第3話 時空の歪み

〜タヌキの家族は深い眠りに落ちていった〜


明日もたくさんの同胞たちの笑顔に会いたい〜

素直な気持ちで仕事をしている者は寝顔が美しい。



霊力を扱えるこの手の動物にとって、現実世界が本物なのか、幻影の世界が本物なのか、たまに間違えても不思議ではなさそうだ。昔からタヌキに騙された、変なモノを見せられたって言う話は良く聞く。それだけ観察力が鋭いのでしょう。人間になりきることだって出来てしまう。


そう言えば…多摩丘陵を舞台に、人間文明と自然の森に棲むタヌキとの合戦がアニメであった。いなくなったと思ったタヌキが人間に化けて社会に紛れ込んでいく最後のシーンが未だ記憶の片隅に残っているのが、何とも不思議だった。



〜よく考えたらすごいアニメだなあ〜


まあ確かに、世の中にはタヌキが化けている様な人間も少なくない。特にサラリーマン世界はまさに仮面をかぶった正と邪がぶつかり合う修羅の世界。朝早く起きて電車に乗って行く人も、車で移動する人たちも、懲りずに会社という祠(ほこら)に御参りする。


そこに神様は居ないのに、何か神様がいる様に崇め祀り、せっせと働いている。最近はだいぶ変わってきたけど、昭和の初めなんて、会社命の人間だらけだった。タヌキも入りやすかったに違いない。


タヌキを悪く言うつもりは無いけども、幻影を見せられて舞い上がる人間は多い。特に霊力の強い大ダヌキであれば、幻影を見せる事なんて簡単な事だ。それが会社のトップに紛れ込んでいた場合、時間をかけて良からぬ方向に持っていかれることが多い。まあ、タヌキだけじゃ無いかもしれないけどね。


深くは話しませんけど…ここに登場するタヌキは、取り敢えずそんな事はないですよ〜同族のタヌキたちには幻影であっても、一夜の憩いの場を現実に近い形で演出してあげるのですから…問題ないでしょ!



…………………………………………



〜しばらくして〜

〜御苑の森に強い風が一瞬吹いた〜



「ピカッ!」



〜昼間の様な「閃光」が起きた〜


〜静かになった〜


〜何か変な雰囲気だよ〜



………………………………



ゴロゴロもんじゃの家族

まだ寝てるのか?



………………………………………




〜うん!誰も居ないぞ〜


〜穴倉も無い!


どうしたって言うんだ。

何かあったのか!


何で消えたんだ?



……………………………………



家財道具は残ってるけど…

家族は誰一人居ない。



元々誰もいなかったように、

欠けた食器が転がっている…




〜外は再び強い風が吹いて来た〜


〜何事も無かったかのように

 御苑の森に…吹いてきた〜

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