第4話 宿の宿

コロは目が覚めた。


〜うん!あたりの様子が変だぞ〜



………………?




「ここはどこだ?」



「ロコ起きて!」



寝ているロコちゃんを起こした。

妹は眠い目をこすりながら、



「あっ!お店に戻ってる!」



「変だなあ〜!」



「あれっ おかあさんは?」



〜おかあさんと、おとうさんが居ない〜



ロコは真っ先にお母さんを探した。


唖然とした2人は「ゴロゴロもんじゃ」の看板が、すでに掛かっていない事に気付かなかった。


コロちゃんは必死に考えた。


〜だいぶ時間が経った?〜



「まさか!」



そう思うと2人はツロ酒店の階段を駆け上って行った。鍵は開いていた。


ドアノブを引いた!



「えっ!」



跡形もなくなってる光景に絶句した。厨房には蜘蛛の巣がはっていた。


〜相当時間が経っている感じがした〜


「ちょっと待ってくれよ〜!」



一体何が起きたのか早々に理解する事は無理だった。痕跡はあるけど…ほこりがうっすらと…テーブルの上を覆っていた。



「御苑の森に行くぞ!」



コロちゃんはいつものように最短距離を通って御苑の森に向かって行った。ロコちゃんもいつも以上にスピードを上げていた。赤いショルダーが落ちそうだった。


10分も経たないうちに寝ぐらに戻った。



いつもの寝ぐらの前で2人は…



〜ふたたび愕然とした〜




「家が無い!」




穴倉へはちょうど古いブナの木の横から入るようになっていたが…



「木が枯れてる!」



「入口が無くなってる」



だいぶ時間が経ったのか、草がおおい茂っていた。そこに穴倉があったような痕跡すら全く無かった。2人は立ちすくんだ。



「キツネに騙されたようだ!」



「理解出来ないよ!」



「不思議だわ!」



涙は出なかった。あまりの出来事に自分たちの頭の中を整理する事だけでも一杯だった。



〜御苑の宿はもう無い〜



2人は次の行動すら考え付かぬ間に、来た道を引き返して行った。



「誰かこっち見てるよ!」



西新宿のビル群に映る夕陽の方を指してロコが言った。




「うん!どこ?」




もう誰も居なかった。


でも確かに、誰かが見ていたようだった。


2人は重い足取りで「あの宿のビル」に戻って行った。

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