあえず雨を凌げる場所を探した。
〜今日はいろいろあったな〜
想いはみんなそれぞれだろう。ふたたび爽やかな風が森に吹いてきた。明日考えればいい事は明日にしよう。
〜深い眠りについた〜
仲間達はそれぞれに良い夢を見たに違いない。
………………………………………
翌朝、神田川を越え、護国寺を右手に見て雑司ヶ谷へ向かった。今回は結構距離がありそうだ。
狸穴から10キロ、御苑から5キロ離れたエリアまで来た。北の地に思えるけど、今やすぐ近くにある池袋。昼間人口の80%は埼玉県民が占めているようだ。
そう言えば〜
都内に広い母屋を構えている人って
どうなんでしょうね?〜
もともとそこが棲み家である人にとって、何か問題でも?って言いたいけども。まあそれぞれでしょう。ここ東京って地方から大挙して住み着いた人の方が多いって聞いていますよ。東京にこだわる人は結構います。狭い住み家だって住所、番地が重要なんですよ、日本の中心だからね。でも、我々タヌキみたいに、こんなど真ん中に住む事は出来ないでしょうよ。
〜当然違う人たちは居るけどね〜
……………………………………
雑司ケ谷は目白のすぐそば、そして都電の駅がある。学習院があって、鬼子母神堂が近くにある。サンシャインが近くに見えて雑司ヶ谷霊園からの風も吹いている。霊園は設備が整っている割には、普段人間が少なくていい。人間を終えた存在がたまに居るかもしれないけどね。
いわれはさまざまだけど雑司ヶ谷は静かな場所だ。
雑司ヶ谷のトレスもかつて狸穴に呼ばれた仲間。
ニキとハチがそれを手伝っている。
そしてトレスの活動場所は、
〜ここ池袋〜
池袋は名前の通りだよ。そこに点在していた沼や池の水は、当時神田川に流れていったに違いない。まるで人体のように、無駄な動きはしていない。全てが大地の鼓動とリズムを同じくして動いている。今はだいぶフタをされてしまっている様だけどね。そして池袋は我々にとって、西口、東口、全方位で移動が出来る便利なところ。
〜ここは自分に合ってる〜
トレスはいつもそう思っている。マンションはところ狭しと乱立し、護国寺が遠くに見える物件は人気がある様だ。池袋って元気が良すぎるところもあるし、少し悪ふざけが過ぎてる街かもしれません。
新宿は多摩丘陵から遊びに来るけど、池袋は狭山丘陵からやってくる。途中、所沢や朝霞を通過してくるので、やはり埼玉カラーに染まる街なのでしょう!
トレスにはヒカルという仲間がいる。
彼は護国寺の森にいる。一緒に寝泊まりはしていないが、トレスと同じようにブクロの街から色々なモノを得ている。
〜モノって残飯でしょ!〜イヤイヤ〜
〜それ言ったら、ちょっと気分害すな〜
〜情報とか、いろいろあるでしょうよ〜
我々は夜行性だから、人間が残した貴重な食べ物を、いつも感謝して頂いているだけさ。全く手を付けていないモノだってたまに出てくるんだぜ!だから鮮度が良いうちに戴くわけだよ。
人間はなぜか我々が行動を始めようとすると、電車に乗って良い気分で帰ってしまうんだよ。中には道端で寝転んでいる奴もいるけどね。最近は電車に乗った途端に寝てしまう、ふざけた奴もいるらしいよ。そう言う奴は終着駅で夜を明かすしかないだろけどね。
2人はそれぞれの寝ぐらに戻る途中だった。
………………………………
「椿山荘行ってみないか?」
突然、トレスが言い出した。何を感じたのか…
別にヒカルに断る理由なんて無かった。少し遠回りすれば着く距離だからね。
その後、ニキら4人はトレスたちに会った。探していたトレスに会えてホッとしたニキはほくそ笑んでいた。
何となくこうなる事はわかってたニキだった…
かつて2人が出会ったのは、肥後細川庭園の側を流れる神田川の辺り、椿山荘の森の中だった。一緒にいたヒカルの経緯は知らないけど、同じ境遇にいる事は容易に察した。いままでの経緯を話したニキは嬉しそうだった。
「オマエとは、また会えるだろうな!」
〜なんとなくそう思った〜
〜〜〜〜〜〜〜〜🎵〜〜〜〜〜〜〜
そして…そうなった〜
すでにここには6匹いる。リーダーぶっているわけでは無いのだけれど、仲間が増えていく幸せを噛みしめていた。
「そうだよ!ヤッパリ仲間はいい」
トレスとヒカルは、それぞれの寝ぐらに戻った。そして4人はこの椿山荘の森で体を休めることにした。
ザワザワとした風の音が
森の奥から聞こえて来た。
それを聞きながら…
静かに眠りに入っていった。
グッドナイト💤
おやすみなさい💤
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